何年も履いてきた冬靴。足になじんで歩きやすいのに、去年あたりから、つるっとする瞬間が増えた気がする。買い替えるのは惜しいし、かといってこのまま今年の雪を迎えるのも少し不安。そんな靴が、靴箱にないでしょうか。
札幌で冬道の転倒防止に取り組むウインターライフ推進協議会のサイト「転ばないコツおしえます」は、「滑らない冬靴でも何年も履いていると、靴底がすり減って滑りやすくなります」と書き、同じ段落で靴底の張り替えサービスを紹介しています。
この記事では、協議会のサイトと札幌市消防局の資料、靴メーカーのムーンスターの解説、靴の滑りの研究者の記事から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。張り替えの説明は協議会のサイト1か所によるもので、店ごとの対応は調べていません。最後に出典をまとめました。
札幌では、ひと冬で2,060人(速報値)が雪道の自己転倒で搬送された
札幌市消防局の「令和7年度 雪道の自己転倒による救急搬送概要」によると、札幌市で11月から3月に雪道の自己転倒で救急搬送された人は2,060人でした。令和8年3月31日時点の速報値で、変更される場合があると注記されています。月別では12月の868人が最多で、発生場所は道路(歩道なども含む)が1,641人(79.7%)。傷病程度は軽症63.2%、中等症35.2%、重症1.6%です。
ここからは編集部の見方です。この資料には、靴の種類やすり減りは載っていません。靴が原因で転んだ人の数ではありません。それでも、足元を見直すきっかけにはなる数字だと思います。
底がすり減ると、なぜ見直すのか
協議会のサイトは、次の条件を全て備えた靴が一般的に「冬靴」と呼ばれるとしています。滑らない(防滑性)、濡れない(撥水性・防水性)、暖かい(保温性)の3つです。そして「靴底は使用するごとに劣化、消耗するのでチェックしましょう」と書いています。
冬靴に限らない話として、ムーンスターの解説は、ソールのかかと、つま先、踏みつけ部分は特にすり減りやすいとし、すり減りが激しい場合は滑りやすくなるため、ソール交換ができない場合など寿命の目安になる、と書いています。
張り替えサービスとは
協議会のサイトが想定しているのは、足に馴染んで歩きやすいので1年を通して同じ靴を履きたい人、冬靴は欲しいけれど気に入った靴が見つからない人です。サービスをうまく活用すると「靴箱に眠っている靴を冬靴として復活させることができます」とも書いています。すり減った冬靴に限った話ではありません。
- 頼む先:靴修理の店など。サイトは「冬靴底張り替え」で検索すると店が分かる例を挙げています
- 時間:20〜30分。目安で、店や靴の状態などによって異なる場合があるとの注記があります。費用の目安もサイトに載っています
- 手順:研磨した靴底に業務用接着剤を塗り、滑り止め素材を張り、靴底面の面取りをして完成
ここからは編集部の見方です。この目安は札幌の協議会のサイトのもので、ページに更新日は見当たりません。ほかの地域の店で同じように頼めるかも分かりません。持ち込む前に電話で聞くのが確実だと思います。
滑り止め素材の例は3つ。どれがいいかは店に聞く
サイトは、滑り止め素材には用途に応じていくつか種類があるとして次の3つを挙げ、どんな靴底がいいのかはお店に相談してください、としています。
- ガラス繊維の入った滑り止め素材
- 六角のトレッドパターンの滑り止め素材(サイトの表記は「トレッドパーン」)
- 丸型ピンのスパイクのある滑り止め素材
参考になる研究の話もあります。苫小牧工業高等専門学校の野口勉助教授(当時)が東京都立皮革技術センター台東支所の依頼で書いた記事です。0度に近い氷の表面に水が載った状態で測った、靴底の異なる9種の靴(全て非スパイク)では、上位は靴底のゴムに硝子繊維や硅砂を混入し、トレッドパタンを工夫したものでした。氷の上に水をまいた路面を歩いた15足の検査では金属スパイクのものが性能が高く、硝子繊維を利用したものが、金属スパイクに匹敵するという結果を得た、としています。
ここからは編集部の見方です。この記事のPDFは2002年に作られたもので、調べたのは完成品の靴です。張り替え用の素材を調べたものではなく、今売られている靴の話でもありません。濡れた氷の上での話で、靴ごとの数値も示されていません。ガラス繊維入りを考える手がかりとして読むのがいいと思います。
協議会のサイトは冬靴のピン付きの底について、じゅうたん等の上を歩くと金具がひっかかってつまづいたり、地下街や建物内のタイル等の床では滑りやすいと注意しています。また、冬靴を買うときの助言として「あらゆる路面に対応できる、滑らない靴はありません」と書き、自分がよく歩く路面状況を店の人に詳しく話すようすすめています。
編集部は、張り替えを頼むときも同じだと考えます。店では次の4つを聞くと話が早いと思います。
- 冬用の滑り止め素材を扱っているか
- この靴に張れるか
- よく歩く路面(地下街や駅の床、凍った歩道など)にはどの素材が合うか
- 仕上がりまでの時間と費用
張り替えても変わらないところ
協議会は「冬靴として復活」と書いていますが、編集部の見方では、3つの条件のうち張り替えが直接関わるのは「滑らない」です。「濡れない」「暖かい」は靴の上の部分や中の作りも関わるはずで、水がしみる靴の底を替えても、水がしみなくなるとは考えないほうがいいと思います。
靴そのものが傷んでいないかも見てください。ムーンスターの解説は、履かずに長期保管をしていても温度や湿度の影響で素材が痛むことがあるとして、履く前に靴の状態を確かめるようすすめています。見分け方は履いていないのに壊れる靴の記事に書きました。靴底全体を替えるオールソールの考え方(主に革靴)は靴を何回直せるかの記事にありますが、これはこの記事の張り替えとは別の作業です。張れるかどうかの判断は、靴を見た店に任せるのがいいと考えます。
もう1足持つという手もある
協議会のサイトは、毎日履き替えることで消耗を和らげることができますと書き、路面に合わせて靴底の違った靴を2~3足持つのもいいでしょうとも書いています。つるつる路面にはピン・金具付きや深い溝のある靴底がおすすめで、さまざまな路面に有効な柔らかいゴム底や滑り止め入りのゴム底も持っていると快適になる、という説明です。ただし溝については、深さだけでなく靴底のやわらかさも重要で、靴底が固くて単に溝が深い靴底はつるつる路面では滑りやすく、溝に雪が詰まると滑りやすくなる、とも書いています。
ここからは編集部の見方です。商品ページでは、底の素材の説明に加えて、防水と保温の説明があるかも見てください。雪の少ない地域で年に数回の備えなら、いつもの靴に付ける滑り止めなどを書いた東京の雪の日の記事のほうが合うと思います。
まとめ:靴の底は、今年の雪の前に見ておく
- 協議会のサイトは、滑らない冬靴でも何年も履いていると、靴底がすり減って滑りやすくなると書いている
- 靴修理の店などへの持ち込みで、張り替えは20〜30分が目安(店や靴の状態などで異なる)
- 協議会のサイトは、滑り止め素材の例にガラス繊維入り、六角のトレッドパターン、丸型ピンのスパイクを挙げ、どれがいいかは店に相談するよう書いている
- 張り替えても「濡れない」「暖かい」まで良くなるとは考えないほうがいい(編集部の見方)
まず靴箱の冬靴をひっくり返して、かかと、つま先、踏みつけ部分の減り方を見てください。溝が残っていても、それだけで安心はできません。気になったら店に見せる。足になじんだ1足を、今年の冬道にもう一度連れていけるかもしれません。
出典
- ウインターライフ推進協議会「転ばないコツおしえます」雪みちに負けない靴の選び方
- 札幌市消防局 警防部救急課「令和7年度 雪道の自己転倒による救急搬送概要」(令和8年3月31日時点、速報値)
- ムーンスター「靴の替え時・寿命」(靴メーカーの解説)
- 野口勉「寒冷地における滑りと靴」(東京都立皮革技術センターのサイト掲載。発行年の記載は確認できず、PDFの作成は2002年)
※各資料は2026年11月2日に確認しました。














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