つやのあるエナメルのブーツは、秋冬の装いを華やかにしてくれますよね。でも、エナメル調のブーツは、左右の表面が触れ合うと張り付くことがある、という話を聞いたことはあるでしょうか。
国民生活センターには、駅の階段を下りている途中で、履いていたブーツ同士がくっつき、前のめりに転倒して膝を骨折したという相談が寄せられ、原因を調べるテストが行われています。左右を接触させると、接触面積が狭くても張り付いて強い抵抗が生じました。一方で、モニターがふつうに歩いたり階段を上り下りしたりしたときは、張り付くことはありませんでした。報告書は、これをエナメル調素材を使ったブーツの一般的な特性と考え、場合によっては転倒する可能性があるので歩くときは注意するように、とアドバイスしています。
この記事では、国民生活センターのテスト報告(2016年12月公表)と、靴ケア用品の販売会社が運営するお手入れ情報サイト「ShoesLife」の解説から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。最後に出典をまとめました。
どんな相談だったのか
報告書は「相談解決のためのテスト」という、消費生活センターなどの依頼に基づくテストの1つです。依頼の内容は「駅の階段を下りている途中で、履いていたブーツ同士がくっつき、前のめりに転倒し左膝を骨折した。ブーツ同士がくっついた原因を調べてほしい。」でした。
ブーツは、表面が光沢のあるエナメル調素材の女性向けブーツで、デザインとしてしわがつけられていました。同じように光沢のあるエナメル調素材でしわがつけられたブーツは数多く販売されているので、ほかの2銘柄を参考品として加えて調べた、とあります。
テストで分かったこと
まず、左右の表面同士を接触させたところ、いずれのブーツも互いに張り付き、動きづらくなる様子が見られました。報告書には、接触する面積が小さくても張り付く様子の図も載っています。
次に、女性モニター3名(足のサイズ22.5〜23.0cm)に実際に履いてもらい、ふつうの歩行と階段の上り下りをしてもらいました。その結果は次のとおりです。
- いずれのブーツも、3名全員が、通常の歩行や階段の昇降では左右が互いに張り付くことはなかった
- ただし、意図的に接触させた場合には、接触面積は狭くても強い抵抗があるとの回答だった
- 互いに接触したときの抵抗は、相談のあったブーツと参考品2銘柄で差はないとの回答だった
報告書は、相談のあったブーツは左右が接触すると接触面積が狭くても強い抵抗が生じることが確認されたものの、参考品と比較しても特に張り付きやすいとは言えず、エナメル調素材を使用したブーツの一般的な特性であると考えられました、とまとめています。
ここからは編集部の見方です。ふだんの歩き方では張り付かなかった、という結果は大事だと思います。ただ、これはモニター3名(足のサイズ22.5〜23.0cm)での確認で、実際には骨折した相談も寄せられています。気をつけたいのは、左右がふれ合いやすい場面です。たとえば、階段を急いで下りるとき、人混みで歩幅が狭くなったとき、内股ぎみに歩く癖があるとき、足を組んだり、そろえて立ったりしたあとに歩き出すとき、などが考えられます。
国民生活センターのアドバイス
報告書の「消費者へのアドバイス」は、「表面がエナメル調素材のブーツは、左右が互いに接触すると、接触面積が狭くても張り付いて強い抵抗が生じ、場合によっては転倒する可能性があります。エナメル調素材の特性を知り、エナメル調素材のブーツで歩行する際は注意しましょう」です。
ここからは編集部の見方です。具体的には、次のようなことができると思います。
- 階段では手すりを持つ。下りは特に、急がない
- 歩き出す前に、左右のブーツが触れていないかを意識する
- 買うときは、サイズがジャストフィットするものを選ぶ(ShoesLifeの履きジワ対策。足が靴の中で動きにくいほうが歩き方も安定すると編集部は考えています)
- ブーツの丈、しわ加工の有無、内側だけ別素材かどうかで張り付きやすさが変わるかは、テストからは分かりません。テストした3銘柄の間には差がなかったので、店で比べて選ぶ手がかりにもなりにくいと思います
エナメル革は、主にウレタン樹脂でコーティングした素材
そもそもエナメルとはどんな素材なのでしょうか。ShoesLifeは、皮革素材をウレタン樹脂でコーティングしたものを「エナメル革(レザー)」と呼び、天然皮革以外にも、合成皮革や目の詰まった布地にコーティングしたものも、同様にエナメル素材に分類されると説明しています。見た目で下地が革かどうかを見分けるのは難しいそうです。「パテント革(レザー)」とも呼ばれます。
ここからは編集部の見方です。国民生活センターの報告書は「エナメル調素材」と書いていて、ブーツの素材も、張り付くしくみも特定していません。ShoesLifeの記事も張り付きには触れていません。なので、どの素材ならどうか、までは分かりません。下地が本革か合成皮革かに関わらず、表面がエナメル調のブーツなら気をつけておくのがいいと思います。JISでのエナメルレザーの位置づけは革の仕上げとJISの記事に、合成皮革の表示は合成皮革の記事にまとめています。
しまうときも、他のものとくっつけない
ShoesLifeは、エナメルの弱点として高温多湿に弱い、無理な屈曲に弱い、キズの補修が難しい、色移りしやすいの4つを挙げています。いずれも、コーティングに使われるウレタン樹脂(ポリウレタン)の弱点だそうです。
- 高温:熱が続くと劣化が早まり、やわらかくなりすぎたり、ベタつきが出たりする。年中温度差がなく、できるだけ涼しい場所で保管する
- 湿気:水気や空気中の湿気でも、ウレタン樹脂は加水分解という劣化を起こす。経年による劣化なので完全な予防は難しいが、濡れたら速やかに拭き取り、湿気のこもらない場所に保管する。クローゼットでは、湿気を吸う紙箱に入れず、不織布などで包んで上段に
- 色移り:他の靴と引っ付いたまま保管すると、その靴の色がエナメルに移ることがある。色が染み込んだ状態なので、取り切るのは難しい。他のものとは接触しないように保管する。不織布で包んでいても、他の製品とぴったりくっつけると色移りのリスクがある
- 履きジワ:コーティングに刻まれたシワは直すのがまず困難。なるべくサイズがジャストフィットするものを履き、余計なしわが寄らないようにする
ここからは編集部の見方です。ShoesLifeによると、色移りは他の靴の染料や印刷物のインクがウレタン樹脂に染み込むことで起きるもので、歩くときの張り付きとは別の話です。それでも、どちらも「他のものと触れ合わせない」ことが対策になります。ShoesLifeが書いているのは「他のものとは接触しないように」までですが、編集部としては左右のブーツもくっつけずに、1足ずつ別の袋で包んでおくと安心だと考えています。ロングブーツなら、丈が入る袋を選んでください。
ふだんのお手入れについて、ShoesLifeはこの記事の最後で、エナメル専用のローションを使ったお手入れの記事を案内しています(運営会社が自社で扱う商品です)。ローションを使うと張り付きやすさが変わるかは、どちらの出典にも書かれていません。
シーズンの終わりにしまうときの考え方は靴のしまい方の記事に、加水分解については履いていないのに壊れる靴の記事に書きました。
まとめ:エナメル調のブーツは、左右がふれ合う場面に注意
国民生活センターのテスト(2016年12月公表)では、駅の階段でブーツ同士がくっついて転倒した相談をもとに、相談のあったブーツ(光沢のあるエナメル調素材でしわのついた女性向けブーツ)と、同様のブーツ2銘柄を調べました。左右を接触させると、接触面積が狭くても張り付いて強い抵抗が生じましたが、モニター3名がふつうに歩いたり階段を上り下りしたりしたときは張り付きませんでした。相談のあったブーツは参考品と比べて特に張り付きやすいとは言えず、エナメル調素材を使ったブーツの一般的な特性と考えられる、とされています。そのうえで、場合によっては転倒する可能性があるので、歩くときは注意するように、とアドバイスしています。
ここからは編集部の見方です。ふだんの歩き方では張り付かなかった一方で、場合によっては転倒する可能性がある、というのが報告書の内容です。エナメル調のブーツを選ぶなら、階段では手すりを持ち、左右がふれ合いやすい場面を意識する。しまうときは、他のものとくっつけない。この2つを習慣にしておくといいと思います。
出典
- 国民生活センター「エナメル調素材のブーツが左右で張り付き転倒することも(相談解決のためのテストからNo.105)」(2016年12月15日公表)、同報告書本文
- ShoesLife「エナメル革(パテントレザー)とは? 弱点と正しい手入れ|エナメルの靴・バッグのお手入れ」(2022年10月27日公開、2026年2月24日更新)
※ShoesLifeは靴ケア用品を販売する会社が運営するサイトで、記事内で自社取扱商品を紹介しています。各資料は2026年10月23日に確認しました。














コメント