合成皮革と人工皮革の違いは基材です。そしてタグには、手入れの答えまで書かせてあります

商品ページに「PUレザー」「フェイクレザー」と書かれた靴を見たことがあると思います。

その呼び方、2024年3月からルールが変わりました。そしてもうひとつ。合成皮革の靴には、法律にもとづいて貼らせているタグがあります。そこには材料だけでなく、手入れの答えまで書かせてある。

素材を見た目で当てようとするより、読むべきものを読んだほうが早いという話です。

この記事ではJISの規格票と消費者庁の規程から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。最後に出典をまとめました。

目次

2024年3月、「革」と呼べるものが決まりました

日本皮革産業連合会(JLIA)が2024年7月9日に出したお知らせに、こうあります。

「2024年3月より「革」「レザー」と呼べる製品は、動物由来のものに限定されました」。

背景も書かれています。「昨今、植物由来、石油由来の素材などが「○○革」「○○レザー」と銘打って商品化されたり、呼称されることにより、消費者が、靴・バッグ・鞄・財布・ベルト・アパレルなどをはじめとする、本来の革(レザー)製品と誤認して購入してしまう事態などが発生しています」。

そして「すでにイタリア・フランス・スペイン・ドイツ・ブラジル・ポルトガルなど諸外国では「革(レザー)は動物由来のものに限定する」と法律によって定められています」。日本では今回、ISO規格の用語を基にしたJISが制定されたという流れです。

その定義がJIS K 6541:2024(革(レザー)―用語)にあります。「革,レザー:皮本来の繊維構造をほぼ保ち,腐敗しないようになめした動物の皮」。注釈に「“天然皮革”又は“本革”ともいう」、そして「この規格に規定されたものを除き,人工的な材料の名称として使用してはならない」とあります。

なお、その「動物の皮」をどう呼び分けているかはカーフ、キップ、ステア。同じ牛の革を分けているのは、重さと性別と年齢ですにまとめてあります。

呼べなくなった名前

JLIAのお知らせには具体例が挙がっています。ほぼそのまま引きます。

  • 「アップル・キノコ・サボテンなどから作られた素材を「○○革」「○○レザー」とは呼べなくなりました。商品名などに使用することもできません」
  • 「「シンセティックレザー」「フェイクレザー」「PUレザー」「ビニールレザー」などと呼ぶことや、JISで規定した以外の商品の名称に「レザー」「革」「スエード(スウエード)」「ベロア」「ヌバック」を用いることもできなくなりました」
  • 革を粉砕してシート状にしたものを「リサイクルレザー」「再生革」と表記するのも誤りで、「皮革繊維再生複合材」と呼ぶ必要がある
  • 「不織布や特殊不織布、合成樹脂などを使って革の見た目に似せたものは「合成皮革」「人工皮革」と表記しなければいけません」

「エコレザー」も定義されました。「環境に配慮して製造される革・レザー」であって、植物由来の素材や、革を粉砕してシート状にした素材を「エコレザー」と呼ぶことはできないとされています。

「ヴィーガンレザー」はこの資料に例示されていませんが、植物由来のものを「○○レザー」と呼べないという1つめの例がそのまま当てはまる呼び方だと思います。

ここからは編集部の見方です。JISは国家規格で、それ自体に罰則がある法律とは別の枠組みです。だから現実には、いまも「PUレザー」と書いてある商品ページがあります。

ただし勘違いしないでほしいのは、規格に罰則がないことと、書いてある中身が実態と違っていいことは、まったく別だということです。呼び方のルールはJISの話ですが、この先に出てくるタグの表記は法律の話になります。強さが違います。

だから買う側としては、こう読むのがいいと思っています。「レザー」という語だけで本革だと判断しない。そして「○○レザー」と付いていたら、名前ではなく素材の表記を探す。名前は雰囲気で付けられますが、表記にはルールがあります。

合成皮革と人工皮革の違いは、基材です

この2つは別物です。JISの定義を並べると、違いは1か所に集まります。

合成皮革は「基材に織布,編物,不織布などを用いて,表面にポリ塩化ビニル,ポリアミド,ポリウレタンなどの合成樹脂面を配して,革(レザー)の外観に類似させ,その特性である感触,光沢,柔軟性などを与えたもの」。

人工皮革は「基材に特殊不織布を用いて」同じことをし、「銀付き革調に加工,又は特殊不織布に立毛を配して,スエード調,ベロア調,ヌバック調に加工したもの」。

人工皮革のほうに「スエード調,ベロア調,ヌバック調」が出てくるのが面白いところです。本物のスエードやヌバックは革を毛羽立てたもので、手入れの仕方も違います(スエードにクリームを塗ると、毛が潰れます。起毛革の手入れは「塗らずに、吹いて、起こす」)。

違いは基材です。合成皮革は織った布や編んだ布でもよく、人工皮革は特殊不織布に限られます。その特殊不織布とは「ランダム三次元立体構造をもつ繊維層を主とし,ポリウレタン又はこれに類する可とう性をもつ高分子物質を含浸させたもの」と注釈されています。

もうひとつ、JLIAの皮革用語辞典が合成皮革についてこう書いています。「合成皮革はビニルレザー(擬革)を改良、発展させたもので表面層のみを天然の革に似させている」。表面層のみ、という言い方です。

ここからは編集部の見方です。言葉は難しいのですが、合成皮革は表面を似せたもの、人工皮革は中の構造から似せにいったもの、という違いだと読んでいます。そのぶん人工皮革のほうが値段は上がります。

ただし「合成皮革」と書いてあっても、人工皮革かもしれません

ここが読み方の勘どころです。

消費者庁の雑貨工業品品質表示規程の「靴」の項に、こう書かれています。「合成皮革のうち、基材に特殊不織布(中略)を用いているものについては、「合成皮革」の用語に代えて「人工皮革」の用語を用いることができる」。

「用いることができる」です。義務ではありません。

だから編集部としては、こう読むのが正確だと思います。タグに「人工皮革」と書かれていれば、基材は特殊不織布。でも「合成皮革」と書かれているものは、織布のタイプか特殊不織布のタイプか、その表記だけでは分からない。上位のほうを名乗らないこともある、ということです。

ひとつ注意を。この読み方が使えるのは、あとで説明する「法律にもとづくタグ」の表記に対してだけです。商品ページの説明文に書かれた「人工皮革」は売り手の文章なので、規程どおりの意味で使われているとは限りません。

もう1点。JISでは合成皮革と人工皮革が別々の項目なのに、品質表示規程は「合成皮革のうち」と書いて人工皮革を合成皮革の一種として扱っています。同じ言葉でも、見ている資料によって関係が少し違います。

合成皮革の靴には、法律にもとづくタグがあります

ここが今回いちばんお伝えしたいところです。

靴は家庭用品品質表示法の対象品目に入っています。ただし範囲が限定されています。消費者庁の手引きは、対象をこう書いています。「甲に合成皮革を、本底にゴム、合成樹脂又はこれらの混合物を使用し、甲と本底とを接着剤により接着したものに限る」。

条件は3つです。甲が合成皮革。本底がゴムか合成樹脂(またはその混合物)。甲と本底が接着剤で付いている。この3つが揃ったものだけが対象です。

ここからは編集部の見方です。この3条件を読んで気づくのは、これはそのまま、量販されているスニーカーの作りだということです。合成皮革の甲、ゴムか樹脂の底、接着で組み立て。下駄箱にある一足がそのまま当てはまる可能性が高いと思います。

いっぽう本革の革靴には、この表示義務はかかりません。縫い付けで作られた合成皮革の靴も、条件から外れます。

だから「タグがないから本革」とは言えません。義務がないだけで、本革の靴に材料の札を付けるのは自由です。根拠になるのはタグの有無ではなく、そこに「合成皮革」「人工皮革」と書かれているかどうかです。

貼り方も決められています。「靴ごとに、消費者の見やすい箇所に分かりやすく記載し、下げ札の取付け又はラベルの貼付け等、靴本体から容易に離れない方法で行うこと」。そして表示した者の「氏名又は名称」及び「住所又は電話番号」を付記し、責任の所在を明確にするとあります。表示の義務を負うのは、この表示した者、つまり作って売っている側です。

タグはどこにあるのか

ここからは編集部の見方です。探す場所は、だいたいこのあたりです。

  • 下げ札(買ったときに付いていた紙のタグ)
  • 履き口の内側、ベロの裏に貼られたラベル
  • 中敷きをめくった下(外せるタイプなら、そこに印刷されていることがあります)
  • 箱の側面のシール
  • 通販なら商品ページの素材欄(ただし前章のとおり、売り手の文章と規程の表記は別です)

探すときのコツがひとつ。タグの言葉は、規程の言葉と一致していないことがあります。規程は「甲皮」「本底」と書いていますが、実物には「甲材」「アッパー」「表底」「底材」と書かれていることが多い。この4つも探す語に入れてください。

内側のラベルは印字が小さく、暗いところにあります。手元を照らすものがあると、だいぶ楽です。

タグが見つからないとき。中古の靴や下げ札を切った靴ではそうなります。箱があれば型番からメーカーのサイトで確認、それも無理なら買った店に型番を伝えて聞く。見た目で当てるのは最後の手段です。

タグに、手入れの答えが書いてあります

同じ規程には「取扱い上の注意」として表示する内容まで決まっています。4項目あります。

  • 「甲皮の汚れを取るためには、水で濡らした布を用い、靴クリーム等の保革油を用いる必要がない旨」
  • 「火のそばに置くと、軟化又は変形することがある旨」
  • 「乾燥するときは、陰干しにする旨」
  • 「油を引いてある場所での使用はなるべく避ける旨」(「耐油性」の表示がある場合は不要)

ただし手引きは「次に掲げる事項を製品の品質に応じて適切に表示する」としています。4つが必ず全部並ぶとは限らないので、自分のタグに3つしかなくても不思議ではありません。

ひとつめが効きます。甲皮の汚れは水で濡らした布でいい。靴クリームなどの保革油は必要ない。これを国が書かせているわけです。

ここからは編集部の見方です。合成皮革の甲に革用のクリームを塗っている人は、手間もお金も、やらなくていいところに使っていることになります。表面は樹脂なので、油を入れる相手がいません。

ただし「甲皮については」という限定は付けておきます。合成皮革の靴でも、内装やヒール周りに本革のパーツが使われていることはあります。靴全体に何もしなくていい、という話ではありません。

用意するものは、水と布だけです。

\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

「火のそば」は、思っているより広いです

2つめと3つめは、セットで覚える価値があります。火のそばに置くと軟化または変形することがある。乾燥するときは陰干し。

ここからは編集部の見方です。「火のそば」を火だけの話だと読まないほうがいいと思っています。熱が来る場所はほかにもあります。

靴用の乾燥機、ドライヤー、布団乾燥機、コインランドリーの乾燥機、浴室乾燥、そして夏の車内。濡れた靴を早く乾かしたいときにやりがちなことが、だいたい入ります。

そしてここが、さきほどの3条件とつながります。この表示の対象になる靴は、そもそも甲と底が接着剤で付いています。つまり熱が来るのは甲の表面だけではなく、接着しているところにも来る。変形より先に、底が剥がれるほうが困ると思います。

陰干しの理由は規程に書かれていませんが、直射日光は紫外線と温度の両方が来るので、樹脂には条件が重なるのだと思います。急いでいる日でも、風通しのいい日陰が結局早いです。

脱いだ日に湿気を抜いておくのも、同じ理屈で効くはずです。

「ゴム底」「合成底」と、「耐油性」の括弧書き

同じタグには底の表記もあります。規程ではゴムなら「ゴム底」、合成樹脂または合成樹脂とゴムの混合物なら「合成底」と決められています。

そしてもうひとつ、「ゴム底(耐油性)」のような括弧書きがあります。これは名乗るのに試験が必要です。

条文はこうです。日本産業規格K六二五八の方法で、試験用油のうち「No.3油」を用い、試験温度四十度プラス・マイナス一度において二十二時間プラス・マイナス〇・二五時間浸せき試験を行なったときの体積変化率が三十五パーセント以下であって、かつ、甲皮と底材との接着部の接着力が接着面に対し九十度方向への剥離強度で一センチメートル当たり二キログラム以上の場合に、括弧書きで「耐油性」と表示すること。

ここからは編集部の見方です。なぜ条件が2つ並んでいるのかは規程に書かれていませんが、ゴムが油で膨らまないことと、底が剥がれないことを両方見ていると読みました。底が膨らんで形が変わるのと、接着が剥がれるのと、油膜で滑って転ぶのは、別々の事故です。

だから厨房、給食室、整備、食品工場のように床に油が乗る場所で働く人は、この括弧書きを探す価値があると思います。

ただし2つ注意を。ひとつめ、「耐油」と「滑りにくい」は別の性能です。油で膨らまないことと、油膜の上でグリップすることは違う話なので、両方ほしいなら両方の表示を見てください。

ふたつめ。商品説明の「耐油」という言葉と、規程にもとづく括弧書きの表示は別物です。だから届いたらタグを確認してください。そして見つからなかったときは、メーカーに試験の有無を問い合わせるか、油が乗る床では使わない前提で選ぶ。規程のとおり、表示のない靴には「油を引いてある場所での使用はなるべく避ける」という注意が表示される側の靴だということです。

合成皮革の弱点は、履かなくても進みます

ここからは編集部の見方です。合成皮革は本革の代用品として語られがちですが、本革のように濡れて乾くのを繰り返して油分が抜ける、という傷み方はしません。雨の日に本革を出すより、合成皮革の一足を使ったほうが理にかなっている場面はあります。

ただし「合成皮革だから雨に強い」とは書けません。手引きの説明には、合成皮革は「通気性」も与えたものだとあり、「発泡剤等の薬品で微細気孔処理を行う」場合があるとも書かれています。甲の素材が何かと、靴として水が入らないかは別の話です。水が入るのは縫い目や履き口からで、防水かどうかは素材名では決まりません。

そして弱いところははっきりしています。ポリウレタンは時間とともに分解します。履かずにしまっておいても進むので、買ってから何年ではなく、作られてから何年で考えることになります。この話は履いていないのに壊れる靴があります。履けない一足を、履かずに守る方法に詳しく書きました。

だから編集部としては、合成皮革の靴を何足も買って寝かせておくのはすすめません。履く一足を決めて、使い切る。長く付き合う前提の本革とは、持ち方を変えたほうがいいと思います。

環境の話も、ひとつだけ。「合成皮革だから地球にやさしい」と言える材料は、今回の資料の中にはありませんでした。JLIAが定義した「エコレザー」は革についての規定で、合成皮革の環境負荷については何も書かれていません。言葉の印象で環境負荷を判断できる段階にはない、というのが編集部の立場です。

まとめ:名前ではなく、表記を読む

整理します。2024年3月から「革」「レザー」と呼べるのは動物由来のものに限られました(JIS K 6541:2024)。「PUレザー」「フェイクレザー」「シンセティックレザー」といった呼び方は使えなくなり、「合成皮革」「人工皮革」と表記することになっています。

ただし強さが違います。呼び方のルールはJIS(国家規格)なので、それ自体に罰則はなく、古い表記は今も残っています。いっぽうタグの表記は家庭用品品質表示法にもとづく義務です。信じるなら、名前よりタグ。

合成皮革と人工皮革の違いは基材で、人工皮革は特殊不織布に限られます。ただし名乗るのは任意なので、タグに「合成皮革」とあるものが特殊不織布のこともあります。

そのタグが付くのは甲が合成皮革・本底がゴムか合成樹脂・接着剤で接着の3条件が揃った靴です。量販のスニーカーは、だいたいこの形。書かれているのは、甲皮は水で濡らした布でよく保革油は要らない/火のそばで軟化・変形する/乾かすなら陰干し。

逆に本革の靴については、タグを読んでも分かるのは「革である」ところまでです。仕上げや層のどこを使った革なのかは書かれていないので、その先は店で聞くしかありません。

まず1つだけやるなら、いま履いている靴の下げ札か、履き口の内側のラベルを探すことです。素材と底の表記、連絡先、そして手入れの答えが入っています。買い足す前に、手元の一足が何なのかを確かめるほうが早いと思います。

「レザー」は雰囲気で付けられる名前でした。これからは名前ではなく、表記を読む。それだけで、だいぶ騙されにくくなります。

出典

※本文の引用は2026年9月28日時点で各資料を確認したものです。規格や規程は改訂されることがあります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次