靴の世界地図

靴を「どこの国の、どんな土地で作られたか」から辿ると、産地ごとにまったく違う事情が出てきます。1870年代から続く英国の職人街、島がまるごと靴産業になったスペイン、ウクライナ移民が1905年にシカゴで始めた革なめし工場——。

このページは、産地・歴史を扱った記事44本を地図の上に並べたものです。現在11の国と地域、延べ53記事分が載っています。

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英国・ノーサンプトンシャー(11記事)

1870年代から靴職人の街として続く、グッドイヤーウェルト製法の本拠地。

ノーサンプトンシャーには、Tricker’s(1829年)、Sanders(1873年)、Crockett & Jones(1879年)、Barker(1880年)、Loake(1880年)、Cheaney(1886年)といった工房が、いまも同じ土地で稼働しています。1足の靴に200以上の工程をかけ、ソールを縫い付けて交換可能にするグッドイヤーウェルト製法は、この地域が確立して世界へ広がった技術です。チェルシーブーツがヴィクトリア女王のために作られたという逸話も、この産地から生まれました。

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イタリア・マルケ州ほか(9記事)

靴の産地はフィレンツェでもミラノでもなく、アドリア海側のマルケ州。

マルケ州は手縫い靴の産地で、Premiata(1885年創業)をはじめとする工房が集まっています。北部のビエッラはアルプス山麓の繊維の街で、FILAが1911年にテキスタイルメーカーとして創業した土地。ボローニャには1929年創業の紳士靴工房があり、アブルッツォ州の山岳地帯ではVibramソールを使った登山ブーツが作られています。産地ごとに担うものがはっきり分かれているのがイタリアの特徴です。

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フランス・ロマンほか(9記事)

アルピニスト靴の工房が、ブラジルから運んだゴムで自社ソールを作っている。

ロマン=シュル=イゼールのParabootは、ブラジルの港から運んだ天然ゴムで自分たちの靴底を製造する数少ない工房です。アルザス地方のHeschungは上質な革靴にトレッキングソールを合わせる組み合わせを選び続け、南仏カマルグの湿地では騎馬牧夫のためのブーツが生まれました。パリ発のスニーカーブランドは、アマゾンの野生ゴムとフェアトレード調達を掲げて素材の出所を全部開示しています。

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アメリカ(6記事)

太平洋岸の手縫い工房、中西部の工場都市、シカゴのタンナリー。

ワシントン州スポケーンとオレゴン州スキャプーズには、いまも手縫いでワークブーツを作る工房が隣接して集まっています。中西部の「工場の街」からはThorogoodやWolverineが生まれ、マサチューセッツ州ブロックトンでは1884年創業のAldenが革靴を作り続けている。そしてシカゴには、1905年にウクライナ移民が始めたHorween Leather Company——馬の臀部を6ヶ月かけてなめす、北米唯一のシェルコードバン製造タンナリーがあります。

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北欧(5記事)

林業と自然環境が形にした靴。ゴムタイヤ会社が長靴を作り、のちに携帯電話会社になった話も。

スウェーデンの林業からは、森で一日働くための堅牢なブーツが生まれました。フィンランドでは1916年ヘルシンキ創業のKarhu(フィンランド語で「熊」)が独自クッション技術を開発し、1898年創業のゴムタイヤ会社はラバーブーツを手がけたあと「Nokia」を名乗るようになります。デンマークのECCOは1963年、革から靴底まで自分たちで作ると決めた垂直統合型の会社です。

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カナダ(3記事)

1931年創業の軍靴工房と、マイナス40℃で機能するウィンターブーツ。

ブリティッシュコロンビア州ビクトリアのVibergは1931年、軍や警察向けのサービスブーツから始まった工房で、いまも同地で手製靴を作っています。北部の極寒地帯向けには、Baffin・Manitobah・Kamik・Sorelといったブランドがマイナス40℃でも動けるウィンターブーツを設計してきました。カナダ先住民のムクルク(毛皮の履物)の技術を引き継ぐブランドも含まれます。

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スペイン・マヨルカ島/バスク(2記事)

島がまるごと靴産業の拠点。農民の靴がファッションアイコンになった土地でもある。

地中海に浮かぶマヨルカ島は、CamperやLottusseを生んだ靴産業の島です。一方、バスク・カタルーニャ地方には14世紀から農民や兵士が履いていた麻縄底の履物「アルパルガタ」があり、これがエスパドリーユの原型になりました。1927年創業のCastañerが1970年代にイヴ・サンローランとウェッジソールを共同開発したことで、農作業の靴が一気にファッションの側へ渡っています。

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日本・浅草(2記事)

100年続く靴職人の街。シカゴのコードバンを縫っている工房もある。

東京・浅草は日本の製靴産業が集積してきた土地です。SCOTCH GRAIN、HARUTA、三陽山長、SHETLANDFOXといった国産ブランドがこの流れを汲み、グッドイヤーウェルト製法での一貫製造を続けています。シカゴのHorweenから届いたシェルコードバンを浅草の職人が縫う——素材と技術が地球を半周して1足になる工程が、いまの日本の革靴には残っています。

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ポルトガル・ギマランイス/フェルガイラス(2記事)

欧州第2位の靴輸出国。「Made in Italy」の次の選択肢として台頭している。

ポルトガル北部のギマランイスは「ポルトガル靴産業の首都」と呼ばれる街で、家族経営の靴工場が30年、40年と続いています。ゼロウェイストのレザーカッティング技術を持つ工房もあり、自社工場でのフルコントロール製造が強みです。フェルガイラスは革靴の産地として、欧州の有名ブランドの製造も担ってきました。

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オーストラリア(2記事)

1932年アデレード、馬具職人がブーツを作り始めた。

1932年、南オーストラリア州アデレードで馬具職人がサイドゴアブーツを作り始めます。牧場で毎日履くための靴として設計されたそのブーツは、いまも同じ形で作られている。砂漠の牧場主が自分たちで靴を作り出した例もあり、UGGのようにシープスキンの防寒履物が世界へ広がったケースもこの土地から出ています。

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ブラジル(2記事)

日本の草履をゴムで再現しようとしたら、世界で3億足売れた。

1962年、サンパウロのメーカーが日本の伝統的な草履をゴムで再現しようと試みます。底面の米粒模様は藁の質感を写したもので、当初は労働者向けの安価なサンダルでした。それがいまでは年間3億足を売る国民的プロダクトになっています。またアマゾンの野生ゴムは、フランスのスニーカーブランドが自社ソールの素材として調達する供給源でもあります。

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