「白スニーカーを一足持っておこう」と思ったとき、スタンスミスとコンバースを繰り返していた時代が終わって、気づいたら「Common Projects知ってる?」という会話が聞こえてくるようになりました。シリアルナンバーだけが刻まれた白いスニーカー——「何のロゴもないのに高い」と感じるか、「だからこそいい」と感じるか。Common Projectsが作ったのは靴ではなく、「ロゴのない白スニーカーに価値を見出す人たちのカテゴリー」でした。
でも、Common Projectsの次が見えていない人は多い。そして、Common Projects以外にも「ロゴが主張せず、背景が語れる白スニーカー」は存在します。カナダで2021年に生まれたばかりのブランド、ニューヨーク発のイタリア職人靴、素材のルーツを全て開示するミネソタのD2C、デザイン都市アムステルダムのシューズブランド——4足それぞれに「なぜこれを選んだか」の話があります。
石油タンカーを係留するロープと同じ素材が入った白スニーカー:NORDA 001
NORDA(ノルダ)は2021年にカナダで創業しました。「世界初のバイオベースDyneema(ダイニーマ)パフォーマンススニーカー」として誕生した一足で、Dyneema(DSM社のUHMWPE繊維)は重量比で鋼鉄の15倍の強度を持ち、石油タンカーの係留ロープや防弾チョッキにも使われる繊維です。その素材のバイオベース版をアッパーに採用し、アウトソールはMichelin(ミシュラン)のタイヤ技術から生まれたラバーを使っています。
「この白スニーカー、アウトソールはミシュランが作ってるんだよ——タイヤのミシュランが——で、アッパーは石油タンカーの係留ロープと同じ素材」という話は、靴に興味のない人でも「それは面白い」という反応になります。白くてミニマルな見た目からは想像もつかない素材の背景が出てくる——それがNORDA 001を選んだときの体験です。手に取ると、アッパーが驚くほど軽く、かつ独特の張りがある——一般的なレザーとは明らかに違う素材感で、「これが例のDyneemaか」という確認が足元で起きます。2021年創業のブランドなので「NORDA知ってる?」に「知らない」という答えがほぼ確実に返ってくる今が、選ぶ理由のひとつです。
Common Projectsと同じイタリア職人製で、「その次」を選ぶ:Koio Capri
Koio(コイオ)は2015年にニューヨークで創業した白スニーカーブランドです。ブランド名はイタリア語で「革」を意味する “cuoio”(クオイオ)に由来し、イタリア・マルケ州の職人工房で一足ずつ手縫いで作られています。Common Projectsが「同じ白い革靴」の世界にいるなら、Koioはその隣に並ぶ「同じイタリア製で、知る人ぞ知る選択肢」として機能します。
Capriをはじめて足に入れたとき、まずカーフレザーのしなやかさに気づきます——鞄のような上質な革が足を包む感覚で、履き始めからすでに「いい靴を履いている」という質感がある。白いシルエットはCommon Projectsに近いですが、Koioのほうがつま先がわずかに細く、コーデにスーツを合わせても浮かない洗練度があります。「コイオってニューヨークのブランドで、Common Projectsと同じイタリアの職人が作ってるんだよ」という話は、白スニーカーをすでに知っている人に刺さります。Common Projectsを「知っている人が選ぶ次の靴」としての文脈が自然に生まれます。
素材のルーツを全部開示している、ミネソタ発のD2C白スニーカー:Oliver Cabell Low 1
Oliver Cabell(オリバー カベル)は2018年にアメリカ・ミネソタ州で創業したD2Cシューズブランドです。このブランドの最大の特徴は「サプライチェーンの完全開示」——Low 1に使われている革がどの農場から来たか、縫製がどの工場で行われたか、全てが公式サイトで公開されています。「この靴の革、どこから来たか知ってる?」という話ができるブランドはそうありません。製造はイタリア・マルケ州の家族経営工房で、手縫いで仕上げられています。
Low 1はシンプルな白×ガムソールのシルエットで、Common Projectsの系譜にありながら独自の哲学が加わっています。足に入れると、イタリアの職人仕事が伝わる革の質感と縫製の丁寧さに気がつきます——特にソールの取り付け部分の縫いが、「ていねいに作られた靴だ」という確信を与えてくれます。「ミネソタのブランドで、革がどこから来たか全部サイトで公開してるんだよ」という話は、ファッションにエシカルな関心を持つ人に特に刺さります。4足の中で最も「選んだ理由を説明したくなる」一足です。
「アムステルダムに靴ブランドがあるの?」——デザイン都市発の白スニーカー:Mercer Amsterdam W1
「アムステルダムってファッションやデザインの都市のイメージはあるけど、靴ブランドがあるの?」——Mercer Amsterdam(マーサー アムステルダム)を知っている人に出会うたびに、最初にそう言われます。2012年にオランダ・アムステルダムで創業し、白×ガムソールのミニマルなシルエットにVibram(ビブラム)ソールを採用したW1がブランドの代名詞です。「白いスニーカーにビブラム?それって普通はトレッキングシューズに使うソールだよね」という逆説が、この靴を選んだときの会話の入り口になります。
W1を歩いていると、Vibramソールの接地感が他の3足とはっきり違うことがわかります——ソールの踏み返しが少し硬くて、雨の日の石畳でも「滑る気がしない」という安心感がある。白スニーカーでここまで歩行の確かさを感じたのは初めてだ、と思った靴です。「デザイン都市発なのにアウトドア系のソール」という意外性——普通の白スニーカーには出てこない話が、Mercer Amsterdam W1には複数層になって入っています。セレクトショップや公式サイトから入手できます。
まとめ:Common Projectsの次という選択肢は、世界にちゃんとある
今回紹介した4足をまとめます。
- NORDA 001:カナダ・2021年発。石油タンカー係留ロープと同じDyneema素材×Michelinソール。「素材の話ができる白スニーカー」として唯一無二
- Koio Capri:ニューヨーク発・イタリア職人製。Common Projects同様のイタリア製ルーツを持つ「その次の選択肢」。レザーの質感と細身シルエットが大人コーデに溶け込む
- Oliver Cabell Low 1:ミネソタ発・素材ルーツを完全開示。「この革がどこから来たか全部公開している」という透明性が他にない武器
- Mercer Amsterdam W1:2012年アムステルダム発・Vibramソール。デザイン都市発×アウトドア系ソールという逆説が会話になる
「素材の話で驚かせたい」ならNORDA 001、「Common Projectsを知っている人と話したい」ならKoio Capri、「靴の倫理観から選びたい」ならOliver Cabell Low 1、「デザインと機能の両方で語りたい」ならMercer Amsterdam W1——それぞれに「なぜこれを選んだか」の答えが違う4足です。個人的にNORDA 001をすすめます。「石油タンカーのロープと同じ素材が入っている」という一言が、白スニーカーの話を全く違う次元に持っていってくれます。この話をしたとき、靴を知っている人も知らない人も同じ反応をします——「それは面白い」。














コメント