セールの靴は「何と比べた値引きか」で読む。過去の値段、希望小売価格、そして型落ちとB品の読み方

「通常価格」や「メーカー希望小売価格」に線が引かれて、その横に安い値段。70%OFFの文字を見ると、つい手が伸びます。

でも、線が引かれた「元の値段」が何の値段なのかを確かめたことはあるでしょうか。消費者庁は、こうした表示について考え方と目安を示しています。そこには、新品と中古品、キズ物、旧型の物とは「同一の商品とは考えられない」という一文もあります。

この記事では、消費者庁の「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」と特定商取引法の解説から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。特定の店を取り上げる記事ではありませんし、個々の表示が問題かどうかは事案ごとに判断されるものです。読み方の手がかりとして使ってください。最後に出典をまとめました。

目次

まず、線の引かれた値段が「どの種類」かを見る

今の値段に別の値段を並べて安さを見せる表示を二重価格表示と呼びます。消費者庁の考え方は、並べる値段の種類ごとに分かれています。この記事で扱うのは次の2つです。

  • 過去の販売価格:「当店通常価格」「セール前価格」など、その店が前に売っていた値段
  • 希望小売価格:メーカーなどが設定した値段。アウトレットや通販でよく見るのはこちらだと思います

ここからは編集部の見方です。どちらと比べているかで、読み方が変わります。値札の線の近くに書いてある名前を、最初に見てください。

「当店通常価格」と比べている場合の目安

過去の販売価格と比べる表示について、消費者庁の考え方はこうです。「過去の販売価格を比較対照価格とする二重価格表示が行われる場合に、比較対照価格がどのような価格であるか具体的に表示されていないときは、一般消費者は、通常、同一の商品が当該価格でセール前の相当期間販売されており、セール期間中において販売価格が当該値下げ分だけ安くなっていると認識するものと考えられる」。

そのため、同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格と比べるなら、不当表示に該当するおそれはないと考えられる。そうとはいえない価格と比べる場合は、「当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等その内容を正確に表示しない限り」、不当表示に該当するおそれがある、とされています。

「最近相当期間」かどうかは個々の事案ごとに検討されますが、一般的な目安が示されています。

  • 見る期間は、セール開始時点からさかのぼる8週間(販売期間が8週間未満ならその期間)
  • その価格で売られていた期間が、販売されていた期間の過半を占めていれば、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよい
  • ただし、その価格で売られていた期間が通算して2週間未満の場合、またはその価格で売られた最後の日から2週間以上たっている場合は、そうとはいえない

不当表示に該当するおそれのある例として、元の値段で売られていたのは2日間だけだった、「定価」と称する値段での販売は4年前に終わっていたといったケースが挙がっています。もうひとつ、セールをすると決めたあとに売り始めた商品については、セール前の値段で売っていた期間を正確に書いても、不当表示に該当するおそれがあるとされています。

ここからは編集部の見方です。買う側にできるのは、「当店通常価格」の近くに「いつの価格か」が書いてあるかを見ることだと思います。何も書いていなければ、それはセール前に相当期間その値段で売られていたと受け取られる価格だ、というのがガイドラインの前提です。気になったら「この通常価格は、いつまでの価格ですか」と聞いてみてください。混雑していて答えが返ってこないこともあると思いますが、そのときは値引き率ではなく、今の値段そのものが自分にとって払っていい額かで決めるのが確実です。

「メーカー希望小売価格」と比べている場合

希望小売価格については、考え方が別に示されています。一般消費者は通常、希望小売価格を、製造業者等が小売業者の価格設定の参考として設定し、あらかじめカタログや商品本体への印字などで公表しているものと受け取っていて、「小売業者の販売価格が安いかどうかを判断する際の参考情報の一つとなり得るもの」と認識している、と。

だから、製造業者等により設定され、あらかじめ公表されているとはいえない価格を「希望小売価格」と称して比べると、不当表示に該当するおそれがある。例として、実際より高い価格を希望小売価格として使うこと、希望小売価格が設定されていない(撤廃されている場合を含む)のに任意の価格を使うことなどが挙がっています。

また、メーカーが小売業者向けにだけ示している「参考小売価格」「参考上代」などについては、カタログなどで広く示されている価格なら比べること自体は可能だが、希望小売価格以外の名称を用いるなど、一般消費者が誤認しないように表示する必要があるとされています。

ここからは編集部の見方です。希望小売価格は「その店が前に売っていた値段」ではなく、あくまで参考の値段です。だから8週間の目安はそのままは当てはまりません。アウトレットや通販で希望小売価格と比べた大きな値引きを見たら、同じ商品がほかの店でいくらで売られているかを確かめてみてください。比べる相手が参考価格なら、比べる自分の側も実際の売値で考えるのが筋だと思います。

サイズ違い・色違いは「同一の商品」

では、何が「同一の商品」なのか。ガイドラインはこう書いています。「商品の同一性は、銘柄、品質、規格等からみて同一とみられるか否かにより判断される。なお、衣料品等のように色やサイズの違いがあっても同一の価格で販売されるような商品については、同一の商品に該当すると考えられる」。

ここからは編集部の見方です。靴でも、色やサイズが違っても同じ値段で売られていた型なら、その中の特定のサイズや色だけが残ってセールになっている場合、比べている元の値段は同じ商品の値段として読めることになります。ただし、それで値下げの中身まで保証されるわけではありません。元の値段が前の章の目安に合っているかは、別に見る必要があります。そして長く在庫に残っていたなら、次の章の「製造からの年数」はサイズ残りにも当てはまります。

端のサイズは試せる在庫が少なく、通販なら試せません。自分の足の数字を知っているかで、選べる範囲が変わります。

ブランドによって幅(ワイズ)の作りも違うので、足囲(親指と小指の付け根まわり)も測っておくと、通販でワイズ表記を見るときに使えます。足囲はやわらかいメジャーで測ります。

旧型、キズ物、展示品は「同一の商品とは考えられない」

同じ箇所に、もうひとつ大事な一文があります。「ある一つの商品の新品と中古品、汚れ物、キズ物、旧型又は旧式の物(以下「中古品等」という。)とは、同一の商品とは考えられない」。

そして不当表示に該当するおそれのある例として、販売する商品と同一ではない商品(中古品等を売るときの新品などを含む)の過去の販売価格を比較対照価格に用いることが挙がっています。事例は、長期間の展示品で新品とはみなされない商品に、新品の「当店通常価格」を並べていたケースです。希望小売価格や他店の価格についても同様で、他店と比べた事例では、比べていたのがその商品の性能を一層向上させた後継機種の価格でした。

一方で、「同一ではない商品との二重価格表示であっても、一の事業者が実際に販売している二つの異なる商品について現在の販売価格を比較することは、通常、景品表示法上問題となるものではない」ともされています。

ここからは編集部の見方です。靴に当てはめると、こう読めると思います。

  • 型落ち(前のモデル):未使用の新品であっても、現行モデルとは同一の商品ではない。その型落ち自身が前に売られていた値段と比べているのか、現行モデルの値段と比べているのかを見る。同じ店で今売っている現行モデルと並べて比べているだけなら、通常は問題とならないとされている
  • B品・訳あり(キズ物・汚れ物)・展示品:新品とは同一の商品ではない。比べている元の値段が新品の値段なのかを確かめる

B品の値札に新品の「通常価格」が並んでいたら、何と比べた値段なのかを店に確かめる材料にしてください。それだけで不当表示と決まるわけではなく、どう表示されているかで事情は変わります。

型落ちと長い在庫で見るのは、製造からの年数

ここからは編集部の見方です。型落ちは、見た目が古くなること自体は好みの問題ですが、靴の場合は作られてからの年数を気にしたほうがいい素材があります。

履いていないのに壊れる靴があります。履けない一足を、履かずに守る方法で紹介したとおり、あるメーカーは発泡ポリウレタン底について、一般的に製造後4年以上保管されていた状態で発生する頻度が上がると説明しています。買ってから何年ではなく、製造からの年数です。これはスニーカーでも革靴でも、底の素材しだいで関係します。

何シーズンも前の型落ちや、長く在庫にあった靴が新品の箱入りで安く出ていたら、箱や内側のラベルで製造年月を探す。見つからなければ店に聞く、そのモデルの発売時期を調べる。それでも分からず、底がポリウレタンかもしれないなら、慎重に考えてください。底の素材の見分け方は「ゴム底」と「合成底」の違いは、樹脂が入っているかどうか。靴底の素材で決まる得意と不得意にまとめました。

B品・訳ありで見るのは、理由が書いてあるか

ここからは編集部の見方です。B品や訳ありは、何が理由で新品ではないのかで、買っていいかが分かれると思います。

  • 箱の傷や汚れ:靴そのものには関係しない
  • 革の小さなキズ・シワ・色ムラ:見た目の問題。実物か写真で場所と大きさを確かめられるなら判断できる
  • 接着剤のはみ出し、縫製の乱れ:見た目だけか、強度にかかわるかで分かれる。かかとやつま先など形を保つ部分なら慎重に
  • 展示品:試し履きされている可能性がある。中敷きの跡や底の汚れを見る
  • 理由が書いていない:これがいちばん判断できない

理由が書いていないなら、聞く。答えが返ってこないなら、買わないのが無難だと考えています。

通販のセールは、返品の条件を先に読む

消費者庁の特定商取引法ガイドは、通信販売についてこう書いています。

「通信販売では、消費者が売買契約を申し込んだり、締結したりした場合でも、その契約に係る商品の引渡し(特定権利の移転)を受けた日から数えて8日以内であれば、消費者は事業者に対して、契約申込みの撤回や解除ができ、消費者の送料負担で返品ができます。もっとも、事業者が広告であらかじめ、この契約申込みの撤回や解除につき、特約を表示していた場合は、特約によります」。

同じガイドは、通信販売の広告で返品に関する事項(返品の可否・返品の期間等条件、返品の送料負担の有無)を表示事項として挙げています。

ここからは編集部の見方です。つまり、広告に返品の特約が書いていなければ、受け取りから8日以内なら送料を自分で負担して返品できる。逆に「セール品は返品不可」などの特約が書いてあれば、それに従うことになります。だから通販のセールでは、値段より先に返品の条件を読む。商品ページの下のほうや、「特定商取引法に基づく表記」「返品について」といったページにまとめられていることが多いと思います。「未使用に限り可」「試着後は不可」「セール品は不可」など、条件には段階があります。

返品できないなら、サイズ感が分かっているモデルだけを買う。前に履いたことがある型番、同じブランドで同じ木型のもの、といった具合です。通販での選び方は専門機関は「試着せずに靴を買うな」と言っています。それでも通販で買う人がやることに書きました。

買う前に、ひとつだけ自分に聞く

ここからは編集部の見方です。値札の読み方が分かっても、70%OFFの文字は強い。だから最後に、「この値引きがなくても、もともと欲しかった靴か」を自分に聞いてみてください。

そしてもうひとつ。「少し大きいけど、安いから中敷きで合わせればいい」は、セールでいちばん多い失敗のひとつだと思っています。中敷きで直せることと直せないことは中敷きを入れれば合うようになる、は半分だけ本当です。直せることと直せないことに書きました。サイズが合わないなら、値段がいくら下がっていても見送るほうが、結局は安くつきます。

合う一足を買えたら、革靴なら最初は無色のクリームで手入れを始めるのが無難です。色付きは色が合わないと戻せません。

まとめ:値引き率より、何と比べたかと、安い理由

整理します。消費者庁の考え方では、店が前に売っていた値段(当店通常価格など)と比べる場合、何も書いていなければ同じ商品がセール前の相当期間その値段で売られていたと受け取られます。目安はセール開始からさかのぼる8週間のうち過半、ただし通算2週間未満や最後に売られてから2週間以上なら当たらない(個々の事案ごとに検討)。希望小売価格と比べる場合は、メーカーが設定して公表している参考の値段であることが前提で、8週間の目安とは別の考え方です。

そして色やサイズが違っても同じ値段で売られる商品は同一の商品、新品と中古品・汚れ物・キズ物・旧型などは同一の商品とは考えられない。型落ちは現行モデルとは別の商品として、製造からの年数を見る。B品は理由を見る。通販は返品の条件を先に読む。

まず1つだけやるなら、次にセールの値札を見たとき、線の引かれた値段に付いている名前(当店通常価格か、希望小売価格か)と、「いつの価格か」が書いてあるかを確かめることです。そして、値引きがなくても欲しかった靴かを自分に聞いてください。

出典

※各資料は2026年10月4日に確認しました。この記事は法律上の判断を示すものではありません。

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この記事を書いた人

日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

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