専門機関は「試着せずに靴を買うな」と言っています。それでも通販で買う人がやること

このサイトは、靴を紹介して通販へ送っている媒体です。そのうえで、最初に都合の悪い話から始めます。

シューフィッターを認定している団体の公式サイトに、はっきりこう書かれています。

「サイズ表記はあくまで目安ですので、靴を購入する際は毎回しっかりと試着することが大切です。試着せずにサイズを見るだけで購入することはやめましょう」

正論です。反論のしようがありません。それでも、近くに売っていない、サイズが置いていない、行く時間がない、という理由で通販を使う人はいます。私たちもそうです。

だからこの記事は、試着の代わりに何をするかという話をします。代わりになる、とは言いません。ただ、やるとやらないとで、失敗の数がはっきり変わります。

目次

先に、なぜサイズ表記だけでは決まらないのか

「26センチと書いてあるのだから、26センチの人が履けるのでは」と思います。ところが、そうなりません。理由が3つあります。

ひとつめ。日本の靴のサイズ表示は、靴の内側の寸法ではなく「その靴に合う足の寸法」を表しています。足と靴と健康協議会の説明では、日本の靴サイズはJISに基づいて足の長さ(足長)と太さ(足囲)、または足長と足幅の2か所の寸法で表示することになっています。「23EEE」という表記は、その靴に合うの長さと太さの目安です。靴そのものの内寸ではありません。

ふたつめ。ここを誤解している人がとても多いので、はっきり書きます。足の実寸に、自分でゆとりを足してはいけません

靴には「捨て寸」と呼ばれる、つま先のゆとりが1から1.5センチほど取られています。この話を聞いて「では実寸に1センチ足したサイズを買うのか」と考えてしまう。逆です。その捨て寸は、すでに靴の内側に入っています。メーカーが木型に織り込んだぶんなので、買う側が足す必要はありません。

東京都の福祉情報サイト「福ナビ」の靴選びの解説には、具体例まで書かれています。足長の数値にもっとも近い0.5刻みのサイズ表示を選ぶ。たとえば足長が23.4センチなら、サイズ表示としては23.5が適している。つまり足長23.4センチの人が買うのは24.5ではなく、23.5です

そして三つめが、通販でいちばん効いてきます。木型がブランドごとに違います。靴を作る元型のことで、同じ福ナビの解説にも各メーカーの靴の木型は違いますとはっきり書かれています。

同じ26センチでも、つま先の形が細いもの丸いもの、甲が高いもの低いもの、かかとが大きいもの小さいものがあります。数字が同じでも、中身は別の靴です。だから「いつも26だから26で」が通じません。

ここまでを踏まえると、通販でやることは決まります。自分の足を数字で持っておくこと。そのブランドの癖を先に調べること。そして届いた日に、店でやるはずだった確認を自分でやること。順に書きます。

買う前に。自分の足を数字で持つ:メジャーとフットスケール

ここが出発点です。何十年も前に覚えた数字のまま買っている人が、いちばん多い。足の形は年齢とともに変わりますし、左右でも違います。

測るのは2つ。足長は、かかとからいちばん長い指の先までの長さ。紙の上に立って、かかとと指先に印をつければ測れます。足囲は、親指と小指の付け根のいちばん出ているところを、ぐるりと一周した長さ。メジャーがあれば家でできます。

条件が3つあります。立った状態で、体重をかけて。座って測ると小さく出ます。両足とも。左右で違うのがふつうなので、大きいほうに合わせます。そして足がむくみがちな夕方に。朝の数字で買うと、夕方に入らなくなります。

足の形をそのまま測れるフットスケールもあります。紙とメジャーでも測れますが、一度きりではなく、年に一度は測り直すことを考えると、道具があったほうが続きます。家族の分も測れます。

測った数字は、スマートフォンにメモしておいてください。足長と足囲、左右それぞれ。通販の画面でサイズ表を見るとき、この4つの数字があるかないかで、判断の質がまるで違います。

そして足囲の数字は、そのままでは使えません。EやEE、3Eといった記号に読み替える必要があります。この対応は足長と足囲の組み合わせで決まっていて、同じ足囲でも足長が違えばワイズの記号は変わります。

読み替えの表は、足と靴と健康協議会が「JIS靴のサイズ表」として公開しています。福ナビの解説も、足囲の表示についてはそちらを見るように案内しています。一度自分のワイズを確定させてしまえば、あとは商品ページでその記号を探すだけになります。

買う前に。そのブランドの癖を調べる(お金はかかりません)

数字を持ったら、次は相手のほうを調べます。ここは道具が要りません。

まず公式のサイズガイドを探してください。まともなブランドなら、木型ごとのサイズの出方を書いています。「このモデルは小さめなので半サイズ上を」「この木型は幅が細め」といった記述があれば、それがいちばん確かな情報です。海外ブランドなら、日本のセンチ表記と自国表記の対応表も出ています。

次にレビューの読み方です。星の数は見なくていい。見るのは「ふだん何センチの人が、このモデルの何センチを買って、どうだったか」が書かれているものだけです。数字の入っていない「ちょうどよかった」は、情報量がゼロです。

そして、いちばん効く手をひとつ。同じブランドの別のモデルを店で履いてみる。欲しい色やモデルが店になくても、同じ木型を使った別の一足なら置いてあることがあります。これができれば、通販の不安の大半は消えます。遠回りに見えますが、失敗して送り返す手間より早い。

そして、この記事でいちばん実効性のある手がこれです。同じ靴なら、返品と交換の条件がいい店で買ってください

まったく同じ商品でも、扱う店によって条件はまるで違います。期間、どういう状態なら受け付けるか、送料を誰が持つか。試着できないぶんを埋めてくれるのは、結局ここです。数百円の差より、返せるかどうかのほうがはるかに大きい

条件がよければ、サイズ違いを2足注文して、合わなかったほうを返すという買い方もできます。試着の代わりとしては、これがいちばん確実です。ただし両方送料が自分持ちなら、まったく割に合いません。だから先に条件を読む。

逆に注意したいのがセール品とアウトレットです。返品や交換を受け付けない条件になっていることが多い。安くなっている一足ほど、サイズを外したときに逃げ場がありません。その一足でサイズを試すのは、いちばん割の悪い賭けです。

届いた日に。店でやるはずだった7つの確認

ここが、この記事の本体です。道具は要りません。

靴のフィッティングには、専門家が使う確認項目があります。さきほどの福ナビの解説に載っている7項目を、そのまま借ります。この7項目のうち一箇所でも合わないところがあれば、その靴は本来その足に適さないとされています。

1. サイズ。足の寸法に合っているか。2. かかとのカーブ。かかと部分が食い込んだり、すき間があきすぎたりせず、ぴったり合っているか。ここが合わないと靴ずれになります。3. アーチのカーブ。土踏まずを圧迫しすぎていないか。

4. 指の付け根の幅。親指と小指の付け根のあいだが、きつすぎないか。5. 親指の高さ。親指の爪のところが上に当たりすぎていないか。ここは店で履いているだけでは痛みにならなくても、長時間歩くことで爪の内出血が起こりやすくなるとされています。6. 指先のゆとり。歩いたときに指先全体がきつくないか。7. 外くるぶしの下。靴のふちが外くるぶしの下に当たっていないか。

この確認をする条件も、店と同じにします。夕方に。両足とも履いて。いつも履いている靴下で。そしてしばらく歩く。片足だけ履いて立ってみる、では足りません。ふだん厚い靴下を履く人が、素足で試すと必ず判断を誤ります。

そして返品できる状態を保ったままやってください。室内の、絨毯かマットの上で。靴底を汚さない。箱と付属品と、付いていたタグは、判断が決まるまで捨てない。「とりあえず一度外を歩いてみよう」をやった時点で、返せなくなります

迷ったら返す、が基本です。履いているうちに馴染むだろう、で通った試しがほとんどありません。革は多少伸びますが、長さは伸びませんし、かかとの形も変わりません。

少しだけ大きかった人へ。返さずに済ませる道:サイズ調整のパッド

MISTER MINIT(ミスターミニット)
¥660 (2026/09/20 12:01時点 | Amazon調べ)

ここだけは、返す以外の道があります。大きかった場合は、埋められるからです。

逆は無理です。小さかったら返してください。幅は修理店で少し広げられることがありますが、長さはどうにもなりません。これは道具の話ではなく、物理の話です。

大きかったときの手は、どこが余っているかで変わります。全体的にゆるいなら、薄い中敷きを1枚。かかとだけ浮くならかかと用のパッド。足が前に滑って指先が当たるなら、甲の裏に入れるタンのパッド

ただし限度があります。埋められるのは、せいぜい半サイズぶんだと思ってください。1サイズ違うものをパッドで詰めると、足の位置が本来の場所からずれて、靴の曲がる位置と足の曲がる位置が合わなくなります。そうなると、どこも痛くないのに歩きにくい靴ができあがります。

そしてパッドを入れるのは、返品の判断をしたあとです。中敷きを入れて外を歩いてから「やっぱり返そう」は通りません。

この一足で行くと決めたら。最初の一日を乗り切る:靴ずれ対策

BAND-AID(バンドエイド)
¥800 (2026/09/20 12:02時点 | Amazon調べ)

返さないと決めた。ここからが、通販で買った靴の本当の難所です。

店で買った靴なら、店員が「かかとが少し硬いので最初は気をつけて」と言ってくれます。通販にはそれがありません。誰も何も言わないまま、おろしたての靴で一日出かけることになります

だから、最初の数回は準備をしてから履いてください。かかとの内側に貼るクッション、靴ずれ防止のスティック、そして絆創膏。とくに絆創膏は、痛くなる前に貼るのが正しい使い方です。痛くなってから貼っても、皮膚はもう傷んでいます。

そしておろしたての一足で、いちばん長く歩く日に出かけないこと。近所に買い物に行く日、半日で帰れる日から始める。出張や旅行の初日におろすのは、いちばんやってはいけない使い方です。

返さないと決めた靴に、最初にやること:シューキーパー

MISTER MINIT(ミスターミニット)
¥1,650 (2026/09/20 12:03時点 | Amazon調べ)

最後にひとつ、通販ならではの話を。

通販で届く靴は、箱の中で長く眠っていたことがあります。詰め物が足りないまま積まれていれば、甲にくぼみができたり、つま先が上を向いたままだったりします。店頭で見て買う靴と違って、届くまで状態が分かりません。

だから、返さないと決めたら早めにシューキーパーを入れてください。履く前から形が歪んでいる靴を、そのまま自分の足に馴染ませてしまうのはもったいない

選び方には注意があります。大きすぎるものを押し込むと、常に強い力がかかり続けます。小さすぎると、かかとまで届かず効きません。力を調整できないバネ式ほど、サイズ選びが効いてきます。シューキーパーそのものの選び方は、別の記事に詳しく書きました。

まとめ:数字を持って、条件を読んで、夕方に試す

揃えるものを整理します。足を測るメジャーかフットスケール。少し大きかったときのための調整パッド。おろしたての日のための靴ずれ対策。そして、この一足で行くと決めたあとのシューキーパー。

まず1つだけと言われたら、足を測る道具です。いちばん安く、いちばん最初に効きます。自分の足長と足囲を左右とも言えないまま通販で靴を買うのは、身長を知らずに服を買うようなものです。

そして、この記事でいちばん大事なのは道具ではありません。注文する前に返品の条件を読むことと、届いた日に、返せる状態のまま、夕方に、いつもの靴下で、両足で歩いてみること。この2つだけで、通販の失敗はかなり減ります。

最後に、最初の引用に戻ります。専門機関は「試着せずにサイズを見るだけで購入することはやめましょう」と書いています。この記事がやっているのは、その試着を店から自宅の玄関に移すことです。移しただけで、試着をやめたわけではない。そこだけは省かないでください。

合う靴は、履いた瞬間に分かります。迷っている時点で、たぶん合っていません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次