足に付いた水虫の菌は、すぐにはうつらない。靴の中に閉じ込めないための、皮膚科学会の靴のケア

水虫は、銭湯や家族からうつるもの。そのイメージは間違っていません。日本皮膚科学会の解説でも、いちばん多いのは家庭内での感染とされています。

ただ同じ解説を読むと、菌が足に付くことと、水虫になることの間には条件があることも分かります。付いた菌が長い時間、足に付いたままでいること。そして足の角質に傷があること。前者に、靴が深く関わっています。

この記事では、日本皮膚科学会の「皮膚科Q&A 白癬(水虫・たむしなど)」から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。靴の記事ですが、治療は皮膚科の領分です。最後に出典をまとめました。

目次

まず、それが本当に水虫かどうか

学会のQ&Aはこう書いています。「医院を受診した自称水虫患者の約3割は白癬菌が見つからなかった、という研究もあります。このような方は足白癬に対する治療をしても良くなりません」。

かゆみについては、「足白癬の患者さんで痒がるのは10%程度とされ、しかも痒くなるのは夏期だけで、秋になると痒くなくなることも多いのです。逆に全く痒みがないと言う患者さんも多くいます」。そして「痒みをはじめ、自覚症状のない足白癬患者は、治療をすることもなく放置し、その間白癬菌を散布することになりますので、他人への足白癬の最大の感染源になります」。

ここからは編集部の見方です。受診した人の3割は水虫ではなかった、という研究があるなら、自分で水虫だと決めて薬を塗っても、見当違いのことがある。逆に、かゆくないから水虫ではない、とも言えない。見た目や感覚では決められないということです。

市販薬については、「足白癬であれば、市販されている水虫薬でも治すことができます」としたうえで、かゆみを止める成分なども入っているため「病院で処方される薬よりかぶれる頻度が高いです」。また十分な治療には「症状がないところを含め、両足に1日1g、1か月に30g程度の外用が必要です」とし、「足白癬とよく似た皮膚病の鑑別を含め、皮膚科専門医で診断を確かめてから、十分な治療を行ってください」と書いています。民間療法については「効果が不明な上にカブレをおこす人も少なくありません」。

爪の水虫(爪白癬)では、爪が分厚くなると靴にあたって痛くなることもあり、「特に糖尿病があると爪やその周辺に細菌感染が起こりやすく、重篤な蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの細菌感染症に発展する例も見られます」。治療に先立って「皮膚科で診断を確定しておく必要があります」とされています。

ここからは編集部の見方です。この記事で書く靴のケアは、治療の代わりではなく、うつらない・治りにくくしないための環境づくりです。市販薬で毎年なんとかしてきた人も、一度は皮膚科で診断を確かめてください。糖尿病がある人は、なおさらです。

足に付いた菌は、すぐにはうつらない

学会のQ&Aによれば、「温泉場や銭湯、シャワールームあるいは足白癬患者がいる家庭では床、畳、足拭きマット、スリッパなどを調べると、ほぼ100%白癬菌が存在します」。

ただ、付いたらすぐうつるわけではありません。「乾いたタオルで払うなどの簡単な処置、あるいはそのまま15分でも素足で過ごすだけで足に付着した白癬菌は減っていきます。一方白癬菌が付着したまま、靴下・靴を履き続け、長時間白癬菌を足に付けたままにすると足白癬になる可能性が高まります」。

時間の目安もあります。「白癬菌が皮膚内に侵入し、感染が成立するまで最低24時間かかりますが、しかし足の皮膚に傷口などがある場合は、12時間で感染するというデータがあります。このことから白癬菌が皮膚表面に付着しても24時間以内に足をきれいに洗えば、感染を防ぐことができます」。そして「足の角質に傷がついていると、菌が侵入しやすいことが知られています」。

ここからは編集部の見方です。条件は2つあると読めます。付いた菌を長く足に付けたままにしないことと、角質に傷を作らないこと。前者が、靴の話につながります。指の間の皮がむけている人は、むしらないことも大事だと思います。

「靴を履くことによって生ずる文明病」

Q&Aは別の箇所で、年齢と暮らし方の話からこう書いています。「裸足で走り回る子供では白癬菌が脱落しやすく、また角質の新陳代謝も盛んですので、足白癬が少ないのが普通です。子供が成長し、社会人になり、1日中靴下・靴を履くようになると、足白癬になる人が増えてきます。そのため足白癬は靴を履くことによって生ずる文明病と言うことができます」。

病院の集計では20歳を過ぎると足白癬の患者数が急増するとし、理由として「社会人になると靴を履く機会、時間が増え、また仕事上自分で勝手に靴の脱ぎ履きをしにくくなるなど足をめぐる環境が悪化すること」を挙げています。また、「一日中靴を履き続けなければならないサラリーマンの方が、裸足でいる時間が多い小児や主婦より、足白癬の頻度が高くなっています」とも書かれています。

学会が書いている、靴のケア

Q&Aには「足白癬にならないための靴のケアは?」という問いがあり、答えはこうです。

  • 「洗える靴ならば可能な限り頻回に靴を洗って、靴の中の白癬菌を取り除いて、しっかり乾燥させてください。水でゆすいだだけでは靴の中の菌は除去しきれません」
  • 「何足か用意して毎日同じ靴を履かないように工夫しましょう」
  • 「洗えない皮靴などは、中を雑巾で拭き取って白癬菌を取り除き、その後しっかりと乾燥させることが大切です」
  • 「長靴、安全靴など靴を長時間履いて、足に合わない靴は、足の皮膚がむれて、しかも擦れますので足・爪白癬の難治化の要因になります。足によくあった靴を選ぶことが大切です」
  • 「サンダルなどを履くことは足の湿度を下げることができますので可能ならば靴から履き替え、靴、足の乾燥を図ってください」
  • 「なおサンダルでイボイボのついたいわゆる健康サンダルは避けてください。かえって足の裏が硬くなり(健康サンダル角化症)、足白癬の治療には効果がないばかりか、治りが悪くなったという報告があります」

ここからは編集部の見方です。この答えには「洗う」「拭く」「乾かす」「替える」「履き替える」が入っていると読めます。次の章から、靴の種類ごとに具体的にしていきます。

洗えるスニーカーは、中まで洗って、しっかり乾かす

学会は「水でゆすいだだけでは靴の中の菌は除去しきれません」と書いています。ここからは編集部の見方です。洗うなら洗剤を使って中まで。そのうえで、洗剤を残さないすすぎと、しっかりした乾燥までをひと続きの作業と考えてください。洗剤が残ると黄ばみの原因にもなります。手順はスニーカーを洗うと黄ばむのは、すすぎ不足です。洗ったあとの3工程と、もう黄ばんだ靴のことにまとめました。

洗う回数を増やしたいなら、洗えることを前提に作られた靴を選ぶのも手です。

乾かし方は学会のQ&Aには書かれていませんが、編集部としては、直射日光や暖房の熱を直接当てないほうが、靴の素材にとっては安全だと考えています(素材ごとの注意は合成皮革のタグの話や加水分解の話に書きました)。風通しのいい日陰に、中まで空気が通るように吊るしておくと乾きやすいと思います。

洗えない革靴は、中を拭いて、休ませる

革靴について学会が書いているのは「中を雑巾で拭き取って白癬菌を取り除き、その後しっかりと乾燥させること」です。

ここからは編集部の見方です。かたく絞った布で中敷きと内側を拭き、そのあと履かずに乾かす日を作る。だから毎日同じ靴を履かないが、ここでもつながってきます。何足あれば回せるかは革靴は何足あればいいのか。3足を揃える前に、2足で足りるかを計算するで計算しました。

なお、靴用の殺菌・抗菌をうたうスプレーや中敷きもありますが、学会のQ&Aの靴のケアの答えには登場しません。この記事では、出典に書かれている「洗う・拭く・乾かす・替える」を基本にしています。

職場では、履き替えられる時間を作る

学会は「サンダルなどを履くことは足の湿度を下げることができますので可能ならば靴から履き替え」と書いています。そして長時間履いて、足に合わない靴は、蒸れと擦れで難治化の要因になるとしています。

ここからは編集部の見方です。デスクワークなら、席では履き替えるだけで、靴の中で過ごす時間を減らせます。選ぶときは、学会が避けるよう書いているイボイボのついた健康サンダルではないもの、足の裏が平らに当たるものを。オフィス用のサンダルには足つぼ付きのものも多いので、写真で中敷きを確かめてください。職場の共用サンダルは使わず、自分のものを(家庭内のスリッパの共有を避けるよう学会も書いています)。

長靴や安全靴で長時間働く人について、学会が書いているのは「足によくあった靴を選ぶことが大切です」という一文です。編集部としては、休憩のときに脱いで乾かせるなら、それも手だと思います。

銭湯やジムのあとは、乾いたタオルで拭いてから

Q&Aには「家庭内に白癬菌を持ち込まないようするにはどうしたらよいでしょうか?」という問いもあります。銭湯やサウナ、共用のシャワールームでは足底に菌が付着することは避けられませんとしたうえで、「入浴後はきちんと水気をふき取り、足を乾いたタオルなどで拭いてから靴下、靴を履くことをお勧めします。乾いたタオルで拭くだけで付着した菌量を随分減らせるデータがあります」。さらに「家にかえってから足を乾いたタオルなどで拭き取ります」。「入浴後に抗真菌薬(水虫薬)を足の指の間から足の裏全体につけるのも有効です」ともあります。

市販薬の使いどころについても、「市販薬の積極的な効用としては足白癬の予防や再発予防の目的で使うことでしょうか」。予防目的の処方は保険で認められていないため、予防に使うなら市販薬になる、とされています。

ここからは編集部の見方です。ジムや温泉に行く日は、足を拭くための乾いたタオルを1枚別に持っていくといいと思います。体を拭いて湿ったタオルではなく、乾いたものを。使ったタオルは持ち帰ったらそのまま洗濯に回し、家の足拭きには使わない。

足の洗い方にも注意があります。「角質をむしったり、軽石などで擦りすぎて角層に傷がつくと、かえって足白癬になりやすくなります」。「石鹸をよく泡立て、なでるように洗ってください」。足裏の角質の扱いは足裏のタコは、削る前に場所を見てくださいも参考にしてください。

家族がいる家では、同居者の治療がいちばん

靴の話から少し離れますが、ここを抜かすわけにはいきません。学会はこう書いています。「最も頻度が高い足白癬は、家庭内感染によるものが大部分を占めます」。同居する人から菌が散布されていると、足ふきマット、床、畳や布団、スリッパなどを介して菌が足に付着する、と。

そして予防については、「家庭内の足白癬患者や爪白癬患者を治すことが最優先課題で、これがもっとも効果的な予防法です」。スリッパやサンダルの共有を避ける、足ふきマットを別にするなども挙げられています。足白癬の人がいる家庭では、タオルやマットは洗濯し、洗えないものは濡れた雑巾で水拭きしてしっかり乾燥、床や畳は掃除機や水拭きで、とされています。「白癬菌は垢と一緒ですと1年以上生き続ける」とも。足を洗うときも、同居人に足白癬の人がいる場合は「ゴシゴシ洗いは禁物」です。

ここからは編集部の見方です。かゆくない水虫の人が最大の感染源になる、と学会は書いていました。自分がその側かもしれないし、家族かもしれない。だから家族で一度、皮膚科で診てもらうのがいちばん効くのだと思います。足ふきマットを一人ずつ分けるなら、洗いやすいものを。

なお学会は、家庭内に白癬患者がいなければ、こうした部屋のケアは不必要とも書いています。誰もいないなら、ここまでする必要はありません。

秋に治ったように見えても、やめない

学会は、秋から冬にかけて症状が出にくくなるのは菌の増殖が鈍って量が減るからで、「しかし白癬菌は残っていることが多く、再び春から夏にかけて高温多湿の季節になると増殖し、足白癬の症状が出てきます」と書いています。

そして足白癬が治らない最大の理由を「中途半端な治療」としています。塗り薬で症状は1〜2週間ほどで良くなっても菌は死滅し切らず、症状が消えたところでやめてしまう。症状のある部分にしか塗らない。「両方の指の間から足裏全体に最低1カ月毎日塗り続けることが大切です」。さらに、きちんと治療して菌が消えても、同居している家族や、自分の爪に残っている病巣から再感染する可能性もあるとされています。

ここからは編集部の見方です。秋にいちばん大事なのは、症状が落ち着いて見えても治療をやめないこと。市販薬だけで済ませてきたなら、この時期に一度皮膚科へ。そのうえで、靴の中を拭いて乾かす習慣を、夏が来る前に作っておくのがいいと思います。

まとめ:付けないより、閉じ込めない

整理します。日本皮膚科学会のQ&Aによれば、白癬菌は銭湯や共用シャワー、足白癬の人がいる家庭の床やマットなどにほぼ100%存在します。足に付いた菌は、乾いたタオルで払う、あるいは15分でも素足で過ごすだけで減っていく。一方で付いたまま靴下・靴を履き続けると、足白癬になる可能性が高まる。Q&Aは別の箇所で、足白癬を「靴を履くことによって生ずる文明病」とも表現しています。

靴のケアとして書かれているのは、洗える靴は頻回に洗ってしっかり乾燥(ゆすぐだけでは不十分)、何足か用意して毎日同じ靴を履かない、洗えない革靴は中を雑巾で拭いてしっかり乾燥、長時間履く足に合わない靴は難治化の要因なので足に合った靴を、可能ならサンダルに履き替える(ただしイボイボの健康サンダルは避ける)。そして家庭内感染がいちばん多く、最も効果的な予防は同居者の治療です。

また、医院を受診した自称水虫患者の約3割は白癬菌が見つからなかったという研究もあり、かゆくない水虫もあります。まず1つだけやるなら、皮膚科で診断を確かめること。そのうえで、今夜からいちばんよく履く靴の中を拭いて、明日は別の靴を履くことです。

出典

※各資料は2026年10月5日に確認しました。この記事は医療上の判断に代わるものではありません。

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この記事を書いた人

日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

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