革靴の「原産国」は、甲皮と底皮を結合した国。景品表示法の告示と運用細則で読む「Made in ○○」

靴の中敷きやラベルに入っている「Made in Italy」「Made in Portugal」「日本製」。革靴を選ぶとき、この一文が気になる人は多いと思います。でも、その国で何をしたら「その国で作った」ことになるのか、考えたことはあるでしょうか。

じつは、革靴(運用細則の言葉では「かわ靴」)については、消費者庁が公開している運用細則に、はっきり書かれています。原産国となるのは、「甲皮と底皮を接着、縫製その他の方法により結合すること」が行われた国です。

この記事では、消費者庁のページと、告示・運用基準・運用細則から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。最後に出典をまとめました。

目次

告示が不当表示とするのは、作った国が分からなくなる外国名などの表示

もとになっているのは、景品表示法に基づく告示「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年公正取引委員会告示第34号)です。消費者庁のページは、この告示が「商品の原産国について、原則として、次のような表示を不当表示として規定しています」と説明しています。

中身を短くまとめると、次の2つです。

  • 国内で生産された商品に、外国の国名・地名・国旗、外国の事業者やデザイナーの名前や商標、全部または主要部分が外国の文字の表示があって、国内で生産されたことを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの
  • 外国で生産された商品に、原産国以外の国の国名や事業者の名前、全部または主要部分が和文の表示があって、その原産国で生産されたことを一般消費者が判別することが困難であると認められるもの

不当表示を行っていると認められた場合は、消費者庁長官が事業者に措置命令などの措置を行う、とも書かれています。

ここからは編集部の見方です。この告示は、原産国を書くことそのものを定めたものではなく、どこで作られたか消費者が分からなくなるような表示を、不当表示とするものだと読めます。外国の名前を使っていても、作った国がはっきり分かるように書かれていれば、原則として不当表示にはならない、ということです(あとで書く運用基準の例外があります)。

「原産国」は、実質的な変更をもたらす行為が行われた国

では「原産国」とは何か。告示の備考は「その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為が行なわれた国」と定めています。そして、表に挙げた品目について、何がその「行為」にあたるかを、別の運用細則で決めています。

運用細則(昭和48年12月5日事務局長通達第14号)の表には、食料品や衣料品と並んで「身のまわり品」の「かわ靴」があり、こう書かれています。

「甲皮と底皮を接着、縫製その他の方法により結合すること。」

編集部は、甲皮は足の甲を包む上の部分(アッパー)、底皮は靴底を指すと読んでいます。ただ、ゴム底の靴が「底皮」に含まれるかまでは、細則からは分かりません。比べてみると、品目によって基準がずいぶん違います。同じ表で、下着や外衣(洋服など)、帽子、手袋は縫製、ソックスは編立、腕時計はムーブメントの組立(高級腕時計などには、ただし書きがあります)です。

反対に、運用基準は、次のような行為は「実質的な変更をもたらす行為」に含まれないとしています。

  • 商品にラベルを付け、その他標示を施すこと
  • 商品を容器に詰め、または包装をすること
  • 商品を単に詰合せ、または組合せること
  • 簡単な部品の組立をすること

ここからは編集部の見方です。革靴の場合、基準になっているのは甲皮と底皮を1つにする工程です。革がどこの国の革か、甲革をどこで裁断し縫ったか、デザインがどこの国か、ブランドの本拠地がどこか。運用細則の基準は、これらのどれでもありません。「Made in Italy」と書かれた革靴は、甲皮と底皮をイタリアで結合した靴と読むのが、この細則に沿った読み方だと考えています。逆に言えば、この一文だけで、革の産地や、すべての工程がその国で行われたかまでは分かりません。

なお、運用細則に書かれているのは「かわ靴」です。合成皮革や布のスニーカー、ゴムの長靴などに同じ基準が当てはまるかは、この表からは読み取れません。素材の表示の読み方は合成皮革と人工皮革の記事と革の種類とJISの記事にまとめています。

日本製なのに外国の名前が入っているとき

国内で作った靴に、外国風のブランド名や英語のロゴが入っていることもありますよね。運用基準は、そうした表示があっても、次のような方法で国産品であることが明示されていれば、不当な表示に該当しないとしています。

  • 「国産」「日本製」などと明示すること
  • 「○○株式会社製造」「製造者○○株式会社」などと明示すること
  • 事業者の名称が外国の文字で書かれている場合は、日本国内の地名を冠した工場名を(地名がなければ所在地を添えて)併記すること
  • 目立つようにして「Made in Japan」と表示すること

ただし、それでもなお原産国が紛らわしいときは、外国の国名などとその商品との関係を和文で明示しなければ、不当な表示に該当するおそれがある、とも書かれています。運用基準が挙げる書き方の例は、「日本製、生地は英国製」や「イタリヤのデザインにより、○○株式会社で縫製」などです。

また、運用基準によると、告示でいう「外国の事業者」はその国に本店を有する事業者のことで、日本に本店がある事業者は、いわゆる外資系の会社であっても「外国の事業者」に含まれない、とされています。

ここからは編集部の見方です。靴の箱やタグに「イタリアのデザイン」「イタリア製の革を使用」のような書き方があったら、それはデザインや素材とその国の関係を説明しているのであって、原産国そのものとは別の話かもしれません。原産国はどこかを、別に書かれた「○○製」「Made in ○○」で確かめるのがいいと思います。

「Made in Italy」の革靴を前にしたら、何を見るか

告示の2項は、外国で生産された商品にその商品の原産国以外の国の国名などが表示されていて、原産国で生産されたことを一般消費者が判別することが困難なものを、不当表示としています。

ここからは編集部の見方です。つまり、甲皮と底皮を別の国で結合した革靴に、それと分からない形で「Made in Italy」と表示すれば、この2項に当たり得る、と読めます。店頭や商品ページでは、次の点を見るといいと思います。

  • 箱や値札、タグ、商品ページに、和文の「イタリア製」「原産国:イタリア」があるか
  • 「Italy」の文字が、デザインや革(素材)について書いたものではないか(「イタリアのデザイン」「イタリア製の革を使用」など)
  • ブランドが工場の所在地や産地を説明しているか

なお、海外のメーカーが付けた「Made in ○○」は、その国のルールで付けられたものです。日本の運用細則と同じ基準で付けられているとは限らない点も、頭の片隅に置いておくといいと思います。

表示の見方を、靴選びにどう使うか

ここからは編集部の見方です。原産国の表示は、その靴の品質を保証するものではありません。同じ国で作られた靴でも、作り手も作り方もさまざまです。それでも、甲皮と底皮を結合した国という原産国の定義が分かっていると、表示を読み違えずにすみます。

どこで、誰が作っているかまで知りたいなら、ブランドが自社の工場や産地を説明しているかを見るのが近道です。自社工場を持つ靴メーカーの記事や、ポルトガルの靴産地の記事、イタリア靴の産地の記事も参考にしてください。底の付け方そのものの違いはグッドイヤーウェルト製法の記事に書きました。

日本製の革靴を探すなら、「日本製」で探したうえで、商品説明の「原産国」「生産国」の欄で確かめるのが近道だと思います。検索の言葉に一致しただけでは、原産国が日本とは限りません。

届いたら、靴や箱のラベルでも原産国を確かめてください。

まとめ:革靴の原産国は、甲皮と底皮を結合した国

景品表示法に基づく告示「商品の原産国に関する不当な表示」は、原則として、外国の国名や事業者名、外国の文字などの表示で、どこで作られたか一般消費者が判別することが困難なものを不当表示としています。告示でいう原産国は「実質的な変更をもたらす行為が行なわれた国」で、運用細則はかわ靴について、それを「甲皮と底皮を接着、縫製その他の方法により結合すること」と定めています。国内で作った靴に外国の名前があっても、「日本製」などと明示されていれば不当な表示に該当しないとされていますが、それでも紛らわしいときは、外国の国名などと商品との関係を和文で明示しなければ、不当な表示に該当するおそれがある、ともされています。

ここからは編集部の見方です。革靴の「Made in ○○」は、甲皮と底皮をその国で結合したという意味で読むのが、細則に沿った読み方だと考えています。革の産地やデザインの国とは分けて考え、和文の原産国表示も確かめる。それだけで、靴のラベルが少し正確に読めるようになると思います。

出典

  • 消費者庁「商品の原産国に関する不当な表示」
  • 「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年10月16日公正取引委員会告示第34号)
  • 「商品の原産国に関する不当な表示」の運用基準について(昭和48年10月16日事務局長通達第12号)
  • 「商品の原産国に関する不当な表示」の原産国の定義に関する運用細則(昭和48年12月5日事務局長通達第14号、昭和52年・昭和56年改正)

※告示・運用基準・運用細則は、いずれも消費者庁のページからPDFで読めます。各資料は2026年10月14日に確認しました。

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この記事を書いた人

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