パンプスを履くと、かかとの後ろ、アキレス腱のあたりが当たって痛い。気づいたら赤くなって、少し盛り上がっている。靴擦れだと思って絆創膏を貼っているうちに、なかなか治らない。そんなことはないでしょうか。
MSDマニュアル家庭版は、かかとの後ろの腫れや痛みの原因の1つとしてアキレス腱滑液包炎を解説しています。そのうち、かかとの後ろの皮膚とアキレス腱の間に炎症が起きるアキレス腱皮下滑液包炎について、靴のかかとの後ろを支える硬い部分に、かかとの後ろが繰り返し圧迫される歩き方をすると起こしたり悪化させたりすることがある、と書いています。
この記事では、MSDマニュアル家庭版「アキレス腱滑液包炎」(2025年10月最終更新)から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。かかとの痛みは、自分で判断せず整形外科などで診てもらってください。最後に出典をまとめました。
アキレス腱滑液包炎には、2つの種類がある
滑液包は、皮膚や筋肉、腱、靱帯と骨がこすれる部分で衝撃を吸収し、摩擦を減らす、液体で満たされた平らな袋です。MSDマニュアルは、アキレス腱の近くの滑液包の炎症を、場所によって2つに分けています。
- アキレス腱皮下滑液包炎:かかとの後ろの皮膚とアキレス腱の間(アキレス腱の後ろ側)にある滑液包の炎症。主に若い女性に多くみられますが、男性でも発症します。この滑液包は、異常な圧迫などから組織を守るために、アキレス腱と皮膚の間に新しくできることがある、とも書かれています
- 踵骨後部滑液包炎(アルベルト病):アキレス腱がかかとの骨に付く部分の前側にある滑液包の炎症
ここからは編集部の見方です。靴の話が詳しく出てくるのは、このうちアキレス腱皮下滑液包炎のほうです。MSDマニュアルによると、医師は、赤色または皮膚と同じ色の結節があれば皮下の滑液包炎と診断し、踵骨後部の滑液包炎は腱とかかとの骨の間を強くつまんで痛みが起こるかを調べるそうです。どちらなのかは自分では分からないので、この記事の靴の話は「皮下滑液包炎について書かれたこと」として読んでください。
靴との関係。MSDマニュアルに書かれていること
アキレス腱皮下滑液包炎について、MSDマニュアルは2つのことを書いています。
- 「靴のかかとの後ろを支える硬い部分に、かかとの後ろの軟部組織が繰り返し圧迫される歩き方をすると、滑液包炎を起こしたり、悪化させたりすることがあります」
- 「かかとの後方に向かうにつれて鋭く内側へと細くなっていく靴(かかとの高い靴やパンプスなど)が、かかとの後ろの骨の腫大(パンプス瘤またはハグルンド変形と呼ばれます)を引き起こしたり、悪化させたりすることがあり、これがアキレス腱皮下滑液包炎の一因になります」
もう一方の踵骨後部滑液包炎は、アキレス腱の緊張を増大させるあらゆる状態で起こる可能性があり、かかとの損傷(例えば硬い靴や足に合わない靴が原因で起こるもの)や、関節リウマチや痛風などの病気が原因となることもある、とあります。
ここからは編集部の見方です。「パンプス瘤」という名前のとおり、かかとの後ろの骨の出っ張りは、パンプスのようなかかとの後ろが細く絞られた靴と結びつけて説明されています。ただし出典は「一因になります」「ことがあります」という書き方で、パンプスを履く人がみんなそうなる、とは書いていません。
どんな症状か
MSDマニュアルによると、典型的な症状はかかとの後方部分の腫れ、熱感、痛み、圧痛などで、症状は滑液包炎の原因と位置によって異なります。
- アキレス腱皮下滑液包炎:初期はかかとの後ろの赤み、痛み、熱感。のちに皮膚の一番上の層がすり減ることがある。数か月後、圧痛があり軟らかい、赤色または皮膚と同じ色の盛り上がった部分(小結節)である滑液包が生じ、炎症を起こす。慢性化すると、硬くうろこのようになることがある
- 踵骨後部滑液包炎:けがや痛風のあとに突然出ることがあり、関節リウマチなどが原因のときは徐々に現れる。かかとの後ろに痛み、腫れ、熱感があり、歩いたり靴を履いたりするのが難しくなる。大きくなると、腫れがかかとの両側に広がる
診断は医師の診察から始まり、X線検査では滑液包炎そのものは診断できないものの、かかとの骨折や関節リウマチなどほかの原因を否定するために行うことがある、MRI検査を行うこともある、とされています。
ここからは編集部の見方です。最初は「赤くて痛い」で、靴擦れとよく似ています。上の症状は2つの種類で書き分けられていて、自分ではどちらか分かりません。かかとの後ろの赤みや痛み、盛り上がり、熱っぽさが続いているなら、何か月か待たずに、靴擦れと決めつけずに整形外科などで診てもらってください。受診までの間に冷やしたり温めたりしてよいかは、出典では治療の一部として書かれているので、自己判断せず受診先で確かめてください。靴擦れそのものの防ぎ方は靴擦れの記事にまとめています。
治療の中で、靴とパッドはどう出てくるか
MSDマニュアルは、2つの種類のどちらにも、患部の加温または冷却、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ステロイドと麻酔薬の混合液の注射で、一時的に痛みと炎症を和らげることができる、としています。
そのうえで、アキレス腱皮下滑液包炎の治療では、炎症を軽減することと、かかと後方の圧迫や動きが減るように靴の中での足の位置を調整することが目標になる、と書いています。挙げられているのは次のものです。
- フォームラバーやフェルトでできたヒールパッドを靴の中に入れて、かかとを上げて圧迫をなくす
- 痛みのある部分にゲル状の保護パッドをあてたり、靴の後部を広げて炎症を起こした滑液包の周りにパッドをあてたりする処置が、助けになることがある
- 炎症が軽減するまで、かかとを覆う部分がない靴を履くこともある
- ときには、特別の靴(ミッドソールのかかと部分を安定させるようにデザインされたランニングシューズなど)、靴の中に入れる装具、またはその両方が、かかとの後ろを刺激する足やかかとの異常な動きを抑えるのに役立つ
- かかとの後ろやアキレス腱への刺激を和らげるパッド付きの靴もある
なお、注射の治療を受けた人は安静にしておくべきだ、とも書かれています。これらで効果が見られなければ、かかとの骨の一部の形を整える手術が必要になることもある、とあります。
ふだんの靴を見直すなら(編集部の見方)
ここからは編集部の見方です。上の治療は、医師が診断したうえで行うものです。受診したうえで、ふだんの靴を見直すときは、出典に出てくる言葉から、次の点を手がかりにするといいと思います。
- かかとの後ろの形:後ろに向かって細く絞られた形より、かかとの後ろに当たりの少ない形を選ぶ
- かかとの硬い部分の当たり方:試し履きで歩いたとき、かかとの後ろの硬い部分が、同じ場所に当たり続けないかを確かめる
- 痛む時期:痛みや腫れがある間は、医師と相談のうえ、かかとを覆わない靴にする選択肢もある(出典に「炎症が軽減するまで」とあります)。仕事でパンプスが必要なら、通勤は当たりの少ない靴にして職場で履き替える、という方法も考えられます
パンプスが痛む理由と木型の関係はパンプスと木型の記事に、中敷きでできることとできないことは中敷きの記事に書きました。
出典に出てくるヒールパッドは、靴の中に入れてかかとを上げ、かかとの後ろへの圧迫をなくすためのものです。パンプスのかかとの内側の後ろに貼る脱げ防止パッドとは別物で、そちらは痛む場所への当たりを強くするかもしれないので気をつけてください。また、かかとを上げると、パンプスが脱げやすくなったり、つま先が詰まったりすることも考えられます。自分の症状に合うかどうかは、受診先で相談してから使ってください。
痛む部分に直接あてる保護パッドなら、ジェル状で、かかとの後ろに貼れるものを。
まとめ:かかとの後ろの腫れは、靴擦れと決めつけない
MSDマニュアル家庭版によると、アキレス腱滑液包炎には、かかとの後ろの皮膚とアキレス腱の間に起きるアキレス腱皮下滑液包炎と、アキレス腱の前側に起きる踵骨後部滑液包炎があります。皮下滑液包炎は、靴のかかとの硬い部分にかかとの後ろが繰り返し圧迫される歩き方で起こしたり悪化させたりすることがあり、かかとの後方に向かって鋭く内側へと細くなっていく靴(かかとの高い靴やパンプスなど)が、かかとの骨の腫大(パンプス瘤)を引き起こしたり悪化させたりすることがあり、これが一因になる、とされています。その治療では、ヒールパッドなどで、かかと後方の圧迫や動きを減らすことが目標とされ、効果がなければ手術が必要になることもあります。
ここからは編集部の見方です。まず1つだけやるなら、続いているかかとの後ろの赤みや盛り上がりを、整形外科などで診てもらうことです。靴の見直しは、そのあとで医師と相談しながら進めてください。
出典
- MSDマニュアル家庭版「アキレス腱滑液包炎」(最終更新2025年10月)
※資料は2026年10月25日に確認しました。














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