上の子の靴が、まだきれいなまま小さくなった。下の子があと半年で同じサイズになる。靴箱に取っておくか、迷ったことはないでしょうか。服ならそのまま回せるのに、靴はどうなのだろう、と。
子ども靴を作っているムーンスターは、靴の替え時を解説したページで、子どもの靴について「お下がりへ回すことはおすすめしません」と書いています。米国足病医学会(APMA)の保護者向け資料はもっと強い言い方で、「NEVER HAND DOWN FOOTWEAR」(履き物は決してお下がりにしないこと)と書いています。
この記事では、ムーンスターの解説、APMAの資料、世田谷区の保育園の保健だより、日本皮革産業連合会(JLIA、業界団体)のレポートから引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。先に断っておくと、ムーンスターは子ども靴を売る側で、APMAの資料にも子ども靴ブランドのストライドライトの名前が「Brought to you by」と入っています。どちらも、靴を売る企業が関わる資料です。そして、日本の公的機関がお下がりそのものを取り上げた資料は、編集部が探した範囲では見つかりませんでした。最後に出典をまとめました。
ムーンスターが挙げる理由:すり減り方と、やわらかい骨
ムーンスターの「靴の替え時・寿命」の「サイズが小さくなった靴」の項目には、こうあります。「お子さんの場合は、消耗が激しいことや歩き方の癖もありソールのすり減り方も様々ですので、お下がりへ回すことはおすすめしません」。
続けて理由が書かれています。「子どもの未発達でやわらかな足の骨は、靴からの外的な影響を受けやすく正しい成長を阻害する恐れがあるためです」。そして「小さく履けなくなった靴は、寿命と考えて良いと思います」。
お下がりの話ではありませんが、同社の「子どもの足の構造」のページによると、子どもの足は(年齢の記載はありません)「およそ70%が軟骨で構成される」もので、「土踏まずも未完成でバランスが悪く、すべてが発育途上のため外的な影響を受けやすいといわれています」。
ここからは編集部の見方です。それぞれ「恐れがある」「いわれています」という書き方で、お下がりの靴で足がこうなった、という調査がこのページに示されているわけではありません。ムーンスターも禁止はしていません。「おすすめしません」のとおりに受け取るのがいいと思います。
APMAが挙げる理由:サイズが同じでも合うとは限らない、菌のこと
APMAの資料「Helpful Kids Shoe Shopping Tips」の理由は、ムーンスターとは別のものです。編集部の訳で紹介します。
- ある靴のサイズが1人の子に快適に合うからといって、別の子にも同じように合うとは限らない
- 靴を共有すると、水虫や爪の真菌などが広がることがある
同じ資料には「かかとを調べる」という項目もあります。子どもは、靴が小さくなるより早く靴のかかとを履きつぶすことがある。そしてかかとの偏ったすり減りは、足の問題のサインのことがあり、足病医に診てもらうべきだ、という内容です。
編集部の考えはこうです。「共有」が、時間を置いたお下がりにどこまで当てはまるかは資料に書かれていません。そして足病医は日本ではなじみのない専門職なので、上の子の靴のかかとの減り方が偏っていたら、足を診てくれる整形外科に相談するのが現実的だと考えます。お下がりにするかどうかとは別に、見ておいて損のないところです。靴の中の菌については、水虫と靴のケアの記事にまとめています。
大きくすり減った靴は避ける:乳幼児向けの区の資料から
世田谷区の保育園の保健だより「おおきくなぁれ」(令和8年5月)は、お下がりの話ではなく乳幼児の靴選びの話ですが、靴の状態についてこう書いています。「靴底が大きくすり減ったものや、かかとがつぶれた靴は形が崩れて、歩きにくくなるため使用は避けましょう」。別の項目では「足に合わない靴は、転倒や足の変形の原因になることもあります」とも書いています。
ここからは編集部の見方です。これは今履いている靴にも当てはまる話です。お下がりで見るべきなのは、靴の古さに加えて、前の子のすり減り方が残っていることと、今の子の足に合うかが確かめられていないことだと考えています。
回すかどうかを決める4つの確認
ここからは編集部の見方です。ムーンスターもAPMAも、「この条件ならお下がりでいい」とは書いていません。これは「通ったら安全」という条件ではなく、取っておいた靴を手に取ったときに、回さないと決めるための確認です。
- 靴底:大きくすり減っていないか(世田谷区)。かかとの減り方が偏っていないか(APMA)
- かかと:つぶれていないか(世田谷区)。かかとの両側を押して、ぺしゃんとつぶれないか(APMA)
- 長く置いていた靴か:ムーンスターは、経年劣化でソールがはがれることがあるので、長らく履いていない靴は、履く前に状態を確かめるようすすめています。保管中の劣化は履いていないのに壊れる靴の記事へ
- 今の足で履いたとき:幼少期の理想は、かかとを合わせてつま先に5〜8mm程度の余裕(ムーンスター)。乳幼児向けの世田谷区の資料は5〜10mm程度。小学生以上の数字はこれらの資料にはありません。中敷きが外せれば、足に当てて確かめられます。甲がしっかりホールドできるかも見ます
どれかに引っかかったら回さない、迷ったら回さない、が編集部の考えです。菌については、皮膚科学会は水虫対策として靴を洗うことをすすめていますが、人に譲る前に洗えば心配がなくなる、とまで書いた資料は見つかっていません。
では、発表会で数回履いただけのような、きれいな靴はどうか。これは資料に書かれていないので、編集部の考えです。ムーンスターの「すり減り方」の理由は当たりにくいでしょう。でもAPMAの「別の子に同じように合うとは限らない」は残ります。4つを確かめたうえで、毎日履く靴には回さず、たまに履く靴に留める。そこが落としどころだと思います。合うかどうかは小さい子の返事だけで決めないようにしてください。理由は子どもの靴のサイズの記事に書きました。
新しく買うなら:まず足を測る
APMAは、靴を買う前に必ず子どもの足を測ること、大きいほうの足に合わせて買うことを挙げています。ムーンスターは、靴紐を結ぶのが難しい子には、脱ぎ履きがしやすく甲に合わせて調整できるバンドタイプをすすめています。かかと部は硬く、かかとから2/3くらいの位置でやわらかく曲がるものを、とも書いています。
JLIAのレポートは、成長期の子どもの足長が年間で1cm前後伸びることから、自分の足長にあった靴を履くためには少なくとも半年ごとに靴のサイズを変える必要があると考えられる、と書いています。測る道具が1つあると、この見直しが楽になると編集部は考えています。
小さくなった靴の行き先
ムーンスターのリサイクルとリユースのページには、思い出の多いファーストシューズは「キレイに洗い飾ったり小物を入れたり」できるとあります。また靴全般の話として、支援団体などへの寄付も挙げられていて、「破損がなく十分に履ける靴が望ましいです」と書かれています。子どもの靴に限った説明ではありません。別の子が履くなら、ここまでの「合うとは限らない」は残るので、この資料だけで子どもの靴の寄付を判断するのは難しいと編集部は考えます。受け入れ条件は団体ごとに確かめてください。同社の処分方法のページによると、靴は多くの自治体で可燃ごみに分別されるようです。分別は住んでいる自治体で確かめてください。
まとめ:上の子の靴は、上の子の靴として終わらせていい
迷ったら回さない。回すなら4つを確かめ、今の足で合うかを見る。新しく買うなら足を測る。編集部の結論はこの3つです。資料はそれぞれ、こう書いています。
- ムーンスターは、消耗や歩き方の癖ですり減り方が様々なこと、足の骨がやわらかく靴からの影響を受けやすく、正しい成長を阻害する恐れがあることを挙げて、子どもの靴を「お下がりへ回すことはおすすめしません」と書いている
- APMAは「決してお下がりにしない」と書き、サイズが同じでも別の子に同じように合うとは限らないこと、水虫などの菌が広がることがあることを挙げている
- どちらも靴を売る企業が関わる資料で、この2つの中にお下がりの害を調べた調査は示されていない
- 世田谷区の保健だより(乳幼児の靴選び)は、お下がりには触れていないが、大きくすり減った靴やかかとがつぶれた靴は使用を避けるよう書いている
服と同じように回せないのは、少しもったいなく感じるかもしれません。でも、たくさん走った靴がすり減っているのは、上の子がちゃんと使い切った証拠でもあります。下の子には、その子の足を測るところから始めてあげてください。
出典
- ムーンスター「靴の替え時・寿命」「子どもの足の構造」「子ども靴の選び方」「靴のリサイクルやリユース」「靴の処分方法」(靴メーカーの解説)
- American Podiatric Medical Association「Helpful Kids Shoe Shopping Tips」(米国の団体の資料。Stride Rite提供の表記あり。発行年の記載なし。日本語は編集部訳)
- 世田谷区 子ども・若者部保育課「おおきくなぁれ 春号」(令和8年5月)
- 日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 白癬」
- 日本皮革産業連合会「子どもの足サイズ計測レポート」(計測は2008年7月〜2011年12月)
※各資料は2026年10月31日に確認しました。














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