若いころは何ともなかったのに、最近、足の内側のくるぶしの下あたりが痛む。夕方になると腫れぼったい。鏡に映った足を見て、土踏まずが前より低くなった気がする。そんなことはないでしょうか。
日本整形外科学会は、子どものころからの扁平足と、中年以降に起きる扁平足を分けて説明しています。前者は痛みはあまりありませんが、後者は内側のくるぶしの下が腫れ、痛みが生じます。原因として挙げているのは、アーチをつり上げる働きをする後脛骨筋(こうけいこつきん)の腱です。
この記事では、日本整形外科学会「成人期扁平足」と、MSDマニュアル家庭版「後脛骨筋腱炎と後脛骨筋腱腱鞘炎」から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。MSDマニュアルのページは扁平足そのものではなく、後脛骨筋の腱の病気についての解説です。足の痛みは、自分で判断せず整形外科で診てもらってください。最後に出典をまとめました。
子どものころからの扁平足と、中年以降の扁平足は違う
日本整形外科学会は、症状をこう書いています。「幼児のころから足裏が平べったく、大人になってもそのまま残っているタイプの扁平足では、痛みはあまりありません。これに対して中年以降に発症する扁平足では内側のくるぶしの下が腫れ、痛みが生じます」。
そして、初期には足の扁平化は目立たないものの、しだいに変形が進み、つま先立ちがしにくくなる。さらに進むと足が硬くなって歩行が障害されます、とあります。成人期の扁平足は女性に多く発生するそうです。
ここからは編集部の見方です。「初期には扁平化が目立たない」というのは大事な点だと思います。土踏まずがまだ低くなっていないように見えても、内くるぶしの下の腫れや痛みがあるなら、それが始まりのサインかもしれません。
アーチを支える、後脛骨筋の腱
日本整形外科学会は、しくみをこう説明しています。足にはアーチ構造があり、効率よく体重を支えている。内側のくるぶしの下に、アーチをつり上げる働きをする後脛骨筋の腱が通っていて、年齢による腱の変性や体重の負荷によって、この腱が断裂すればアーチは低下します。
MSDマニュアルの後脛骨筋腱炎のページは、後脛骨筋腱には正常な足のアーチを維持する働きがありますと書いています。後脛骨筋腱炎は通常、足の関節の動き方の異常で過度の緊張が長く続くことで起こり、大半の患者では足のアーチが低くなっていて、歩くときに足が外側を向く傾向がある。腱の機能障害が、足のアーチが平坦化する一因になっている場合もあります、とあります。高齢者や、過去にけがをした人、慢性の機能障害がある人では、腱が完全に断裂することがあるそうです。
ここからは編集部の見方です。MSDマニュアルは、アーチが低いことを腱炎のある患者の多くに見られる状態として書きつつ、腱の機能障害がアーチの平坦化の一因になる場合もある、としています。どちらが先かを一方向に決めつけず、アーチと後脛骨筋の腱は関係している、と読むのがいいと思います。
こんな症状に気をつける
MSDマニュアルは、後脛骨筋腱炎の症状の進み方を次のように書いています。
- まずは活動が増えたときに、足首の内側・後方にときおり痛みが出る
- やがて痛みが強くなり、腫れが生じる。ふつうに立ったり歩いたりすることが難しくなっていく
- 通常はつま先立ちをすると痛みがあり、腱が完全に断裂している場合はつま先立ちができない
- 腱が完全に断裂している場合は、足が突然平たくなり(アーチ崩壊)、足の裏に痛みが出ることがある
- 腱炎が長く続くと、足のアーチが徐々に下がっていき、足が平らに見えるようになることがある。骨の変化が変形性関節症を引き起こすこともある
同じページには、腱を覆う組織(腱鞘)に炎症が起きる後脛骨筋腱腱鞘炎も載っています。こちらは典型的には痛みが突然起き、内くるぶしの周りに沿って腱が太くなり、腫れているように感じることがあるそうです。治療は腱炎とは違い、安静にして、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を使用する、とあります。また、後脛骨筋腱は関節リウマチや痛風などの炎症性疾患の影響を受けることもある、と書かれています。
日本整形外科学会は、診断の手がかりとして、足が扁平化し、かかとが外を向くようになると、後ろから見て複数の足指が見えるようになることを挙げています。重症度は体重をかけたときの足のX線像で評価し、腱の損傷はX線には写らないのでMRI検査を行うそうです。
ここからは編集部の見方です。内くるぶしの下の腫れや痛みといっても、腱炎か、腱鞘炎か、炎症性の病気か、ほかの原因かは、自分では分かりません。家族に後ろから足を見てもらうと、自分では気づきにくい変化が分かることもあると思います。ただ、それで自己診断をするのではなく、内くるぶしの下の腫れや痛み、つま先立ちのしにくさがあれば、整形外科で診てもらうきっかけにしてください。急に足が平たくなった、つま先立ちができない、痛みで歩くのがつらいといったときは、早めの受診をおすすめします。夕方だけ腫れる、まだ歩ける、という段階でも、続くなら受診してかまわないと考えています。
受診のときは、いつから・どちらの足か・どの時間帯に腫れや痛みが出るか・つま先立ちのしにくさ・ふだん履いている靴をメモして伝えると、話が早いと思います。靴底の減り方も手がかりになるので、よく履く靴を持っていくのもいいかもしれません。
治療の中で、中敷きと靴はどう出てくるか
日本整形外科学会は、予防と治療として次のことを挙げています。
- 足指の筋肉はアーチを支えるのに重要。これを鍛えるために裸足での生活を心掛け、足指を使う
- 予防には適正体重を保つことが大切
- アキレス腱が硬くなっているので、ストレッチ体操を行う
- アーチの低下が明らかな場合は、アーチサポート付きの足底板が処方される。アーチを上げることで、痛みは和らぐ
- 重症例では、手術が必要になることもある
MSDマニュアルは、後脛骨筋腱炎の治療について「靴の中に器具(装具)を入れ、足関節用の装具をサポートのしっかりした靴やブーツとともに着用するだけで、通常は十分です」と書いています。腱が完全に断裂している場合は、正常な機能を取り戻せるように手術による治療を行う、ともあります。
ここからは編集部の見方です。日本整形外科学会の「裸足での生活」は、足指の筋肉を鍛えるためという目的で書かれています。別の病気、たとえばかかとの痛みが出る足底腱膜炎については、MSDマニュアルが治療として「裸足で歩かないようにする」と書いています。目的も病気も違うので、どちらが自分に当てはまるかは症状によって変わります。この記事の2つの出典の間でも、日本整形外科学会は予防として「裸足での生活」を、MSDマニュアルは後脛骨筋腱炎の治療として「サポートのしっかりした靴やブーツ」での装具の着用を挙げていて、目的が違います。どこまで裸足で過ごしていいかは、受診するまで無理に始めず、診てもらった医師に確かめてください。
市販の中敷きと靴は、処方の代わりではない
ここからは編集部の見方です。日本整形外科学会が挙げているのは処方される足底板で、MSDマニュアルが後脛骨筋腱炎の治療として挙げているのは靴の中に入れる装具と足関節用の装具を、サポートのしっかりした靴やブーツとともに着用することです。市販のアーチサポートの中敷きや靴は、これらの代わりにはなりません。まず受診して、足底板が必要かどうかを相談してください。
そのうえで、ふだんの靴を見直すなら、MSDマニュアルの「サポートのしっかりした靴」を編集部なりに具体的にして、かかとまわりがしっかりしていて、中敷きを入れ替えられる靴を選んでおくと、処方の足底板を入れるときにも困りにくいと思います。中敷きでできることとできないことは中敷きの記事に、靴の幅の合わせ方はJISのワイズの記事にまとめています。日本整形外科学会が関連する病気に挙げている外反母趾については外反母趾の記事に、靴底の減り方の読み方は靴底の減り方の記事に書きました。
受診したうえで、医師に足底板までは必要ないと言われた人は、土踏まずを支える形の中敷きを試す方法もあります。「扁平足が治る」とうたう売り文句ではなく、土踏まずの支えがあるか、靴に入るかで選ぶのがいいと思います。
靴そのものを選ぶなら、かかとまわりがしっかりしていて、中敷きを取り外せるものを。
まとめ:内くるぶしの下の痛みは、早めに整形外科へ
日本整形外科学会によると、子どものころからの扁平足では痛みはあまりない一方、中年以降に発症する扁平足では内側のくるぶしの下が腫れ、痛みが生じます。初期には扁平化は目立たず、しだいにつま先立ちがしにくくなる。年齢による変性や体重の負荷で、アーチをつり上げる後脛骨筋の腱が断裂すればアーチは低下します。治療と予防には、足指を使うこと、適正体重、ストレッチ、そしてアーチの低下が明らかな場合のアーチサポート付きの足底板の処方が挙げられています。重症例では手術が必要になることもあります。MSDマニュアルは、後脛骨筋腱炎には装具をサポートのしっかりした靴やブーツとともに着用するだけで通常は十分としつつ、腱が完全に断裂している場合は手術を行う、としています。腱鞘炎は安静と抗炎症薬です。
ここからは編集部の見方です。まず1つだけやるなら、整形外科で診てもらうことです。靴と中敷きは、そのうえで、医師の話を日常の側から支えるものだと考えています。
出典
- 日本整形外科学会「成人期扁平足」
- MSDマニュアル家庭版「後脛骨筋腱炎と後脛骨筋腱腱鞘炎」(最終更新2025年10月)
※各資料は2026年10月18日に確認しました。














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