高齢の親の家の中での転倒。国民生活センターの報告には「スリッパが脱げ、靴下が滑って転倒」した事例があり、滑りにくいスリッパを選ぶ工夫が挙げられている

実家に帰ると、親がかかとのないスリッパでパタパタと歩いている。冬は厚手の靴下にスリッパ。見慣れた光景ですが、ふとしたときに脱げそうで、少し気になることはないでしょうか。

国民生活センターが2025年10月にまとめた高齢者の家庭内事故の報告には、「自宅内でスリッパが脱げ、靴下が滑って転倒」し、手首に近い骨を骨折した70歳代の女性の事例が載っています。報告書は、コードにひっかかったり、段差につまずいたり、スリッパが脱げてすべったなど、ちょっとしたことが転倒・転落の原因になっていると考えられます、と書いています。

この記事では、国民生活センターの報告書(2025年10月)と見守り新鮮情報(2026年6月)、東京消防庁のリーフレットから引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。最後に出典をまとめました。

目次

東京消防庁管内では、高齢者の「ころぶ事故」の半数が住宅等で発生(令和5年中)

東京消防庁のリーフレットは、令和5年中の東京消防庁管内のデータとして、年間6万7千人以上の高齢者が「ころぶ事故」で搬送されています、と書いています。全国の数字ではなく、東京の話です。高齢者の日常生活事故のうち「ころぶ事故」が7割以上を占め、半数は住宅等で発生し、約4割が入院を要する中等症以上と診断されているそうです。原因の多くは家の中の小さな段差や階段などだ、とあります。

国民生活センターの報告書で、スリッパはどう出てくるか

国民生活センターの報告書は、消費者庁と国民生活センターの共同事業「医療機関ネットワーク」に、参画している医療機関(30〜32機関)から寄せられた事故情報のうち、2020年度以降(2025年7月末までの伝送分)の65歳以上の家庭内事故923件を分析したものです。全国のすべての事故を数えたものではなく、東京消防庁の救急搬送のデータとも調べ方が違います。ここでいう家庭内事故は、家庭内またはその周辺で起きたものです。

  • 75歳以上554件のうち、事故のきっかけが「転倒」は33.4%(185件)、「転落」は23.3%(129件)
  • 75歳以上の転倒に関わる商品等の表(上位10位)で、1位は「住宅」38件、「スリッパ」は6件(トイレ設備、浴室設備と同じ件数で8〜10位に並ぶ)
  • 事例の1つ:自宅内でスリッパが脱げ、靴下が滑って転倒。橈骨遠位端(手首に近い骨)を骨折し、複数の骨片が見られた(2022年5月、70歳代女性)

ここからは編集部の見方です。件数だけ見れば、同じ転倒の表で「住宅」38件などのほうが多く、スリッパが転倒の主な原因というわけではありません。6件すべてが「脱げた」事故かどうかも、報告書からは分かりません。ただ、スリッパは家族が今日からでも見直せるものなので、靴のメディアとして取り上げました。

国民生活センターの助言は、筋力と住環境の両方

2026年6月の見守り新鮮情報は、75歳以上の高齢者の家庭内事故は「転倒」が最も多く、加齢とともに重症化しやすくなります、と書いています。原因は環境だけでなく、ふくらはぎの筋力低下による、歩行時のすり足や、わずか1〜2センチの敷居、じゅうたんの端、室内のコードなどに足を引っかけてしまうといった身体機能の衰えもある、とのことです。

予防策としては、住環境の改善と身体機能の維持・向上の両方を進めることが重要だとしています。

  • 筋力の面:自治体の「転倒予防教室」や「介護予防教室」なども活用し、バランス能力や筋力を養う
  • 環境の面:階段や段差に手すりや滑り止めを設置する、室内のコード類をまとめる、滑りにくいスリッパや安定した高さのベッド・椅子を選ぶ(報告書にも同じ記述があります)

報告書の専門家のコメントは、さらに次のことを書いています。

  • 転倒時の外傷は加齢とともに重症化する。比較的若い高齢者は手をついて手首を骨折することが多いが、年齢が進むと上腕骨や大腿骨頸部(足の付け根)などの重い外傷が増え、特に大腿骨頸部骨折は寝たきりや要介護状態に移行する大きな要因となる
  • 転倒を経験した高齢者は再転倒を起こすリスクが極めて高くなる
  • パーキンソン病などの疾病や、向精神薬や降圧剤といった服薬も要因になる。転倒原因を明確にし、疾病の有無について専門医の診断を受けることも重要
  • 全国の地域包括支援センターなどで実施される「転倒予防教室」なども活用する

東京消防庁のリーフレットも、ころぶ事故を防ぐポイントとして、立ち上がるときは近くのものにつかまる、着替えるときは腰をかける、テープなどを貼り段差に気付きやすくする、を挙げています。

スリッパを見直すなら(編集部の見方)

ここからは編集部の見方です。出典が挙げているのは「滑りにくいスリッパ」までで、どんなスリッパがよいかの細かな基準は書かれていません。出典は「スリッパをやめる」とは書いていないので、今のスリッパをやめさせる必要があるとは言えません。事例の「スリッパが脱げ、靴下が滑って」という言葉と、「すり足」「足を引っかける」という説明から、次の点を手がかりにするといいと思います。

  • 脱げにくいか:足を入れて歩いたときにパカパカしないか。冬の厚手の靴下と夏の薄い靴下ではサイズの感じが変わるので、ふだんの靴下で確かめる。かかとのあるタイプなら、足から離れにくいと考えられます
  • 底が滑りにくいか:通販なら商品説明の「滑り止め」の表記を見て、届いたら家の床で滑らないかを確かめる
  • つま先が引っかからないか:敷居やじゅうたんの端に、スリッパの先が当たらないか。底が厚すぎると当たりやすいと考えられます
  • 靴下も一緒に見る:事例では靴下で滑っています。ただ、滑り止めのついた靴下は、すり足の人だと床に引っかかることも考えられるので、本人の歩き方を見て決める
  • 親に合わせる:「スリッパをやめて」と言うより、本人が履きやすい形を一緒に選ぶ。離れて暮らしているなら、電話で「最近つまずいたり転んだりしなかった?」「スリッパは脱げない?」と聞いてみる

親に贈る靴や、これから自分が履く靴の考え方は親に贈る靴の記事にまとめています。足の痛みや変形がある場合は、室内履きも含めて、医師やシューフィッターに相談するのがいいと思います。相談先はシューフィッターの記事に書きました。

今のスリッパを替えるなら、底に滑り止めのあるものから探してみてください。

脱げにくさを優先するなら、かかとまで包むタイプの室内履きも候補になると思います。

まとめ:スリッパは、転倒対策のひとつとして見直す

国民生活センターの報告書(医療機関ネットワークに寄せられた65歳以上の家庭内事故923件の分析)には、自宅内でスリッパが脱げ、靴下が滑って転倒し骨折した事例があり、75歳以上の転倒に関わる商品等の上位に「スリッパ」6件が挙がっています。スリッパが脱げてすべったなど、ちょっとしたことが転倒・転落の原因になっていると考えられる、とされています。予防には、住環境の改善と身体機能の維持・向上の両方が重要で、環境の工夫の1つとして滑りにくいスリッパを選ぶことが挙げられています。東京消防庁によると、令和5年中の管内では、高齢者の「ころぶ事故」の半数が住宅等で発生し、約4割が入院を要する中等症以上でした。転倒を経験した高齢者は再転倒のリスクが極めて高い、とも報告書の専門家は書いています。

ここからは編集部の見方です。まず、最近転んだりつまずいたりしたことがないかを親に聞いてみてください。転んだことがあるなら、かかりつけ医に相談し、地域包括支援センターの転倒予防教室なども調べてみてください。そのうえで、今度実家に帰ったら、スリッパが脱げないか、底が滑らないかを見て、段差やコード、手すりも一緒に確かめておくと安心です。

出典

※各資料は2026年10月31日に確認しました。

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この記事を書いた人

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