朝、ベッドから降りた最初の一歩で、かかとの裏がずきっと痛む。少し歩くと楽になるのに、座って休んだあとにまた痛む。
医療情報サイトのMSDマニュアル家庭版は、足底腱膜炎について「かかとの痛みの最もよくある原因の1つ」と書いています。そしてその対処には、靴と、靴の中に入れるものが出てきます。
この記事では、MSDマニュアル家庭版、日本臨床整形外科学会、日本整形外科学会の解説から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。靴の記事ですが、痛みの原因を確かめるのは整形外科です。最後に出典をまとめました。
足底腱膜は、足のアーチを保つ組織
日本臨床整形外科学会はこう説明しています。「足底腱膜は踵骨の内側から前足部におよぶ厚い靭帯で、足底のアーチを保つのに重要な役割を担っています。この足底腱膜に何らかの原因で炎症が起きた時、足底部の痛みが生じて、歩行しにくくなったりします」。
MSDマニュアルは、足底腱膜を「かかとの骨の下側と足の指の付け根をつないでおり、歩いたり走ったりする際に、ばねを与えるのに欠かせないもの」とし、「足底腱膜に過剰な緊張がかかると、しばしば小さな裂傷が生じます」と書いています。
朝の一歩目と、休んだあとに痛む
症状について、MSDマニュアルはこう書いています。「痛みが最もよくみられるのは足底腱膜がかかとの骨の下側に付着する部分です。患者は、しばしば激しい痛みを感じます(特に朝起きて最初に足に体重をかけたとき)。痛みは、5~10分以内に一時的に解消しますが、その日のうちにまた痛くなることがあります」。
さらに「かかとを蹴り出すとき(歩いたり走ったりするときなど)や長時間の安静の後に、痛みが強くなることがよくあります」。日本臨床整形外科学会は、症状を歩行時の、足底腱膜がかかとの骨に付着する部分(踵骨足底の中央よりやや内側)の刺すような疼痛と、その部分の圧痛と説明しています。
かかとの骨のとげ(踵骨棘)についても触れておきます。MSDマニュアルは「足底腱膜炎の人で踵骨棘がみられないことも多く、また踵骨棘の人の大半では痛みがない」とし、日本臨床整形外科学会もレントゲンで骨棘が見られることがあっても「症状とは無関係と言われています」と書いています。
ここからは編集部の見方です。「朝の一歩目」は分かりやすい特徴ですが、それだけで自分で足底腱膜炎と決めないでください。MSDマニュアルは診断を医師による足の診察と、ときにX線検査としていますし、関節リウマチやその他の関節炎が足底腱膜炎を引き起こしたり悪化させたりすることがある、とも書いています。かかとの痛みに気づいたら、一度整形外科で診てもらうのが先だと考えています。朝の痛みが数分で治まるからといって、受診しなくていい理由にはなりません。
また、出典には書かれていませんが、編集部の目安として、腫れや熱っぽさがある、しびれがある、ケガのあとから痛む、じっとしていても・夜も痛む、体重をかけられない、ほかの関節も痛むといったときは、早めの受診をおすすめします。
どんな人に起こりやすいか:靴が2回出てくる
MSDマニュアルは、起こりやすい人をこう挙げています。
- 体を動かさない生活習慣の人
- かかとの高い靴を履く人
- 足のアーチが異常に高い、もしくは低い人
- ふくらはぎの筋肉や、アキレス腱が硬い人
そして「普段座っていることの多い人は、通常、突然活動レベルを上げたり、サンダルなど支えの少ない靴を履いたりしたときに発症します」。ランナーやダンサー、硬い地面や床の上で長時間立っていたり、歩いたりする職業の人にも多いとされています。
日本整形外科学会は、ランニングやジャンプの多いスポーツで起きる足の慢性障害(足底腱膜炎のほか、種子骨障害なども含む)の背景として、使い過ぎのほかに「足の柔軟性低下や筋力不足、扁平足などの障害の発生しやすい足の形、不適切な靴、悪い路面での練習など」を挙げています。
ここからは編集部の見方です。靴は、「かかとの高い靴を履く人」と、普段座っていることの多い人が「サンダルなど支えの少ない靴」を履いたときという形で、起こりやすい条件に出てきます。立ち仕事の人には後者の条件はそのまま当てはまりませんが、ふだんの靴を見直すきっかけにはなると思います。
医療情報が挙げている対処:靴の中に入れるもの
MSDマニュアルは治療として、まず日常でできることをこう書いています。「患者は、足底腱膜への負荷と痛みを軽減するために、歩幅を小刻みにし、裸足で歩かないようにするという手段をとることができます。ジョギングなどの足に衝撃が加わる活動は避けるべきです。減量が必要な場合もあります」。
そして「足底腱膜炎に対する最も効果的な治療法としては、靴の中に入れるヒールクッションやアーチサポートの使用や、アキレス腱のストレッチ運動、睡眠中にアキレス腱と足底腱膜を伸ばすための装具の使用などがあります。装具(靴の中に入れる器具)を入れ、ぴったりと調節した支えのある靴を履くと、衝撃や上昇から守り、かかとを支えるのに役立ちます」。
日本臨床整形外科学会も、治療として「足底腱膜への体重負荷を軽減する目的で、足底板などの処方も行われます」と書いています。日本整形外科学会は、足底腱膜炎を含むスポーツによる足の慢性障害の予防の項目に「足にフィットしたシューズの選択」「足底装具の使用」を並べています。
ここからは編集部の見方です。3つの出典は対象も性格も違います。日本臨床整形外科学会は治療としての足底板の処方、日本整形外科学会はスポーツ障害全般の予防・対処としての足底装具、MSDマニュアルは治療の選択肢としてのヒールクッションやアーチサポートです。医療機関で処方される足底板(足底装具)と、市販のヒールクッションやアーチサポートは同じものではありません。まず受診して、処方の足底板が必要かどうかを相談する。そのうえで、日常の靴に何を入れるかを考える、という順番がいいと思います。
かかとを受け止めるクッションと、
土踏まずを支える中敷きです。
どちらも、入れると靴の中が狭くなります。入れてきつくなるなら、靴のほうを見直す必要があります。中敷きで直せること・直せないことは中敷きを入れれば合うようになる、は半分だけ本当ですに書きました。市販の中敷きは治療の代わりにはなりません。支えるための道具として使ってください。選ぶときも、「治る」「医療用」をうたう売り文句ではなく、かかとのクッションか、土踏まずの支えかという形で選ぶのがいいと思います。
支えのある靴と、家の中でも裸足で歩かない
MSDマニュアルが挙げる「裸足で歩かないようにする」は、外の靴だけの話ではないと編集部は読んでいます。朝の一歩目は、たいてい家の中の床の上だからです。
ここからは編集部の見方です。家の中で履くなら、かかとが包まれて、底にある程度の厚みがあるものがいいと思います。出典は「サンダルなど支えの少ない靴」を座りがちな人の発症のきっかけとして挙げていますが、支えの少ない履物を避ける考え方は室内でも同じだと考えて、つっかけ型より、かかとのある形を選んでください。ベッドの横に置いておけば、最初の一歩から裸足になりません。
外で履く靴は、かかとがしっかりしていて、足に合うものを。立ち仕事で長時間床の上にいる人の靴の選び方は立ち仕事の疲れの記事に、幅の合わせ方はJISのサイズ表の記事にまとめました。
立ち仕事の人に、編集部からいくつか。MSDマニュアルは長時間の安静の後にも痛みが強くなりやすいとしているので、休憩明けの一歩目も気をつけたいところです。同じ資料が挙げる歩幅を小刻みにする、足に衝撃が加わる活動を避けるは、通勤の早歩きや階段の駆け上がりを控える、という形で取り入れられると思います。中敷きを入れるなら、まずいちばん長く立っている靴からです。
ストレッチと、医療機関での治療
MSDマニュアルは「アキレス腱や足のストレッチはしばしば治癒を早めます」とし、その他の方法としてテーピングやアーチをサポートする包帯、アイスマッサージ、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、ときにはステロイドのかかとへの注射を挙げています。ステロイドの注射はかかとの脂肪体を薄くすることで病状を悪化させる場合があるため、通常は数回までとされています。効果が得られないときは、ギプスや理学療法、さらに症状が持続する場合は手術が必要になる場合もある、とも書かれています。
日本整形外科学会は、スポーツによる足の慢性障害の予防として「足部および下腿筋のストレッチング」「スポーツ後のアイシングの励行」を挙げ、スポーツで発症したら「練習量を減らすか、一定期間の休養が必要」としています。
ここからは編集部の見方です。受診したときは、「朝の一歩目に痛む」「5〜10分で治まる」「休憩のあとにまた痛む」「立ち仕事」といったことを伝え、ストレッチのやり方と、中敷き・足底板をどうするかを聞いてくるといいと思います。靴と中敷きは、その治療を日常の側から支える役割だと考えています。
まとめ:朝の一歩目の前に、受診と靴の中
整理します。MSDマニュアルによれば、足底腱膜炎はかかとの痛みの最もよくある原因の1つで、痛みは特に朝起きて最初に足に体重をかけたときに強く、5〜10分以内に一時的に解消しても、その日のうちにまた痛くなることがあります。起こりやすい条件にはかかとの高い靴や、普段座っていることの多い人がサンダルなど支えの少ない靴を履いたときなどが挙がっています。
対処として、MSDマニュアルは歩幅を小刻みにし、裸足で歩かないことを挙げ、最も効果的な治療法としては、靴の中に入れるヒールクッションやアーチサポートの使用、アキレス腱のストレッチ運動、睡眠中の装具などがあるとしています。日本臨床整形外科学会は足底板などの処方、日本整形外科学会は足底腱膜炎を含むスポーツによる足の慢性障害の予防として足にフィットしたシューズの選択と足底装具の使用を挙げています。
まず1つだけやるなら、整形外科で一度診てもらうことです。そのうえで日常の側では、ベッドの横にかかとのある室内履きを置いて、朝の一歩目を裸足にしない工夫ができます。
出典
※各資料は2026年10月11日に確認しました。この記事は医療上の判断に代わるものではありません。














コメント