雨の日に革靴で行きたい。ゴアテックスとダイナイトソール、守り方が違うビジネスシューズ4足

朝の天気予報が雨。スーツは着るのに、足元だけスニーカーになる。あの妥協が地味に嫌だ、という人は多いと思います。

先に、ひとつ誤解を解いておきます。革靴が雨でダメになる原因は、濡れたこと自体ではありません。問題は乾かし方です。革は水を吸うと、乾く過程で内部の油分が水と一緒に外へ移動します。これが抜けると革は硬くなり、ひび割れる。だから帰宅後は、直射日光もドライヤーも当てず、新聞紙を詰めて風通しのいい場所で陰干しします。そして完全に乾いてから、クリームで油分を戻す。ここまでやって一往復です。乾かして終わりにすると、抜けたぶんが戻りません。

もうひとつ。乾いたあとに白い粉のような跡が浮くことがあります。あれは塩です。足の汗に含まれる塩分と、革をなめす工程で使われた成分が、水と一緒に表面へ出てきたもの。カビと違ってこすっても広がらないので、固く絞った布で拭けば溶けて落ちます。放置すると革が硬くなるので、見つけたら早めに。

そのうえで、雨に強い革靴の守り方は大きく2つです。上から水を止めるか、下から足元を守るか。今回はその両方から4足を紹介します。

目次

とにかく中を濡らしたくない人へ。上から膜で止める:マドラス madras Walk

マドラスは1921年、名古屋で「亜細亜製靴」として創業した靴メーカーです。社名が変わったのは1983年で、きっかけは1965年に技術提携したイタリアのバレンチノ・マドラス社でした。そのイタリアの社名は、良質な革の産地であるインドのマドラス地方への敬意から付いたものです。日本の会社が、イタリア経由で、インドの地名を名乗っている。革をたどるとそうなります。

madras Walkはゴアテックスを搭載したラインです。防水の膜が靴の内側に入っているので、水たまりを踏んでも中に来ません。しかも水蒸気は外へ抜ける素材なので、ゴム長靴のような蒸れ方はしない。幅広の4E設計もあり、日本人の足には入りやすいはずです。

現実的な注意を2つ。膜が守るのは覆われている範囲だけなので、履き口から入る水は止められません。そして靴の中に一枚多く入るぶん、普通の革靴に比べると足入れの感触が少し厚い。ここは好みが分かれるところです。

雨の日に滑るのが怖い人へ。下から守る英国の靴底:ロイドフットウェア

雨の日にいちばん危ないのは、水より駅の床です。濡れたタイル、地下街の磨かれた石。革底の靴はここで本当に滑ります。革が水を吸うから、というより、靴底と床のあいだに薄い水の膜ができて摩擦が落ちるからです。おまけに濡れた革底は摩耗が一気に進むので、雨の日に履くほど寿命が縮みます。

そこで効くのがラバーソール、なかでもダイナイトソールです。英国のハルボロラバー社が作る靴底で、丸い突起が並んだ独特の顔をしています。突起のあいだに水が逃げるので、濡れた床でも接地が残る。それでいて厚みが控えめなので、革靴の見た目を壊しません。

ロイドフットウェアは、この靴底を使ったモデルを長く扱ってきた店です。始まりは創業者が代官山で英国のアンティーク家具や衣類を輸入していたところから。やがて英国ノーザンプトンの工場へ直接出向き、日本人の足に合わせた木型を持ち込んで別注するようになりました。銀座に店を構えたのが1991年です。英国製でありながら日本人向けに起こした木型、という珍しい成り立ちなので、英国靴が細くて合わなかった人はここから試す価値があります。

人と被らない一足が欲しい人へ。1919年に軍靴を作っていた工場:ジャランスリウァヤ

JALAN SRIWIJAYA(ジャランスリウァヤ)
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同じダイナイトソールでも、まったく違う経路から来た一足があります。ジャランスリウァヤです。インドネシアの靴メーカーで、工場の歴史は1919年、まだオランダ領だった時代にさかのぼります。当時作っていたのは軍用のブーツでした。のちの世代が英国ノーザンプトンへ渡って靴づくりを学び、その技術を持ち帰る。ブランドとして立ち上がったのは2003年です。

名前の由来も面白い。「ジャラン」はインドネシア語で通り、「スリウァヤ」は工場が面している通りの名前です。つまり住所がそのままブランド名になっています。

雨の日用に選ぶなら、ダイナイトソール仕様と明記されたモデルを選んでください。同じブランドでもレザーソールのモデルが並んでいるので、ここは型番と仕様の確認が要ります。履き込むほど中の詰め物が足の形に沈んでいくタイプの作りなので、雨の日専用にしまっておくのはもったいない靴です。英国靴やイタリア靴を持っている人でも、これを履いている人はまだ多くありません。

一生ものを一足だけ持ちたい人へ。日本最古のメーカーの上がり靴:大塚製靴 M5-314

大塚製靴の話は、佐倉藩士だった大塚隊之丞が横浜の弁天通で靴屋を営んだところから始まります。その子の岩次郎が1872年、明治5年の2月4日に、東京・新橋の露月町で大塚商店を創業しました。現存する日本最古の靴メーカーとされています。1882年には明治天皇の御靴製作を承りました。日本人が革靴を履き始めた時期と、この会社の歴史はほぼ重なっています。

M5-314は最上級ラインである「OTSUKA M-5」の一足で、グッドイヤーウェルト製法にダイナイトソールを合わせてあります。ソールを張り替えながら十年単位で履ける作りで、雨の日にも足元が守られる。長く付き合う前提の靴です。

ただし2つ、正直に書いておきます。ひとつはデザインが外羽根のフルブローグで、穴飾りがしっかり入った華やかな顔をしていること。かっちりした場面より、ジャケット寄りの装いに合います。もうひとつは、これが最上級ラインだということ。4足のなかでは明らかに上の位置づけなので、「雨の日用にとりあえず一足」という買い方の靴ではありません。

まとめ:上から止めるか、下から守るか

選び方の目安はこうです。とにかく中を濡らしたくないならマドラス madras Walk。濡れた床で滑るのが怖いならロイドフットウェア。人と被らない一足が欲しいならジャランスリウァヤ。長く付き合う一足に絞るなら大塚製靴 M5-314。

最初の一足には、マドラス madras Walkをおすすめします。雨の日の不満で最も具体的なのは「靴下が濡れる」ことで、それを確実に解決するのは膜だからです。4Eがあるので幅で困ってきた人も入りやすい。まず一足これがあると、朝の天気予報を見て憂鬱になる回数が減ります。

最後に、靴より先に効くことを2つ。防水スプレーは半年に一度では足りません。フッ素系は雨に数回当たれば効果が落ちるので、雨の日に履いたらそのつどかけ直すくらいでちょうどいい。そして、雨の日に履いた靴を翌日も続けて履かないこと。革の中の水分が抜けるには一日では足りません。2足を交互に回すだけで、同じ靴が倍以上もちます。雨対策でいちばん確実なのは、実は靴を増やすことなんです。

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日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

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