高尾山に、硬くて重い登山靴は要らないかもしれない。低山ハイキングの最初の1足に選べる4足

秋になったら山に行きたい。そう思って登山用品店に入ったものの、勧められたのは硬くて重い靴で、値段を見て何も買わずに帰ってきた。そんな経験はないでしょうか。

あの硬さと重さには理由があります。ただしそれは、重い荷物を背負って何日か縦走し、岩や雪の上を歩くための理由です。これから行こうとしているのが高尾山や近所の低山で、日帰りで、荷物もリュックひとつなら、その前提はほとんど当てはまりません。「登山靴」と呼ばれるものには幅があって、いちばん硬い側は最初の1足には過剰なんです。

ただし、軽くていいという話と、山を軽く見ていいという話は別です。高尾山は標高599メートルですが、遭難者数では毎年のように富士山や穂高連峰を上回ります。2024年は131人、2023年は133人でした。多いのは下山中の転倒と道迷い、そして脱水です。低山で靴が効くのは登りではなく、疲れた足で降りるときなんです。

そこを踏まえて、最初の1足に選べる4足を紹介します。4足とも「軽い理由」が違うので、そこを見ながら選んでください。

目次

下りでつま先が痛くなる人へ。台所のトースターオーブンから始まったブランド:Altra ローンピーク

Altra
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Altra(アルトラ)は2009年、アメリカ・ユタ州で生まれました。高校からの友人だったゴールデン・ハーパーとブライアン・ベックステッドの2人が創業者です。ハーパーは実家がランニング用品店で、市販のシューズを切り開いてかかとの詰め物を削り、台所のトースターオーブンで温めてソールを貼り直していました。かかとが高いことが故障の原因ではないか、と考えたからです。この自作靴につけた呼び名が「ゼロドロップ」。Altraの商標ですが、いまでは他社の靴を語るときにも使われる言葉になりました。2011年に出したのがローンピークです。

低山の入門として効くのは、高低差ゼロよりも、つま先の広さのほうです。下りで足が前に滑ったとき、つま先が細い靴だと親指と小指が側面に押しつけられて、爪が黒くなる。あれが「山は痛い」という記憶をつくります。指が広がる余地があるだけで、下りの印象がかなり変わります。

注意が2つ。かかとの高い靴に慣れた足はふくらはぎが張りやすいので、平地で何度か履いてから山に持っていくこと。そしてソールです。旧来のモデルは濡れた岩での評価が割れていましたが、現行の上位モデルはVibram社のMegagripに替わって安心感が上がっています。低山は濡れた木の根を踏む場面が多いので、ここは新しいほうを選ぶ価値があります。

幅広なのにかかとが浮く人へ。指は広く、後ろは締める木型:Topo Athletic テラベンチャー

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Topo Athletic(トポアスレチック)は、Vibram USAの社長兼CEOだったトニー・ポストが独立して立ち上げ、2013年にブランドを始動させました。足を締めつけない靴づくりという発想を、そのまま持ってきた人です。

面白いのは木型です。つま先は広い。でも土踏まずのあたりとかかとは、しっかり締まる。幅広の靴を買うと全体がぶかぶかになりがちなところを、前だけ広げて後ろは締める設計にしてあります。かかとが動かないので、下りで足が前に流れにくい。「幅広を試したけど、かかとが浮くから結局ダメだった」という人には、ここが効きます。

テラベンチャーはトレイルランニング用で、前足部に石の突き上げを防ぐプレートが入っています。低山のハイキングには余裕がある性能で、見た目もスニーカーに近いので山以外にも回せます。落ち葉の濡れた道を歩く予定があるなら、防水版が用意されているモデルもあるので表記を確認してください。

濡れた岩や落ち葉で滑るのが怖い人へ。英国の山岳レースが育てたグリップ:inov-8 ロックライト

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低山でいちばん怖いのは、高さより滑りです。雨上がりの木の根、濡れた岩、積もった落ち葉。ここに強いのがinov-8(イノヴエイト)です。2003年、イギリス湖水地方でウェイン・エディが創業しました。フェルランニングという、道なき斜面を駆け上がって駆け下りる英国のレース文化から生まれたブランドです。

ロックライトのソールには、グラフェンという素材がゴムに練り込まれています。炭素が一原子の厚さで並んだ膜で、マンチェスター大学との共同開発でした。スポーツシューズのソールに持ち込んだのはinov-8が最初です。同社の公表では、一般的なソール材と比べて強度・弾性・耐摩耗性がそれぞれ5割ほど向上しています。すり減っても硬くなりにくいので、濡れた面をつかむ性格が長持ちするということです。

ひとつ補足を。ロックライトはinov-8のなかでは万能寄りのラインで、泥に全振りしたモデルは別にあります。低山のハイキングにはロックライトのバランスがちょうどいい。ただしローカットのほかに足首まであるモデルやゴアテックス版も同じ名前で並ぶので、購入前に形と防水の有無を確認してください。突起が深いぶん、駅から登山口までの舗装路が長いとゴリゴリした感触があります。

足首は守っておきたい人へ。日本の山で選ばれ続ける軽登山靴:モンベル タイオガブーツ

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足首をひねった経験がある人や、岩がごろごろした道を歩く予定がある人には、くるぶしまで覆う形のほうが安心できます。その選択肢がモンベルのタイオガブーツです。ミドルカットで、雪の時期を除けば全天候に対応。ゴアテックスが入っているので、朝露に濡れた草をかき分けても中まで来ません。

履くと、前の3足とは体感がはっきり違います。ソールに硬さがあるので石を踏んでも足裏が形をなぞらず、疲れて感覚が鈍ってきた終盤でも着地が安定する。足首まわりは硬く固定するのではなく、傾いたときに支えが入る程度で、歩く邪魔にはなりません。

幅の広いワイドモデルがあるのも大きい。海外ブランドのトレイルシューズが軒並み細くて諦めた人は、まずここからです。国内に直営店が多く、試着して選べる。そして4足のなかでは価格でもいちばん入りやすい部類です。

まとめ:本命がいちばん重い、という矛盾について

選び方の目安はこうです。下りでつま先が痛くなった経験があるならAltra ローンピーク。幅広だけどかかとが浮くのが嫌ならTopo Athletic テラベンチャー。滑りやすい道が心配ならinov-8 ロックライト。足首を守りたい、幅も広めがいいならモンベル タイオガブーツ。

そのうえで、最初の1足にはモンベル タイオガブーツをおすすめします。ただし正直に書いておくと、これは4足でいちばん重い靴です。ローカットの3足が片足300グラム前後なのに対して、タイオガブーツは片足590グラム前後。ほぼ倍あります。「重い靴は要らない」と書いておいて本命がいちばん重いのは矛盾に見えると思います。

それでも挙げるのは、入門で効くのが軽さより「失敗しにくさ」だからです。試着できて、幅が選べて、防水が入っていて、滑りやすい道でも足首が守られる。最初の数回で嫌な思いをする要素がいちばん少ない。軽さの恩恵は、山に通って足ができてからのほうが大きく感じられます。逆に、すでに走る習慣があって足首に不安がないなら、最初からローカットの3足で問題ありません。

最後に、靴を買う前後で効くことを2つだけ。サイズは、山で履く厚手の靴下を持っていって試着してください。下りでつま先が当たるかどうかは、この一手間でほぼ決まります。もうひとつは下りの歩き方です。歩幅を小さくして、かかとから落とさず足裏全体で置く。これだけで爪と膝への衝撃が変わります。どんなにいい靴を買っても、下りを走るように降りれば足は痛みます。逆に言えば、歩き方が丁寧なら、低山はずいぶん楽しく歩けます。

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日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

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