イタリアの靴産地はフィレンツェでもミラノでもない。マルケ州から来た4足の語れる誕生背景【メンズ秋冬2026年】

「イタリアの靴といえば」と聞かれて、グッチやトッズの名前が出てくる人は多い。でもそのイタリアを代表する靴が実際にどこで作られているかとなると、フィレンツェでもミラノでもないことが多い。答えはイタリア中部のマルケ州——アドリア海に面した海岸線と丘陵地帯の間にある小さな街が連なる地域です。

Civitanova Marche(チビタノーバ・マルケ)、Montegranaro(モンテグラナーロ)、Fermo(フェルモ)——聞き慣れない街の名前が並ぶが、この地域は世界有数の靴産地集積地で、工房から工房へと歩いて回れる距離の中に職人技術が凝縮されています。TOD’Sの本社もここにある。「イタリアの靴産地はマルケ州の小さな街々で、グッチもトッズもそこから来てる」という話を知ってから靴を選ぶと、「その靴どこの?」への答えがひとつ深くなります。

今回はそのマルケ州と縁の深い4ブランドを紹介します。靴の背景まで語れるブーツを選ぶなら、産地の話が一番語れる理由になります。

目次

英国靴のシルエットをマルケのスエードで解釈した——独自路線の一足:Doucal’s サイドゴアブーツ

1970年代初頭にマルケ州で工房を開いたDoucal’s(デュカルス)のブーツを手に取ると、最初に「これ、イタリアのブーツなのに英国靴っぽい」と感じる人が多い。実際そこが面白くて、Doucal’sは裁断から仕上げまで全工程を自社で行いながら、英国靴の端正なシルエットをイタリアのしなやかなスエードで解釈するという独自の路線をとっています。英国的なアウトライン×イタリアのスエードの質感——どちらか一方では出せない組み合わせが、マルケの工房から来ている。

「どこのブーツ?」に答えるとき「英国靴のシルエットをイタリアのスエードで作ったマルケ産の靴」という一文は、相手が靴好きでも靴をあまり知らない人でも同じ温度感で伝わる——どちらの言葉にも聞き慣れない固有名詞が入っていないから。サイドゴアブーツは足入れのたびに「スエードが内側から包んでいるような」感触があり、革の馴染みが出るほど足の甲への添い方が増していく。

乗馬競技者の半数以上が使っていた職人のブーツが街に来た:Alberto Fasciani CHEOPE628

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Alberto Fellini
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Alberto Fasciani(アルベルト・ファッシャーニ)はマルケ州フェルモで1950年頃に創業した乗馬ブーツ専門の職人ブランドです。かつてイタリアの乗馬競技者の過半数がファッシャーニのブーツを使っていたという話があります——「脚をしっかり包むが窮屈でない」という乗馬ブーツの根幹となる機能を、フェルモの職人が突き詰めてきた結果です。そのブランドがファッションブーツを作ったのがCHEOPE628シリーズで、乗馬ブーツで培った脚の包み方の技術が街のブーツに転用されています。

「アルベルト・ファッシャーニってマルケ州フェルモの乗馬ブーツ職人で、イタリアの騎手の半数以上が使ってた実力がある。その乗馬ブーツの技術をそのまま街ブーツに落とし込んだのがこれ」——この背景を持った靴は他にあまりない。足首から膝下にかけての収まり方が、普通のブーツとは少し違う角度で安定しているのが履いてみるとわかります。乗馬ブーツの設計から来た本格感を街で使いたい人に向いています。

同じ型でも世界に一足だけ——職人が手で染め上げる色:Fabi チェルシーブーツ

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1965年にFabi兄弟がマルケ州で始めたブランドには、他にはない製造工程があります——熟練のカラーリスト職人が一足ずつ手作業で色を入れる「ハンドペインティング」です。同じ型、同じカラーのモデルでも、職人の手の動きによって一足ごとに微妙に色味が変わる。「全く同じ靴は世界に存在しない」という状況が、量産では作れない。「ファビってマルケ州で1965年に始まったブランドで、熟練の職人が手で色を入れてる。同じ型番でも一足ごとに色が微妙に違う」という話を知ったとき、自分の手元にある靴が突然「製品」ではなく「一足」に変わる感覚がある。量産の靴には起きない感覚です。

ボロネーゼ製法(靴底から手縫い)で仕上げられたチェルシーブーツは、足を入れた瞬間から「靴の内側が足の形に沿ってくる」ような柔らかさがある。固い新品特有のあの「なじむまでが大変」という感触が少ない。世界に一足だけという話が欲しい人、カラーリストの手仕事を選びたい人に向いています。

補強材を入れない設計——最初から素足に吸いつくイタリアのスエード:Moma スエードチャッカブーツ

Moma(モマ)のスエードチャッカブーツを手に取ると、普通のブーツより明らかに柔軟に折れ曲がることに気づきます。内部補強(スティフナー)を入れない設計で、靴全体が足の動きと一緒にしなやかに動く——これは「補強を省いた」のではなく、「補強なしで成立するように作った」設計の証拠です。スエードが直接足に触れる感触が最初から柔らかく、革靴特有の「なじむまでの硬さ」がほとんどない。スニーカーを長く履いてきた足に、革靴の入口として選びやすい一足です。

ヴィンテージ感のある仕上げが施されていて、新品なのに「使い込んだ靴みたいな佇まい」がある。コーデに自然になじんで、履いている側は「出しゃばらない靴」として使えながら、靴を見た人には「その靴、どこの?」が起きる——そういうバランスを持った一足です。革靴の履き始めの硬さが苦手な人、スニーカー感覚で合わせたい人に向いています。

まとめ:マルケ州の産地背景が「その靴どこの?」を深くする

4足を並べると、全部「マルケ州」という一つの産地から来た靴でありながら、英国靴解釈(Doucal’s)・乗馬競技転用(Alberto Fasciani)・ハンドペインティング(Fabi)・補強なし柔軟設計(Moma)と全員方向が違います。産地が同じでも靴の語れる背景はそれぞれ違う——その多様性がマルケ州という産地集積地の深さを表しています。

「イタリアの靴産地はマルケ州の小さな街々で、自分の靴もそこから来てる」と言えるようになると、靴の話の入口が全然変わります。一足目を選ぶなら、Alberto Fascianiから入るのが一番入りやすいと思っています。理由は単純で、「乗馬競技者の半数以上が使っていた職人が街ブーツを作った」という話は靴の知識がなくても伝わるし、知識がある人には「なぜ街ブーツなのか」という続きが生まれる——どちら方向にも話が展開できる背景を持っているから。

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日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

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