靴職人の3兄弟が、別々に3つのブランドを作った。LOWA・Hanwag・Meindl・SALEWA——バイエルン発の登山靴4足【2026年秋冬】

登山靴を選ぶとき「ドイツ製」という言葉が出てきます。それがなぜ信頼されているのか、理由まで説明されることはあまりない。

たどっていくと、ミュンヘン北部のジェッツェンドルフという小さな村に行き着きます。ヨハン・ワーグナーという靴職人がいて、3人の息子に自分の技術を教えました。そして3兄弟は、それぞれ別のブランドを立ち上げます。長男ローレンツがLOWA、次男ハンスがHanwag、三男アドルフがHochland。同じ父から同じ技術を習った3人が、別々の看板で山の靴を作り始めたわけです。

このうちHochlandは現在の日本ではほとんど手に入りません。ただ、残る2ブランドは今も現役です。そこにバイエルンの他の系譜を2つ加えて、実際に買える4足として紹介します。

目次

1923年、長男ローレンツが自分の名前を縮めて作ったブランド:LOWA Renegade GTX

LOWA(ローバ)という名前は、創業者ローレンツ・ワーグナー(LOrenz WAgner)を縮めたものです。1923年、バイエルン州ジェッツェンドルフで工房を構えました。当時は靴だけでは食べていけず、兄弟で楽団を組んで演奏し、収入を補いながら靴を作っていた時期があります。1930年代に山岳部隊向けの靴を受注したことが、本格的な登山靴メーカーとしての土台になりました。

Renegade GTXはLOWAの最定番で、世界で最も売れているハイキングブーツのひとつとされています。足を入れるとかかとがしっかり止まり、それでいて足首まわりはしなやかで、履き慣らしの期間がほとんど要りません。日帰りから小屋泊まで、これ1足でだいたい足ります。逆に言えば、山で一番よく見かける靴でもあります。無難で確実な選択、という位置づけです。

次男ハンスが同じ作り方で名付けた、兄弟ブランド:Hanwag Tatra II GTX

Hanwag
¥98,771 (2026/08/08 09:23時点 | Amazon調べ)

Hanwag(ハンワグ)も命名の作り方はまったく同じです。ハンス・ワーグナー(HANs WAGner)。兄ローレンツと同じ父に靴作りを習い、同じバイエルンで独立しました。つまりLOWAとHanwagは、技術の系譜としては兄弟にあたります。片方を知っている人でも、この関係まで知っている人はほとんどいません。

Tatra II GTXは足幅にゆとりのある木型が特徴で、欧州の登山靴が合いにくいと言われる日本人の足でも、あたりが柔らかく感じられます。ソールを張り替えられる構造なので、履きつぶして終わりではなく長く付き合える。「LOWAと同じ一族から出たブランドで、こっちは弟の方なんです」。山で靴の話になったとき、これが言える人はまずいません。

ワーグナー家より240年早い、1683年創業のバイエルン靴工房:Meindl Bhutan

Meindl
¥88,774 (2026/08/08 09:23時点 | Amazon調べ)

Meindl(マインドル)は1683年、同じバイエルン州のキルヒアンシェーリングで創業した靴工房です。ワーグナー兄弟がLOWAを始める240年前から、この地域で靴を作り続けている。バイエルンが登山靴の産地になったのは一つのブランドの功績ではなく、こうした工房が何世代も積み重なった結果だということが、この創業年から見えてきます。

Bhutanは厚いヌバックレザーの縦走向けブーツです。手に持つとずっしり重く、最初は「これで歩けるのか」と身構えます。ところが荷物を背負って数時間歩くと、その重さがそのままソールの安定として返ってくる。岩がごろごろした道でも足裏がねじれません。軽さを求める人には向きませんが、重い荷物を背負う日には頼りになる一足です。

1935年ミュンヘン。馬具の革屋から山道具メーカーになった会社:SALEWA Mountain Trainer

SALEWA(サレワ)は1935年ミュンヘン創業。もとは馬具用の革製品を作る会社で、社名は「SAttler LEder WAren(馬具・革製品)」の頭文字です。革を扱う技術を持ったまま山道具の世界へ移り、いまはハーネスやアイゼンと並べて自社の靴を作っています。ワーグナー兄弟の12年後、同じバイエルンから出発したブランドです。

Mountain Trainerはアプローチシューズと軽登山靴の中間にあたるモデルで、岩場でのグリップを重視した設計です。つま先まわりが硬く、岩に爪先を乗せたときに逃げません。他の3足が「歩くための靴」だとすれば、これは「登るための靴」寄り。沢や岩稜が絡む山を歩く人ほど、この違いが効いてきます。

まとめ:4足の使い分けと、最初の一足

同じバイエルンでも、4足は出発点も得意分野も違います。日帰りから小屋泊まで幅広く使うならLOWA、足幅にゆとりが欲しい人と長く履き続けたい人にはHanwag、重い荷物を背負う縦走にはMeindl、岩場が絡む山にはSALEWA。この順で「歩く」から「登る」へ性格が移っていくと考えると、選びやすくなります。

そのうえで最初の一足を選ぶなら、あえてHanwagを挙げます。性能で言えばLOWA Renegadeが最も無難で、実際いちばん売れている。ただ裏を返せば、山で最もよく見かける靴でもあります。足幅にゆとりがあって日本人の足に合いやすく、ソールを張り替えて長く使えて、しかも「LOWAと同じ一族の、弟の方」という話が付いてくる。人と同じ靴を履きたくないなら、兄より弟です。

秋は登山靴を新調するのにいい季節です。3兄弟が別々に看板を掲げた土地の靴を、足元に入れてみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次