久しぶりに出した革靴に、白い粉や黒ずみ。もしかしたらカビかもしれません。とりあえず手元の消毒用アルコールで拭こうとしていないでしょうか。
この記事では、シューケア用品を扱う2社の解説を並べて、作業の前に準備すること、カビの状態ごとの手順、落としきれない場合があることを整理します。
引用するのは、靴クリームのメーカーであるコロンブスの「カビが生えてしまった時のお手入れ方法」と、シューケア用品の輸入販売会社(株式会社ルボウ)が運営する情報サイト「ShoesLife」の記事です。どちらも自社で扱うケア用品を使う手順として書かれているので、この記事では製品名ではなく、どんな種類の用品で何をするかとして紹介します。そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。カビを生やさないしまい方はしまい方を間違えると、来年その靴は履けませんに書いたので、この記事は生えてしまったあとの話です。
今日、何も買わずにできること
コロンブスは手順の最初にこう書いています。「風通しの良い場所で乾燥させてからお手入れを行なってください。(カビを吸い込まないよう、マスク等を着用してから行いましょう。)」。
ここからは編集部の見方です。用品がそろうまでの間にできるのは、まず風通しのいい場所で乾かしておくことと、ほかの靴から離しておくことです。そして消毒用アルコールでは拭かない。理由は次の章で書きます。
消毒用アルコールで拭く前に
ShoesLifeの記事は冒頭でこう書いています。「そのまま放置したり、安易に市販の消毒用アルコールスプレーで拭き取るのは(靴にとって)危険です」。理由は「アルコールや酢の使用は、革に必要な水分や油分を急速に奪い、シミ・ひび割れ・激しい色落ちの原因になります」。
ここからは編集部の見方です。ケア用品を扱う会社がはっきり「危険」と書いている以上、革靴の表面を消毒用アルコールで拭くのは避けるのが無難だと考えています。なお、コロンブスの手順にはアルコールについての記述はありません。
作業の準備:マスク、手袋、換気、使い捨ての布
コロンブスは、乾燥させてからマスク等を着用し、「液が垂れても良いように、新聞紙等の上で」作業するよう書いています。拭いたあとの布は「ビニール袋に入れて破棄してください」。
ShoesLifeは「カビ菌を他の靴や手肌に広げないため、作業時は必ず手袋を着用し、換気の良い場所で行ってください」とし、「使用するクロスやブラシを使い回すと他の靴にカビ胞子が飛散して移ってしまうため、使い捨てのティッシュや布を使用するのが鉄則」、使い終わったティッシュは「他の靴に触れないようすぐに廃棄する」としています。
ここからは編集部の見方です。2社の注意を合わせると、準備はこうなります。
- 風通しのいい場所で乾かしてから始める(コロンブス)
- マスク(コロンブス)と手袋(ShoesLife)を着け、換気のいい場所で(ShoesLife)
- 新聞紙を敷く(コロンブス)
- 使い捨ての布やティッシュを使い(ShoesLife)、拭いた布はビニール袋に入れて捨てる(コロンブス)
ふだん使っている靴磨きのブラシやクロスは、カビの作業には使わない。ShoesLifeの言うとおり、他の靴に移すことになります。
場所については、編集部としては窓を開けた部屋がいいと思います。集合住宅のベランダは、干している洗濯物や隣の家に飛ぶことも考えて、使うなら洗濯物を取り込んでから。そして、ここは出典にない編集部からのお願いです。ぜんそくやアレルギーのある人は作業を代わってもらう、子どもやペットを近づけない、終わったら手を洗い、マスクと手袋も袋に入れて捨てる。作業中に咳が出る、目や肌に異常が出るときはすぐにやめて、症状が続くなら医療機関に相談してください。
表面を拭いても、根っこが残ることがある
ShoesLifeはカビが再発する理由をこう説明しています。「カビは表面に見えている部分だけでなく、革の繊維奥深くに「菌糸(根っこ)」を伸ばしていきます。表面の白い粉だけをサッと拭き取っても、革の内部に根っこが残っていると、温度や湿度の条件が揃った際に何度も繁殖を繰り返してしまいます」。
コロンブスも注意書きを添えています。「カビが深く入り込んでいる場合、カビ菌が十分に除去できないことがあります」。そして別の一文で「皮革表面に残ったシミ等は落ちない場合があります」。
ここからは編集部の見方です。どの手順でも、元どおりになるとは限らないということです。黒ずみが、カビなのか、汚れなのか、カビのあとに残ったシミなのかは、見た目だけでは区別しにくいこともあります。落ちないものを力いっぱい擦り続けないのが大事だと思います。
白っぽいか、黒いか:ShoesLifeの区分
ShoesLifeは、カビの状態と素材で対処を分けています。
- 白カビ(軽度)/ツヤ革:表面にうっすらと白く付着している状態
- 黒カビ・頑固なカビ(重度)/ツヤ革:菌糸が革の奥深くまで浸透している状態
- スエード・起毛革のカビ:毛足の中にカビ胞子が溜まっている状態
ここからは編集部の見方です。この区分では、黒いカビは最初から重度の側に置かれています。点の大きさや数で分けているわけではありません。だから白っぽく表面に付いているだけなら軽度の手順から、黒い点や黒ずみがあるなら出典の区分では重度の手順になります。重度の手順は水を使うので失敗のリスクもあり、自分でやるのが不安なら、修理店や靴のクリーニング店に相談するのもひとつの手です。
白カビ(軽度・ツヤ革)の手順
軽度について、2社はそれぞれ別の種類の用品を使う手順を書いています。
コロンブスの手順(カビ用のミスト)
- 布にスプレーして、よく湿らせる
- 皮革表面のカビを拭き取る。面積が広い場合は布の面を変えながら
- 拭き取った後、約10cm離して皮革表面(カビが生えていた部分)に直接スプレー
- 液を拭きとらずに風通しのよい場所で陰干し
- 乾かした後に素材に合ったクリームでお手入れ
ShoesLifeの手順(溶剤系のリムーバー):手袋をはめ、使い捨てティッシュに溶剤系のリムーバーを含ませて、カビが生えている部分を中心に優しく拭き取る。同社はこのリムーバーについて「溶剤成分でカビの原因や古いワックスを拭き取る」と説明しています。ティッシュはすぐ捨て、風通しの良い日陰でしっかりと完全乾燥させ、カビの再発がないことを確認したら通常の靴クリームで栄養補給。
ここからは編集部の見方です。どちらか一方を選ぶなら、手元にあるもの、手に入りやすいもので構わないと思います。共通しているのは拭いたら乾かす、すぐにクリームを塗らないこと。アルコールは危険と書いているShoesLifeが溶剤系のリムーバーを勧めている理由は、出典には説明がありません。使うときは製品の注意書きに従い、目立たないところで先に試すのが安全だと考えています。
カビ用の用品を選ぶときは、「革用」「靴用」と書いてあるかと、成分の表示を確かめてください。浴室用などの塩素系のカビ取り剤は、編集部の見方として、革用に作られたものではないので使わないほうがいいと考えています。
黒カビ(重度・ツヤ革)の手順
ShoesLifeは、黒カビ・頑固なカビには皮革用せっけん(サドルソープ)で「界面活性剤のモコモコ泡で浮かせ洗いし、根本から除去する」手順を挙げています。
- スポンジに水を含ませ、掛け湯のように靴全体を少しずつ湿らせる。「靴を丸ごと水に浸したり蛇口から直接水をかけると、ライニングやインソールの接着剥がれや極端な色落ちが起こる場合がありNGです」
- せっけんをスポンジでよく泡立て、泡で優しく撫で洗いする。「カビを落とそうと力いっぱい擦ると過剰な摩擦で色落ちや銀面荒れの原因になります」
- 濡れた状態のまま、溶剤系のリムーバーを馴染ませる(同社は、濡れた状態で使うことで成分が革の奥まで浸透し、カビの根っこにアプローチできるとしています)
- 泡と汚れを掛け湯のように水ですすぎ流し、風通しの良い日陰で自然乾燥
- 完全に乾いたら再発がないか確認し、通常の保革ケアを行う
ここからは編集部の見方です。出典が「NG」としているのは丸ごと水に浸すこと、蛇口から直接水をかけること、力いっぱい擦ることです。泡を使って少しずつ湿らせ、撫でるように洗う。この手順を守れる自信がなければ、専門店に任せるほうがいいと思います。
スエード・起毛革のカビ
ShoesLifeは、毛足の中にカビ胞子が溜まった起毛革には起毛革専用のシャンプーで泡立て洗いを行い、陰干しでしっかり乾燥させるとしています。コロンブスも、カビ取りのあと起毛革の場合はブラッシングを行い毛足を整えますと書いています。起毛革のふだんの手入れは起毛革の手入れの記事にまとめました。
しまう前に、汚れを落として、ときどき風に当てる
コロンブスはカビ取りの手順の最後に、「こまめな皮革製品のお手入れを心がけ、湿気を溜めないために、除湿や換気に気をつけましょう」と書いています。
同社の「雨に濡れた靴のお手入れ」のページにも、しまうときの注意があります。「靴をしまう前にも必ず、お手入れをしてください。汚れが残っているとカビの原因となります」。「靴を長時間しまい込む時は定期的に出して、風にあててから、カラ拭きをしてください」。濡れた靴には靴の中に乾燥剤を入れて水分を吸い取るよう書き、シリカゲルを使った靴専用の乾燥剤は日に干すことで繰り返し使えるとしています。
ここからは編集部の見方です。雨の日向けの説明ですが、湿気を溜めないという点はカビ取りのあとにも当てはまると思います。乾燥剤は、子どもやペットが口に入れない場所で使ってください。
カビが出た靴は、手当てが終わってもしばらくは他の靴と離してしまうのが安心です。そして、カビが出た下駄箱も一度空にして、汚れを拭いて換気する時期です。保管の考え方はしまい方の記事に、濡れた日の乾かし方は防水スプレーと濡れた日の順番の記事に書きました。
出典が扱っていないこと
ここからは編集部の見方です。2社の手順は、主に革の表面のカビについて書かれています。靴の内側や中敷きの奥まで広がっている場合の手順は、今回の出典にはありません。その場合や、合成皮革の靴の場合は、その靴のメーカーや、修理・クリーニングの専門店に相談するのが確実です。
まとめ:乾かして、準備して、状態で手順を分ける
整理します。コロンブスは風通しの良い場所で乾燥させてから、マスク等を着用して作業するよう書き、拭いた布はビニール袋に入れて捨てるとしています。ShoesLifeは手袋を着用し換気の良い場所で、使い捨てのティッシュや布を使うよう書き、消毒用アルコールや酢は、シミ・ひび割れ・激しい色落ちの原因になるとしています。
ShoesLifeの区分では、ツヤ革の白カビ(表面にうっすら)は軽度、ツヤ革の黒カビ(菌糸が奥深くまで)は重度。軽度なら、コロンブスのカビ用ミストで拭き取り→約10cm離して吹き付け→拭き取らずに陰干し、またはShoesLifeの溶剤系リムーバーで優しく拭き取り→完全乾燥。重度はShoesLifeの皮革用せっけんで泡の浮かせ洗い(丸ごと浸さない、力いっぱい擦らない)。そしてコロンブスは深く入り込んだカビは十分に除去できないことがある、表面に残ったシミは落ちない場合があるとし、ShoesLifeは革の内部に根っこが残っていると、温度や湿度の条件が揃った際に再発するとしています。
まず1つだけやるなら、消毒用アルコールは使わずに、まず風通しのいい場所で乾かし、他の靴から離すことです。用品がそろったら、マスクと手袋、使い捨ての布、捨てるためのビニール袋を用意して、窓を開けてから始めてください。
出典
- コロンブス「カビが生えてしまった時のお手入れ方法」「雨に濡れた靴のお手入れ」
- ShoesLife(株式会社ルボウ運営。自社取扱商品の紹介を含みます)「【アルコールNG】革靴のカビ取り方法」(最終更新2026年9月30日)
※各資料は2026年10月9日に確認しました。














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