久しぶりに靴を裏返してみたら、かかとの外側がずいぶん削れていた。O脚なのだろうか、歩き方が悪いのだろうか、と気になった人は多いと思います。
先に書いておきます。かかとの「やや外側」が減るのは、むしろ正常です。ただし「外側がはっきり減っている」のは、正常とは別のパターンとして扱われています。この「やや」の違いが、この記事のいちばん大事なところです。
土台にするのは、時事通信の医療サイト「時事メディカル」の連載「足の悩み、一挙解決」で、足のクリニック表参道の桑原靖院長が2019年に書いた解説です。解説に書かれていることはそのまま引用し、そこから先の「だからこうするといい」は、編集部の見方として分けて書きます。
先に、正しい減り方を知っておく
解説では、靴底の減り方を5つに分けています。やや外側が減る、中心が減る、内側が減る、外側が減る、左右非対称に減る。そしてこう書いています。
「五つのパターンのうち、正常なのは①だけです」。①は、やや外側が減るパターンです。「靴のかかとの外側が減っていると、O脚のせいだと気にする人が多いのですが、かかとのやや外側が減るのはむしろ正常なのです」とも書かれています。
理由は歩き方そのものにあります。解説によれば、人は歩くときかかとの少し外側から着地し、次に足裏全体が着いて、足首が前に進んで親指の付け根で地面を蹴って抜けていく。最初に地面に当たるのが、かかとのやや外側です。
そして、こんな一文があります。「靴の裏側をひっくり返してみると、靴のかかとの外側が補強されていることが多いのはこのため」。靴のほうが、最初から外側が減ることを前提に作られているわけです。
結論として解説は、「かかとのやや外側とつま先のやや内側が減るのが正しいすり減り方」だとしています。かかとと、つま先。2か所をセットで見る、というのが次の章で効いてきます。
「やや外側」と「外側」をどう見分けるか
では、自分の靴が「やや外側」なのか「外側」なのか。ここは解説に線引きまでは書かれていないので、ここからは編集部の見方です。解説にある「正しい減り方」を、そのまま物差しに使います。
見るのはつま先です。正しい減り方はかかとのやや外側と、つま先のやや内側でした。つまり、外側で着地して、親指側で蹴り出している。だから、かかとの外側が減っていても、つま先の親指側も減っているなら、正しい流れの跡だと考えられます。
逆に、かかとだけでなく、つま先まで小指側が減っている。靴底の外側の縁に沿って、前から後ろまで削れている。こうなっていたら、着地から蹴り出しまでずっと外側に乗っている可能性があります。解説の言う「外側が減る」パターンは、こちらに近いと考えています。
もうひとつ、別の整形外科クリニックの理学療法士が紹介している方法があります。靴を机に置いて、どちらかに傾いていないかを見る。平らなところに置くと、減りが大きいほうに靴が傾きます。左右並べて置けば、差も見えます。
そして大事な断りを。靴底だけで、O脚かどうかは判断できません。靴の作りや歩く路面、履いている時間でも減り方は変わります。靴底は「そういう可能性があるかもしれない」と気づくための手がかりで、診断の道具ではありません。気になるなら、脚の形そのものを医師に見てもらうのが確実です。
正常から外れる減り方。解説に書かれていること
ここは解説の内容をそのまま紹介します。いずれも「こういう可能性が考えられる」という説明で、断定ではありません。
中心が減っている場合は、アキレス腱が硬く、縮んでいることが考えられるとされています。体が後ろに傾いて重心がかかとに偏り、バランスを取ろうとして前かがみになるので、猫背になり、腰痛や股関節痛の原因にもなる、という説明です。
内側が減っている場合は、かかとが内側に傾いた「過回内」の状態になっている可能性がある、とされています。回内が過剰になると足のアーチがつぶされて扁平足になり、外反母趾や強剛母趾、タコやウオノメ、巻き爪などのトラブルを起こしやすくなる。足首が内側に倒れるとふくらはぎも内側にひねられ、膝や股関節の痛みにつながるとも書かれています。
外側が減っている場合は、足首が外側に傾く「過回外」の状態だとされています。膝が外を向き、足を外側に向けて歩くので、ふくらはぎの骨がねじれ、足首や膝に負担がかかる。さらにこの足は接地した時にほとんどたわまないため、足で衝撃を吸収することができず、膝や股関節を痛めやすい。解説はこれを「ゴツゴツした足」と表現しています。
左右で減り方が違う場合は、どちらかの足が強く回内して重心が偏っているか、左右の足の長さが違っていることも考えられるとされています。確かめ方も書かれていて、膝を曲げた体育座りの格好になって、左右の高さを比べてみる。生まれつき骨の長さが違う場合もあれば、どちらかの足のアーチがつぶれて、膝から下の長さに差が出ていることもある、とのことです。
左右差には目安の数字もあります。「左右差があっても、1〜2センチくらいまでなら大きな影響はない」。ただしそれ以上の差があると、一方の膝や股関節に負担がかかり、痛みの原因になる。そのうえでインソールで左右差をなくすこともできるとしつつ、早めに専門医にかかって原因を突き止め、対策を取った方がいいと結ばれています。
補足をひとつ。先の理学療法士の解説には、つま先がほとんど減らない場合は、歩幅が小さく推進力が弱い可能性がある、とも書かれています。
外側が減っていた人へ
この記事を開いたいちばん多い人は、たぶんここに当てはまると思うので、独立させます。
まず、つま先の親指側も減っているなら、それは正常な減り方である可能性が高い。先に書いた見分け方です。解説のとおり、かかとのやや外側が減るのはむしろ正常なので、それだけで心配する必要はありません。
そのうえで、つま先まで外側が減っている、靴を机に置くと外に倒れるという場合。解説の言う「外側が減る」パターンに近いかもしれません。ここで正直に書いておきます。解説は、このパターンの原因と体への影響は説明していますが、自分でできる対処法までは書いていません。
だから編集部としては、こう考えています。膝や足首、股関節に違和感があるなら、整形外科で見てもらう。解説にあるとおり、このパターンは衝撃を吸収しにくく、膝や股関節を痛めやすいとされているからです。違和感がないなら、減った靴を放置せず、かかとを直すところから。次の章に書きます。
減っていた靴をどうするか:かかとの補修
ここからは編集部の見方です。
減り方が正常でも、削れが進めばかかとは斜めになります。斜めになったかかとの上に毎日立つより、平らに戻したほうがいいと考えています。とくに、机に置いて傾くくらい減っているなら、そろそろ手当てのしどきです。
革靴なら、かかとのゴムだけを交換する修理を修理店でやってもらえます。スニーカーやゴム底の靴なら、すり減った部分を埋める補修材が市販されています。
補修材は応急処置だと考えてください。削れた形を元どおりにできるわけではありませんし、厚く盛りすぎると別の傾きを作るおそれがあります。大事な靴や、減りの大きい靴は、修理店に見てもらうほうが確実です。
内側が減っていた人へ:アーチを支える中敷き
解説では、内側が減るのはアーチがつぶされて足が内側に倒れる「過回内」の可能性がある、とされていました。ただし、解説はこのパターンに中敷きを勧めているわけではありません。インソールに触れているのは左右差の箇所だけです。
そのうえで、ここからは編集部の見方です。アーチがつぶれていることが原因なら、下から支える中敷きは選択肢のひとつになると考えています。ただし、中敷きは足の形を作り変える道具ではありません。できるのは支えて負担を散らすことまでで、靴底の減り方が変わるかどうかも人によります。
そして、中敷きを入れると靴の中の容積が減ります。いまの靴にぴったりなら、入れたとたんにきつくなることがあります。足や膝に痛みがあるなら、自分で中敷きを選ぶより先に整形外科です。
左右差が大きかった人へ:専門医のあとで、補高のインソール
体育座りで膝の高さを比べて、差があった人。ここは解説の数字をそのまま使います。1〜2センチくらいまでなら大きな影響はない。わずかな差なら、何もしなくていいということです。
それ以上の差がある場合。解説はインソールで左右差をなくすこともできるとしていますが、同時に早めに専門医にかかって原因を突き止めるよう勧めています。順番は、先に専門医、そのあとで中敷きです。
理由は、差の原因によって正しい対処が変わるからです。骨の長さが違うのか、片方のアーチがつぶれて差が出ているのか。後者なら、低いほうを持ち上げるより、つぶれたアーチを支えるほうが筋が通るかもしれません。どちらかを見極めずに、自己判断で片側だけ厚くすると、今度は反対側に負担が移るおそれがあると編集部は考えています。
次の一足で見るところ:かかとがしっかりした靴
減りが大きく、修理より買い替えだという場合。ここも編集部の見方です。
解説にあったとおり、靴はかかとの外側が補強されていることが多い。いちばん減る場所が、最初から丈夫に作られているわけです。次の一足を選ぶときは、底を裏返して、かかとの外側に厚みや補強があるかを見てください。
もうひとつは、かかとの後ろを親指で押してみること。簡単に潰れるものより、形を保つもののほうが、足がかかとの中で安定しやすいと考えています。
そして下ろしたら、ときどき裏返してください。数か月後にどこが減ったかが、次の靴選びのいちばん確かな材料になります。
まとめ:「やや外側」と「外側」は別物です
整理します。解説によれば、正しい減り方は、かかとのやや外側と、つま先のやや内側。かかとの外側が少し減っているだけなら、心配しなくていい。
ただし、「やや外側」と「外側」は別物です。つま先まで小指側が減っている、靴を机に置くと外に倒れる、という場合は、解説が「過回外」と呼ぶパターンに近いかもしれません。膝や足首に違和感があるなら、整形外科へ。
そのほかに見直しのサインになるのは、中心が減る、内側が減る、左右で違う。ただしどれも、靴底だけで体の状態を決められるものではありません。
まず1つだけと言われたら、かかととつま先を、セットで見ることです。道具を買うのはそのあとで構いません。そして、痛みがある人は靴底を眺めるより先に整形外科へ行ってください。
今日、家に帰ったら、玄関の靴を一足だけ裏返してみてください。そこには、自分では見えない自分の歩き方が残っています。














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