ニュースで被災地の様子を見て、週末に片付けを手伝いに行こうと決めた。軍手とマスクは用意した。さて、足元は何を履いていけばいいのか。いつものスニーカーで大丈夫だろうか、と迷う人は多いと思います。
日本赤十字社がボランティア向けに作った冊子『ボランティア、ご安全に!』(令和4年6月初版)は、持ち物リストの【必要な物】に「安全靴(中敷き入りの長靴等)」を入れています。そして実例として、持ち物リストで安全靴が指定されていたのに「底が薄いスニーカーで活動に参加してしまいました」というボランティアが、釘を踏み抜いたきずをそのままにして、後日、抗生剤と処置が必要になった話を載せています。
この記事では、この冊子と、広島県・京都府社会福祉協議会の案内、東京消防庁の研究報告、日本プロテクティブスニーカー協会のリーフレットから引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。最後に出典をまとめました。
冊子の実例:底が薄いスニーカーで、海岸の片付けに
冊子の「実例2 活動中に釘を踏み抜いてけが」は、こういう流れです。
- Bさんは初めてのボランティア活動で、津波によりごみが漂着した海岸の清掃活動に参加した
- 事前の持ち物リストには安全靴が指定されていたが、底が薄いスニーカーで参加した
- 活動前のミーティングで片付け作業の注意事項の説明があったが、きちんと聞いていなかった
- 片付け中に釘を踏み抜き、きずをそのままにして活動を続けた
- 後日、きずが赤く腫れて熱を持っていたため医療機関を受診し、抗生剤と処置が必要になった
解説には、「活動内容によって準備する物品は異なりますので、事前に指示された物品や装備を準備しましょう」とあります。
ここからは編集部の見方です。この実例で重なっているのは、靴だけではありません。指定を守らなかった、説明を聞かなかった、きずを放っておいた、の3つです。靴について持ち帰るなら、「指定された靴で行く」です。冊子の冒頭にも、安全で健康な状態で活動し「活動を自己完結することが最も大切です」とあります。
自治体や社協の案内も、足を守る服装を挙げている
広島県の「災害ボランティア活動を行う際の服装について」は、汚泥の撤去作業や家財の移動、壊れた建物の撤去をする際の服装として、「長袖,長ズボン,丈夫な手袋,長靴を身につけましょう」と書き、「ガラスや釘を踏み抜いてけがをしないよう保護してください」としています。
京都府社会福祉協議会の冊子の「災害ボランティア はじめの一歩」(京都府災害ボランティアセンターのホームページからの転載)は、「底の厚い靴が良いですが、動きにくいものは避けましょう」と書いています。
「安全靴」は、ここでは長靴も含む広い意味
冊子の「安全靴」には「中敷き入りの長靴等」と添えてあります。編集部は、JIS規格に合格した安全靴だけを指しているのではなく、足を守る靴という広い意味で使っていると読んでいます。JISの安全靴については安全靴の記事に書きました。また「中敷き」が何のための中敷きかは、冊子には書かれていません。
鋼板入りの消防の長靴でも、踏み抜く場所があった
東京消防庁の消防科学研究所報(平成13年)の「災害時靴補強用中敷の研究開発」は、消防職員と団員の長靴を調べた報告です。消防の長靴は「長靴の底はほぼ全体について鋼板が入っており」、場所によらず踏み抜きに対して一様な耐力を備えているという測定結果だったのに、土踏まずで特に踏み抜きが多かった、としています。理由として、角材などに無意識に土踏まずだけで乗ろうとすること、靴底が下に向けてすぼまった作りで、土踏まずの内側でこの傾向が特に強いことなどを推測しています。踏み抜きの実例には、釘のつきでた燃えさしを踏んだ、林野火災で笹竹の切り口が足の裏に刺さった、割れたガラスを踏んだ、が挙がっています。
ここからは編集部の見方です。消防の長靴と、ボランティアが履く一般の長靴は別物です。それでも、丈夫そうな靴でも足裏のどこかに弱いところはありうる、とは読めます。足元が見えにくい泥の中では、なおさらだと思います。
指定がないときの考え方と、買うときの見どころ
編集部としては、泥のかき出しや家財の片付けなら、赤十字の持ち物リストにならって長靴か安全靴、そこに踏み抜きへの備え、を基本線と考えます。避難所の手伝いなど、がれきに触れない活動ならこの限りではありません。いずれにしても、まず募集案内の指定に従ってください。
市販の踏み抜き防止の中敷きや長靴は、上の研究の試作品とは別物です。どの程度防げるかは、商品ごとの説明で確かめてください。京都府社協の「動きにくいものは避けましょう」もあるので、重さとサイズも見ておきたいところです。中敷きを入れると靴の中が狭くなるので、入れた状態で試し履きするのがいいと思います。
踏み抜きを防ぐ性能には名前があります。職場の転倒予防向けのリーフレットですが、日本プロテクティブスニーカー協会は、靴の「その他の性能」に「耐踏抜き性」(釘などの鋭利なものから足裏を防護する性能)を挙げています。
すでにJISの安全靴を持っている人は注意があります。ミドリ安全は自社のJIS安全靴について、中敷きのない安全靴に中敷きを入れて使わない、取り外せる中敷きを外して使わない、交換するなら同等性能の中敷きを、と書いています(詳しくは安全靴の記事)。中敷きを足す前に、購入した靴のメーカーの説明を確認してください。
刺さったら、そのまま続けない
広島県のページは、けがをした場合「いったん作業を中止し,清潔な水で傷口を洗浄した後,絆創膏などで保護しましょう」としています。日本赤十字社の冊子は、次のような症状があれば「まず医療機関を受診しましょう」としています。
- きずの中に異物がある
- 感染のリスクがある(例:泥のついたものが刺さった、犬にかまれた)
- 感染を疑う状態がある(例:痛みの増加、腫脹、発赤、浸出液増加、発熱)
応急手当では、水道水等で十分に洗うこと、「汚れたきずや刺されたきずは密封せず、医療機関を受診してきちんと処置してもらいます」を挙げています。土や砂、海水等に触れたきずはより感染するリスクが高まり、「竹、木片、古釘、とげ等による刺しきずには特に注意します」とも書いています。釘の踏み抜きは刺しきずです。
破傷風については、きず口から菌が入り、今も致死率の高い病気だとして、追加の予防接種が考慮される成人の例を挙げています。1968年(昭和43年)より前に生まれた人、10年以上追加接種をしていない人、長期の海外赴任や途上国への渡航を予定している人です。該当する人は保健所あるいは医療機関に相談するように、とあります。
出発前にできることなので、自分が当てはまるか確かめておくといいと編集部は考えます。
行く前に:靴は募集の案内で決める
冊子が言っているのは、活動内容で準備する物が変わる、だから事前に指示された物を準備する、ということです。海岸の清掃なのか、泥のかき出しなのか、避難所の手伝いなのか。履く靴は、ボランティアセンターの募集案内を読んでから決めるのが確実です。案内に靴の指定がなければ、問い合わせてから行ってください(ここは編集部の考えです)。
まとめ:指定された靴で行き、けがをしたら作業を止める
- 日本赤十字社の冊子は、持ち物の【必要な物】に「安全靴(中敷き入りの長靴等)」を挙げている
- 実例では、安全靴の指定があったのに底が薄いスニーカーで参加し、説明も聞かず、釘を踏み抜いたきずを放置して、後日の処置が必要になった
- 広島県は汚泥撤去や家財の移動などの際に長靴を挙げ、ガラスや釘の踏み抜きから保護するよう求めている。京都府社協の冊子は底の厚い靴(ただし動きにくいものは避ける)を挙げている
- 指定がなければ、泥や片付けの作業では長靴か安全靴に踏み抜きへの備え、が編集部の基本線
- けがをしたらいったん作業を中止する(広島県)。刺しきずは密封せず医療機関で処置してもらう(赤十字)。破傷風の追加接種が考慮される人もいる
現地で役に立ちたいと思うほど、自分のけがは後回しにしがちです。冊子が「自己完結」を最も大切なこととして挙げているのは、そのためだと思います。足元を整えて、行ってきてください。
出典
- 日本赤十字社『ボランティア、ご安全に!』(令和4年6月24日初版)
- 広島県「災害ボランティア活動を行う際の服装について」
- 京都府社会福祉協議会「ボランティア活動を始めよう」
- 東京消防庁 消防科学研究所報38号(平成13年)「災害時靴補強用中敷の研究開発」
- 日本プロテクティブスニーカー協会「転倒予防のために適切な「靴」を選びましょう」(秋田労働局サイト掲載。業界団体の資料)
※各資料は2026年11月3日に確認しました。














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