妊娠が進むと、いつもの靴がきつくなる。かがんで靴ひもを結ぶのがつらい。かかとの高い靴が、前よりつらく感じる。
この時期の靴選びは、普段とは条件が変わります。そして足のむくみの中には、靴を替えて様子を見てはいけないものも混ざっています。
この記事では、医療情報サイト「MSDマニュアル家庭版」、日本産科婦人科学会、米アイオワ大学の研究発表から引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。靴の記事ですが、体の状態について迷ったら、まず妊婦健診を受けている産婦人科に相談してください。パートナーの方も一緒に読んでもらえるとうれしいです。最後に出典をまとめました。
まず、靴の話より先に確かめたいむくみ
MSDマニュアル家庭版は、妊娠中のむくみについてこう書いています。「妊娠の経過とともに、通常は足、足首、下腿(膝から足首までの部分)などの組織に体液が貯留し、腫れてむくんでみえるようになります。妊娠中、特に第3トリメスター【訳注:日本でいう妊娠後期にほぼ相当】に起こるある程度の体液貯留は正常であり、この状態を浮腫といいます。ときに、指にも軽度のむくみがみられることがあります」。
つまり妊娠中の足のむくみや、指の軽いむくみは、ある程度は正常とされています。そのうえで、同じページに警戒すべき徴候が挙がっています。
- 手の中等度または重度のむくみ(手が著しく腫れているように見える、または指輪が指から外れない)
- 体のいずれかの部位で急に悪化するむくみ
- 片方の脚またはふくらはぎのみのむくみ(特にその部位に熱感、発赤、または圧痛がある場合や発熱がある場合)
- 血圧が140/90mmHg以上
- 持続する重度の頭痛、視覚の変化、錯乱、上腹部の重度の痛み、呼吸困難(妊娠高血圧腎症によって起こる可能性のある症状)
- 胸痛、呼吸困難(深部静脈血栓症によって起こる可能性のある症状)
そして「警戒すべき徴候が1つでもみられる場合は、直ちに病院に行くべきです」。警戒すべき徴候がない場合も「受診すべきですが、数日の遅れが問題になることは通常ありません」とされています。また「手のむくみが軽度ではない場合、または顔にむくみがある場合は、医師の評価を受けるべきです」とも書かれています。
日本産科婦人科学会は、妊娠高血圧症候群について「妊婦さんの10~20人に1人の割合で起こると言われています」とし、症状についてこう書いています。「妊娠高血圧症候群に特徴的な症状はありませんが、むくみ(浮腫)や頭痛、めまい、目が見えにくいといった症状には要注意です。とくに、これまで経験したことがないような頭痛や、ろれつが回りにくい、手足が動きにくい、ふだんと違う胃の痛みや吐き気を自覚したら、すぐに産婦人科へ連絡してください」。
家で血圧を測っている人には、段階も示されています。「家庭血圧が140/90mmHgを越えたら要注意であり、もし160/110mmHgを越えるようなら直ちに産婦人科へご連絡ください」。そして何より、「妊娠高血圧症候群の早期発見と早期治療には、定期的に妊婦健診を受けて、適切な産科管理を受けることが、最も大切です」。
ここからは編集部の見方です。「特徴的な症状はない」とされている以上、むくみを自分で見て判断するだけでは足りないということです。健診を欠かさないことが土台で、そのうえで「靴が入らなくなった」を、むくみに気づくきっかけとして使ってください。
靴を大きくして済ませる前に、上の項目に当てはまらないか。当てはまるなら直ちに受診。当てはまらなくても、むくみは健診先に伝えてください。次の健診が何日も先なら、電話で相談しておくと安心です。顔や手のむくみは、本人より周りの人のほうが先に気づくこともあります。パートナーの方も、ここだけは覚えておいてください。
なぜ足がむくむのか
MSDマニュアルは仕組みをこう説明しています。体に水分を保持させるホルモン(アルドステロンとコルチゾール)が副腎から多く分泌されるようになること。そして「大きくなっている子宮が脚から心臓への血流を圧迫することでも、体液が貯留します。その結果、水分が脚の静脈にたまって、周囲の組織にしみ出します」。
正常なむくみを軽くする方法として挙がっているのは次の4つです。左側を下にして横になる(子宮が太い静脈を圧迫しなくなる)、脚を挙上して頻繁に休息を取る、弾性サポートストッキングを着用する、そして「血流(特に脚の血流)を妨げないゆったりとした衣服を着用する(例えば、足首やふくらはぎの周りを締めつける靴下やストッキングを穿かない)」。
弾性ストッキングは出典で対策として挙がっています。ここからは編集部の見方ですが、圧の強さやサイズの選び方は、健診先で聞いておくと確実です。同じページに「締めつける靴下やストッキングを穿かない」とも並んでいるので、自己判断で選ぶより相談してから、という意味で、この記事では商品として並べていません。
脚を上げて休むときは、ソファや床で座ったまま足を乗せられるクッションがあると楽です。
商品名に「むくみ解消」とうたっているものもありますが、ここで期待するのは脚を上げて休む姿勢をとりやすくすることだけです。クッションそのものにむくみを取る効果を期待するものではありません。
底が平らで、足を支えられる靴
MSDマニュアルの「妊娠中の体の変化」に、靴について直接書かれた一文があります。
背景として、「骨盤内の関節と靱帯(骨と骨をつないでいる線維組織と軟骨)がゆるんで柔軟になります」、そして「大きくなった子宮の重みを反り返って支えるために背骨のカーブがきつくなり、程度は様々ですが背部痛が生じます」。そのうえで「しっかりと足を支えられるように底が平らな靴を履いたり、軽い妊婦用腹帯を着用したりすることで、腰の負担が軽くなります」。
ここからは編集部の見方です。この一文から読める条件は2つです。底が平らであることと、足をしっかり支えられること。
「平ら」の目安として、編集部はかかととつま先の高さの差が小さいものを考えています。厚底でも前後の差が小さければ平らに近く、逆にぺたんこでもかかとが浮いて脱げやすいもの(バレエシューズやゆるいサンダルなど)は、もうひとつの条件「足を支える」を満たしにくいと思います。
かがむ時間を短くして、足は留める
同じページには、腰への負担を減らすために「ものを拾うときには(腰をかがめずに)膝を曲げる」ともあります。
ここからは編集部の見方です。ものを拾うときと同じで、靴を履くときも、腰から深くかがむ時間は短いほうがいいと考えています。ただ、ひものないゆるい靴にすると、今度は足を支えられない。親に贈る靴、自分がこれから履く靴。つまずきにくい足元の4つでも触れましたが、脱ぎ履きの楽さと、足が靴の中で留まることは、ぶつかりやすい条件です。
その間をとる方法として、編集部は面ファスナーやストラップで甲を留められる靴がいいと考えています。ひもを結ぶよりかがむ時間が短く、朝と夕方で締め具合を変えられるからです。とはいえ、甲まで手を伸ばす必要はあります。玄関に低い椅子を置いて座り、足を台に乗せて留めるか、パートナーに留めてもらうのが現実的だと思います。
かかとを入れるところは、立ったまま使える長い靴べらで、かがまずに済ませられます。
試し履きは、店でも座って。面ファスナーを留めた状態で歩いて、かかとが浮かないかを見てください。夕方のほうがむくみやすいと言われるので、その時間に試すのもひとつの方法です。通販で買うなら、返品や交換ができる条件のものを。きつくなったからといって長さを1サイズ上げると、かかとが浮きやすくなります。長さは同じで、面ファスナーで幅を調整できるものを先に考えるのがいいと思います。
ただし、むくみが急に強くなったときに靴のほうを合わせるのは、最初の章のとおり順番が逆です。
産後に、足が大きくなっていることがあります
妊娠中の足の変化は、むくみだけではないかもしれません。米アイオワ大学が2013年に発表した研究があります。
研究チームは妊婦49人の足を、妊娠初期と、出産後およそ5か月の2回測りました。発表によると、約60〜70%の人で足が長く、幅も広くなっていた。土踏まずの高さとアーチの硬さは平均して有意に下がり、それに対応して足の長さは2〜10mmの範囲で伸びていたとされています。一方で、足裏にかかる圧の分布には有意な変化は見られなかったそうです。また、変化の大半は初めての妊娠で起きている可能性があり、2回目以降の妊娠ではそれ以上変わらないかもしれない、と示唆しています。
アーチが下がる理由について、発表は体重の増加と、妊娠に伴う関節のゆるみが関係しているかもしれないと書いています。研究チームは妊娠が足に永続的な変化をもたらすと述べていますが、測定したのは産後5か月の時点までです。
ここからは編集部の見方です。49人の研究なので全員に当てはまるわけではありませんが、産後数か月たっても、妊娠前の靴がきついと感じたら、それは気のせいではないかもしれません。そのタイミングで一度、足を測り直す価値はあると思います。
この研究では長さだけでなく幅も広がっていたので、足囲(親指と小指の付け根まわり)は巻き尺で測っておくと、靴のワイズを選ぶときに使えます。測るときは両足とも。左右で違ったときの考え方は左右で足のサイズが違う人へ。大きいほうに合わせたあと、つま先を詰めてはいけませんに、手持ちの靴を中敷きで調整できるかは中敷きを入れれば合うようになる、は半分だけ本当です。直せることと直せないことに書きました。
まとめ:健診を土台に、平らで留まる靴
整理します。MSDマニュアルによれば、妊娠中、特に後期に起こるある程度の足のむくみや、指の軽いむくみは正常とされます。ただし手の強いむくみ、急に悪化するむくみ、片脚やふくらはぎだけのむくみ(特に熱感・赤み・痛みがあるとき)、血圧140/90以上、ひどい頭痛や見え方の変化、胸痛や呼吸困難などがあれば直ちに受診。日本産科婦人科学会も、これまで経験したことがないような頭痛などがあればすぐに産婦人科へ連絡するよう書き、定期的な妊婦健診がいちばん大切だとしています。
靴は、MSDマニュアルの言う腰の負担を軽くするための、しっかりと足を支えられる底が平らな靴。編集部としては、甲を面ファスナーやストラップで留められるものを、座って留め、かかとは長い靴べらで入れるのがいいと考えています。むくみ対策としては脚を上げて休む、左側を下にして横になる、そして足首やふくらはぎを締めつける靴下は避ける。
そして産後。49人を追ったアイオワ大学の研究では、産後約5か月の時点で約6〜7割の人の足が長く広くなっていた。まず1つだけやるなら、むくみが気になっていることを、健診先に伝えておくこと(次の健診が何日も先なら電話で)。産後数か月たって靴がきつければ、足を測り直してください。
出典
- MSDマニュアル家庭版「妊娠後半にみられるむくみ」(最終更新2023年7月)、「妊娠中の体の変化」
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」(2025年1月30日更新)
- University of Iowa「Foot facts」(2013年3月。研究は American Journal of Physical Medicine and Rehabilitation 2013年3月号)
※各資料は2026年10月3日に確認しました。この記事は医療上の判断に代わるものではありません。














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