昔と同じサイズなのに合わないのは、足が変わったからです。40代からの靴選び4足

いつものサイズを買ったのに、なんだかきつい。夕方には足の側面が当たって痛い。若いころは平気だった靴で、一日歩くと疲れる。40代を過ぎたあたりから、こういうことが増えてきませんか。

結論から書くと、足が変わっています。アシックスが約100万人分の足形データを調べたところ、50歳前後を境に日本人の足の形と歩き方が大きく変わることがわかっています。

変化しているのはアーチです。足には土踏まずをつくる縦のアーチと、指の付け根を横に渡す横のアーチがあります。加齢や運動不足でこれが下がると、足はつぶれて平たくなる。縦アーチが落ちると足長がおよそ5ミリ伸び、横アーチが落ちると足囲が大きくなって、親指の付け根が外へ出てきます。つまり足が成長したのではなく、つぶれて広がっているんです。

ここで多くの人がやるのが、とりあえず大きいサイズを買うことです。これは半分だけ正解です。縦アーチが落ちて本当に足長が伸びているなら、長さも更新する必要があります。ただ、きつさの正体が足囲なのに長さだけ上げると、余った靴の中で足が前後に動き、アーチを支えるものがないまま歩くことになる。順番としては、まず実測して長さと足囲の両方を今の数字に更新する。そのうえで足囲で合わせ直す。これが正しい手順です。

今回紹介する4足は、広がった足への答え方がそれぞれ違います。3軸のサイズで選ぶか、変化を織り込んだ木型で受けるか、伸びる素材で沿わせるか、直しながら長く履くか。どれも「幅広の靴を買いましょう」より一段具体的な解き方です。

目次

同じサイズなのにきつくなった人へ。長さではなく足囲で選ぶという発想:銀座ヨシノヤ

銀座ヨシノヤは1907年、明治40年に銀座6丁目(当時の尾張町2丁目)で紳士靴と子供靴の専門店として始まりました。いまは婦人靴とハンドバッグが主力ですが、事業としては婦人・紳士・子供靴を扱っています。男女どちらの読者にも入口はあります。

この店を挙げる理由は、サイズの考え方にあります。1982年、日本工業規格のサイズ改正よりも先に、足長・足囲・足幅の3つを組み合わせた「足型タイプ別サイズ表示」を始めました。長さだけで靴を選ばない、という発想を40年以上前から形にしていたわけです。1986年には自社のシューフィッター制度も設けています。

40代以降の変化は、その多くが長さではなく足囲に出ます。同じ23.5センチでも足囲が違えば別の靴になる、という前提で棚が組まれている店は、選択肢が一段多い。そして測ってもらえば、自分の足囲が何ミリかという数字が残ります。これさえ持っていれば他の店でも判断ができる。40代からの靴選びで、いちばん費用対効果の高い一歩です。

昔の革靴が急に痛くなった人へ。足に沿って伸びる豚革:ハッシュパピー

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アーチが落ちて足が広がると、硬い革靴はいちばん先に痛くなります。革の側が変化についてこないからです。ここで効くのが、もともと柔らかい素材で作られた靴です。

ハッシュパピーは1958年、アメリカ・ミシガン州ロックフォードのウルバリン・ワールド・ワイド社で始まりました。当時主流だった硬いビジネスシューズやワークブーツに対して、スニーカーのように履けるレザーシューズを出したブランドです。名前の由来が面白い。当時のアメリカでは痛む足を「吠える犬(バーキング・ドッグス)」と呼ぶ俗語がありました。そこに南部の揚げパン料理「ハッシュパピー」が重なって、「しっ、子犬たち、静かに」という名前になったそうです。足の痛みを黙らせる靴、というわけです。

看板素材のハッシュパピーレザーは、樹脂加工をした天然のピッグスキンです。3センチ四方におよそ183個の毛穴が貫通しているので通気性がよく、そのうえ豚革はもともと伸びやすい。ここがこの記事の文脈で効きます。広がってきた足に、革の側が沿ってくれる。木型で受けるのではなく素材で受ける、という解き方です。メンズとレディースの両方があるので、若いころ革靴で平気だった人が最初に乗り換える先としては現実的な一足です。

親指の付け根が出てきた人へ。変わった足を前提にした木型:卑弥呼

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横アーチが落ちると、足の指の付け根が横に広がります。そのなかで親指が小指側へ曲がり、付け根の骨が反対に内側へ開く。結果として付け根が外へ張り出して見える、これが外反母趾です。出っ張りは結果であって、変形の本体は骨の向きのほうにあります。若いころ細身の靴が履けた人ほど、この変化に戸惑います。

卑弥呼は1973年11月、東京・台東区東浅草で靴の卸売として創業した日本の婦人靴ブランドです。法人化は1976年。「美しく歩ける靴」を掲げていて、外反母趾や幅広・甲高といった日本人の足の特徴を織り込んだ木型を使っています。ミリ単位でカッティングを調整し、ヒールやソールも膨大な種類から選んでいるそうです。百貨店バイヤーズ賞のレディス靴部門では、2025年度まで6年連続でベストセラー賞を受けています。

ここが大事なところですが、外反母趾があるからといって、見た目をあきらめる必要はありません。痛くない靴と美しい靴は両立します。足が変わったのだから、その足に合う木型で作られた靴に替えればいい。それだけの話です。

これからは数を減らして長く履きたい人へ。ソールを外して交換できる:トリッペン

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40代からの靴選びには、もうひとつ現実的な視点があります。数をそろえるより、合った一足を長く履くほうが足にいい。合わない靴が下駄箱に増えるのは、若いころの買い方の名残です。

トリッペンは1991年、ドイツ・ベルリンの小さなギャラリーで生まれました。靴職人のマイスターであるミヒャエル・エーラーと、デザイナーのアンジェラ・シュピーツの2人が始めたブランドです。名前は「よちよち歩き」という意味で、昔の貴婦人が雨の日に木靴でよちよち歩いていた様子から取られています。多くのブランドが生産を海外へ移すなか、ドイツの自社工場とイタリアの限られた工房だけで作り続けています。

特徴は修理を前提にした設計です。「Closed」というコレクションは、アウトソールとインソールが取り外せるようになっていて、ステッチをほどけば靴底を交換できます。足に触れる部分には植物タンニンでなめした革を使う。デザインも独特で、人と被りません。一足を長く直しながら履く、という40代以降に向いた買い方が、そのまま形になっている靴です。

まとめ:買い替える前に、足を測り直す

選び方の目安はこうです。同じサイズなのにきつくなったなら、足囲で選べる銀座ヨシノヤの考え方から。革靴が痛くなったならハッシュパピー。親指の付け根が出てきたなら卑弥呼。一足を長く履きたいならトリッペン。

ただ、最初にやるべきなのは靴を買うことではありません。足を測り直すことです。シューフィッターのいる店なら、足長だけでなく足囲まで測ってくれます。何年も同じサイズを買い続けている人ほど、実際の数字と記憶がずれています。測るのは夕方にしてください。足は一日でむくむので、朝の数字で選ぶと午後にきつくなります。

そのうえで、「きついから、とりあえず大きいサイズ」だけは避けてください。長さが本当に伸びていたなら上げるべきですが、きつさの正体が足囲なのに長さを上げると、余った靴の中で足が前後に動いてしまう。アーチを支えるものがないまま歩くことになり、変化はむしろ進みます。長さは合っているのに側面が当たる、というときの答えは、長さではなく足囲のほうにあります。

最後に、靴以外でできることを。床に置いたタオルを足の指でたぐり寄せる運動を、テレビを見ながらでいいので続けてみてください。足の裏の筋肉を使うと、アーチを支える力が働きます。ただし、指が曲がったまま固まってきている人がこれをやると、かえって曲がりを強めることがあります。痛みや違和感が出たらやめてください。家の中で裸足の時間をつくるのも足裏には効きますが、糖尿病などで足の感覚が鈍っている場合は、小さな傷に気づけないので避けてください。

そして、次のような場合は靴やセルフケアの範囲を超えています。片側だけ急に土踏まずが落ちてきた、足にしびれを伴う、変形が半年ほどの単位ではっきり進んでいる。このときは自分でどうにかしようとせず、整形外科で診てもらってください。靴で解決できる範囲と、そうでない範囲があります。

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この記事を書いた人

日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

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