HOKAだけじゃなかった。語れる「走る科学」を持つスニーカー4足【メンズ2026年】

「HOKAを持っている」が当たり前になった。街を歩けばボンダイのあの厚底を見かけることが増え、もはや「HOKAは知っている靴」になっています。それ自体はいいことで、クッション性と歩きやすさが広まったのは確かです。

でも、「HOKAを知っている人が次に選ぶ靴って何?」という問いは、意外と答えを持っている人が少ない。今回はそこに挑みます。

紹介する4足は、HOKAとは別の方向から「走る科学」を追いかけてきたブランドたちです。世界初のグラフェン配合ソール、センサー内蔵で走りを記録するシューズ、中国オリンピック科学チームが開発した反発フォーム、アイスホッケーの動作分析から生まれたランニング力学——どれも「ランナーじゃなくても話せる技術の背景」を持っています。「その靴どこの?」の答えが、テクノロジーの話になる4足です。

目次

HOKAが届かない極限の岩場で選ばれてきた。世界初グラフェンソールのUKブランド:Inov-8 Trailfly Ultra G 300 MAX

Inov-8(イノヴェイト)は2003年に英国カンブリア山地で生まれたブランドです。創業者のウェイン・エディが地元のフェルランニング(英国固有の山岳レース文化)シーンで必要とされる靴を作ったことが始まりで、アルトラマラソンランナーの間では「極限のトレイルで選ぶ靴」として知られています。2018年、Inov-8は世界で初めてグラフェン配合のゴムをアウトソールに採用しました。グラフェンは炭素原子一層の構造を持つ素材で「地球上で最も強い素材」と言われており、通常のゴムソールより50%以上グリップ力が長持ちするという特性があります。「その靴、何のブランド?」→「2003年の英国の山から生まれたブランドで、ソールに世界初のグラフェンを使ってる」——この会話は確実に成立します。

Trailfly Ultra G 300 MAXはその技術を搭載した厚底トレイルモデルで、アグレッシブなラグソールパターンが特徴です。岩場でこのソールを踏んだランナーが口を揃えるのは「スリップしない安心感が別格」という感触で、街で履くと路面に噛み付くようなつかまり方が通常のスニーカーとは根本的に違うことがわかります。HOKAが「大きなクッション」の科学なら、Inov-8は「地面を掴む」科学の靴。足元から話が生まれる選択肢としては、この4足の中で最も強い説得力を持っています。

中国オリンピックチームの科学チームが開発した反発フォーム。アジア発の走る科学:361° Meraki 4

361°(三六一度)は2003年に中国・厦門(アモイ)で設立されたスポーツブランドです。中国オリンピック代表チームの公式フットウェアサポーターを務め、自社の開発チームに生体力学研究者を置いて独自の素材開発を続けています。その代表技術が「QU!KFOAM(クイックフォーム)」——高反発と軽量性を両立するために設計されたEVAコンパウンドで、通常のランニングシューズのフォームと比べて着地のたびの反発率が高いと評価されています。「361って聞いたことない」→「中国オリンピックのシューズを作っているブランドで、独自の反発フォームの技術がある」——意外性から入れる靴の話です。

Meraki 4は361°の中でもロードランニング向けの主力モデルで、QU!KFOAMが全面採用されています。アメリカ市場には2013年から本格進出しており、欧米のランナーコミュニティでは「同価格帯でこのクッション性はありえない」という声が多く、知る人の間では”発見の靴”として評価されています。日本での認知がまだ低い今だからこそ「どこのブランド?」になりやすく、靴好きとしての話の入口になります。HOKAを超えてアジアの科学に触れてみるのは、2026年の靴選びとして面白い一手です。

靴の中にセンサーが入っている。走るたびにデータが記録される靴:Under Armour HOVR Phantom 4

Under Armour
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Under Armour(アンダーアーマー)は1996年にアメリカ・メリーランド大学のフットボール選手、ケビン・プランクが創業しました。「パフォーマンスを向上させる」という一点から始まり、シューズも同じ哲学で設計されています。HOVR Phantomの「HOVR」は独自のフォームと「エネルギーウェブ」と呼ばれるメッシュ素材の組み合わせで、クッション材が体重をかけたときに圧縮され、そのエネルギーを推進力として返す仕組みです。しかしもう一つの特徴が際立っています——シューズの中にセンサーが内蔵されており、専用アプリと連動することで走行距離・ペース・ケイデンス(歩幅のリズム)をリアルタイムで記録できる。「靴自体がトラッキングデバイスになっている」——靴の話がそのままテクノロジーの話に変わる瞬間です。

HOVR Phantom 4はその設計を最新世代に更新したモデルで、日常履きにも使えるシルエットに仕上がっています。HOVRを初めて履いてアプリを開いたとき「靴からデータが来ている」という感覚は思った以上に新鮮です——距離やペースを手首のウォッチではなく足元の靴が計測している、それだけで走り出す動機が変わる人がいる。「ただ履く靴」ではなく「履きながら記録する靴」という概念は、HOKAのクッション性とはまったく別の方向の科学です。走ることを習慣にしたい人、テクノロジーで靴を選びたい人、どちらにも「その靴どこの?」から話が広がる一足です。

NHLの伝説がアイスホッケーの動作解析をランニングに応用した:Salming Miles Lite

Salming(サルミング)は、スウェーデン出身のアイスホッケー選手ベルイェ・サルミングが関与して生まれたブランドです。サルミングはトロント・メープルリーフスで活躍しNHL殿堂入りを果たした選手で、「スウェーデン人が北米プロホッケーで成功した最初の人物」の一人です。そのサルミングの運動力学——爆発的なスタート、素早い方向転換、足への荷重の前方移動——をランニングシューズに応用する試みから、Salmingのランニングラインは生まれています。「アイスホッケーの科学をランニングシューズに持ち込む」という発想自体が、HOKAやOnとはまったく違う起点の話になります。

Salming Miles Liteは前足部へのロールオーバーを促す設計が特徴で、ホッケー由来の「体重の前への移動」を走りに活かすコンセプトを持っています。初めて履いたランナーが感じるのは「推進力の出方が他のシューズと違う」という感触で、前足部に重心が乗ったときの感覚がホッケー選手の蹴り出しの力学に近いと言われています。日本での取り扱いは現在限定的なため購入前に最新状況の確認をおすすめしますが、逆にそれが「なかなか手に入らない靴」というレア感を作ってもいます。「サルミングっていうスウェーデンのNHLレジェンドが作ったブランドで、ホッケーの動きをランニングに応用してるんだよ」という話が確実に「え?」になる——スポーツの話も靴の話も同時に成立する、なかなか得難い組み合わせです。

まとめ:「HOKAの次」は、走る科学の別の入口にある

今回紹介した4足をまとめます。

  • Inov-8 Trailfly Ultra G 300 MAX:2003年英国カンブリア山地発。世界初グラフェン配合ソールを採用した極限トレイルブランド。「地面を掴む科学」が街で光る一足
  • 361° Meraki 4:2003年中国厦門発。中国オリンピックの研究チームが開発したQU!KFOAM搭載。アジア発の反発フォームをいち早く知っておく価値がある
  • Under Armour HOVR Phantom 4:米国1996年創業。HOVRフォーム×エネルギーウェブ×シューズ内蔵センサーで走りをリアルタイム記録。「靴がトラッキングデバイスになっている」という体験
  • Salming Miles Lite:NHL殿堂入りのベルイェ・サルミングが応用したアイスホッケー動作解析由来のランニング設計。スポーツの話と靴の話が一度に成立する

4足を並べると、「走る科学」の切り口がバラバラで面白い——英国の岩山、中国の研究室、米国のキャンパス、スウェーデンのアイスリンク。HOKAが一般化した今だからこそ、その次の話ができる靴を持っていると、足元への好奇心が変わります。個人的にはInov-8 Trailfly Ultra G 300 MAXをすすめます。グラフェンソールを街で踏む——その一歩に「2003年から英国の山岳ランナーが実験を重ねてきた素材が入っている」という事実がついてくる。「世界初」という技術の重みを、靴底で毎回踏み締めながら歩く。それだけの話ができる靴は、なかなかありません。

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日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

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