スニーカーのタグを見ると、ほとんどが「MADE IN VIETNAM」「MADE IN CHINA」「MADE IN INDONESIA」です。それが当たり前になって久しいのですが、日本の工場で今もスニーカーを作り続けているブランドがあります。広島の小さな工場で1足ずつ作られる靴、150年近く久留米でゴム底を作り続けてきたメーカー、東京の職人が革靴の技術でスニーカーを作るブランド、1892年創業の老舗の国産ウォーキングシューズ——それぞれに「なぜ日本で作るのか」という理由があります。
「日本製のスニーカー」は、円安で海外ブランドが値上がりし続ける2026年に、改めて選ぶ理由がある靴です。値段の話だけではなく、どこで誰が作っているか、どんな製法で仕上げているかを語れる一足として。今回紹介する4ブランドは、「Made in Japan」の意味がそれぞれ違います。
この記事では、「国産スニーカーを選んだことがない」方に向けて、背景まで語れる日本製スニーカーを4足紹介します。
「広島の工場で、1839年の製法で作られている」——Spingle SPM-110
Spingle(スピングル)は2002年に広島県府中市で創業したスニーカーブランドです。府中市はもともと家具の産地として知られていますが、スピングルが使う「バルカナイズ製法」は1839年に発明された加硫接着技術——熱と圧力でソールとアッパーを一体化させる製法で、国内でこれを扱える工場は非常に少ない。「このスニーカーの製法って、ゴムの加硫を発見したグッドイヤーと同時代に生まれた技術なんだよ」——靴の話をする機会があれば、ここから始められる一足です。
Spingle SPM-110の最大の特徴は、ソールが足の甲側まで波型に巻き上がっているデザインです。これはバルカナイズ製法特有の仕上がりで、他のスニーカーにはない独特のシルエット——「その靴、底の形が普通と違う」と言われて話が始まる一足です。初めて手に取ったとき、縫い目の均一さと革の質感が「これは工場で大量に作られたものじゃない」と伝えてくる。広島の職人仕事を毎日履けるスニーカーです。
「久留米はゴムの産地で、靴を150年作り続けてきた町でもある」——Moonstar Gym Classic
Moonstar(ムーンスター)は1873年に福岡県久留米市で創業した靴メーカーです。久留米は明治時代からゴム産業が発展した地域で、タイヤのブリヂストンも久留米発の会社ですが、ムーンスターはゴム底の靴製造で153年のキャリアを持っています。「久留米ってゴムの産地なんだよ、だからムーンスターは150年以上そこで靴を作り続けている」——福岡出身の人にも初めて聞く人にも、確実に「へえ」という顔をさせます。
Moonstar Gym Classicは、学校の体育館シューズのDNAを現代のスニーカーに昇華したモデルです。初めて見たとき「懐かしいのに古くない」という感覚がありました。クリーンなキャンバスアッパー、丸みのあるソール——ローテクスニーカーとして普段のコーデに違和感なく溶け込んで、「その白い靴、どこの?」と聞かれるのにスタンスミスやコンバースとは違う答えが返せます。4足の中で最も手の届きやすい価格帯です。
「革靴職人の技術でスニーカーを作る、東京のブランド」——YOAK
YOAK(ヨーク)は2017年に東京で創業した国産スニーカーブランドです。革靴の製造技術をスニーカーに応用していて、「スニーカーなのに、革靴の職人が作っている」という事実が他のブランドとはまったく異なるポジションを作っています。4足の中で最も「革靴とスニーカーの間」にいる靴で、ジャケットやテーラードパンツに合わせたとき「きれいめなのに重くない足元」という理想のバランスが出ます。
YOAKのスニーカーを初めて手に取ったとき、「スニーカーなのに革の縫製が革靴みたいだ」と思いました。アッパーの革の質感、ステッチの入り方——大量生産のスニーカーとは明らかに別の仕事が見えます。ジャケパンで会社に行って、そのまま夜の食事にも使える一足を国産で探している方に、真っ先に候補に入れてほしいブランドです。
「1892年創業の靴屋が、今も国内で作り続けているスニーカー」——Asahi Shoes WL727
アサヒシューズ(アサヒコーポレーション)は1892年に創業した日本最古の靴メーカーのひとつです。130年以上国内で靴を作り続けてきたブランドで、「この靴を作っているメーカー、1892年創業なんだよ」という重みが他の3足とはまた別の意味を持っています。WLシリーズは同社のウォーキングライン——軽量で足に優しい設計が基本にあり、国産品の丁寧な仕事が長時間歩く日の足元を支えてくれます。
Asahi Shoes WL727は、4足の中で最も「毎日の実用」に振り切った靴です。特別感があるわけではないのですが、1足あると「外に出る日はいつもこれ」という安心感のある一足になる。軽さと足へのやさしさが長時間歩いて初めてわかる——「ちゃんとした靴を選んだ」と思えるのが1日歩いた後というのが、このシリーズの正直な感想です。「創業130年の靴屋が作った日本製ウォーキングシューズ」という背景は、親世代や靴に詳しくない人への説明がいちばんシンプルに伝わります。
まとめ:4足の「Made in Japan」はそれぞれ違う
今回紹介した4足をまとめます。
- Spingle SPM-110:広島府中市・2002年創業。1839年発明のバルカナイズ製法。波型に巻き上がるソールが「その靴どこの?」を生む個性派スニーカー
- Moonstar Gym Classic:久留米・1873年創業。153年のゴム底技術が生む体育館シューズDNA。ローテクスニーカーとして普段使いしやすい
- YOAK:東京・2017年創業。革靴職人がスニーカーを作るという逆転発想。ジャケパンに合わせたいきれいめ国産スニーカー
- Asahi Shoes WL727:1892年創業の最古参。130年以上の国内製造の重みと実用性が共存する毎日使いの一足
「製法の話をしたい」ならSpingle、「地域の産業史ごと語りたい」ならMoonstar、「きれいめな一足を国産で選びたい」ならYOAK、「実用と背景の重みを両立したい」ならAsahi Shoes。4足それぞれの「Made in Japan」の意味が違うのが、このカテゴリの面白いところです。個人的にSpingleをすすめます。1839年の製法が広島の工場で今も使われている、ソールのデザインが街で目を引く——「なぜこの靴を選んだか」の説明が、何年経っても変わらずにできる一足です。














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