買ってまだ数か月なのに、靴底がすり減って穴が空いた。つま先が欠けてきた。そんなとき、「歩き方が悪かったのかな」「安かったから仕方ないか」と、そのまま捨ててしまっていないでしょうか。
国民生活センターが2025年4月に公表したテスト結果に、まさにそういう靴の話があります。2か月ほどで靴底が壊れたスリッポンについて、未使用の同じ型の靴を調べたところ、表底の耐摩耗性と耐屈曲性が、国際的な技術文書にあるカジュアルシューズの性能要件を満たしていなかった、という内容です。そして、最終的に相談者には商品代金が返金されています。
この記事では、国民生活センターの報告書と消費者庁のページから引用し、そこから先は編集部の見方として段落を分けて書きます。これは1足の靴についてのテストです。最後に出典をまとめました。
何が起きたか。2か月で、つま先が大きく欠けた
報告書は「相談解決のためのテスト」という、消費生活センターなどの依頼に基づいて行われたテストの1つです。依頼の内容は「2カ月ほど使用した靴の一部が破損した。商品に問題がないか調べてほしい。」でした。
靴は、男性用のスリッポンと呼ばれる靴紐がないタイプの靴です。2か月ほど履いていたところ、靴底の破損に気付いたとのこと。報告書は、そのときの靴の状態を次のように書いています。
- 右足つま先の親指側が大きく欠損し、小指側も削れていた
- 両足とも、かかと後部に摩耗がみられ、ブランド名や溝など表底のデザインの模様が消えたり、小さな穴が空くなどしていた
- 履き口やかかと部が変形し、内側の生地の破れもみられた
底の素材を分析機器で調べたところ、ポリ塩化ビニル樹脂を主体とするものと考えられたそうです。
テストで分かったこと。削れやすく、曲げるとひびが入った
テストに使ったのは、相談者が履いていた靴そのものではなく、未使用の同じ型の靴です。2つの性質を調べています。
1つ目は、すり減りにくさ(耐摩耗性)です。国際規格のISO20871に基づいて調べたところ、ISO/TR20880「履物‐靴材料の性能要件‐表底」にあるカジュアルシューズの性能要件を満たしていませんでした。報告書の注には、この要件が表底の密度が0.9mg/mm2未満の場合、重量損失170mg以下と書かれています。また、表底から切り出した試験片の断面を見ると、底材は均質ではなく、大きな空洞がみられるものもあったそうです。
2つ目は、曲げに対する強さ(耐屈曲性)です。ISO17707に基づいて調べたところ、こちらもカジュアルシューズの表底の性能要件を満たしていませんでした。要件は、屈曲回数3万回で切り込みの成長が5.0mm以下、自発的な亀裂が生じないこと。同じ型の靴は、3万回曲げた時点で切り込みの成長は0.5mmでしたが、その他に自発的な亀裂が生じたそうです。
なお、報告書がいうカジュアルシューズとは、「外見上は、一般使用目的のスポーツ・レジャー用靴に類似しているが、余暇の活動に適する靴」のことです。
結論は条件付きで書かれています。「当該品を同型品と同等の品質であったとみなした場合、使用によって表底の摩耗や亀裂の発生など破損が起こりやすいものであったと考えられました」。
どう解決したか。返金された
依頼した消費生活センターがテスト結果を販売事業者に説明したところ、相談者に商品代金が返金された、とあります。
ここからは編集部の見方です。このテストで分かるのは、この1つの型の靴についてです。安い靴やスリッポン、ポリ塩化ビニルの底がどれも同じだ、という話ではありません。報告書は、何か月もてば普通か、という目安も示していません。それでも、「早すぎる」と感じた不具合を相談したら、調べてもらえて、返金につながった例がある。これを知っておくだけで、壊れた靴をすぐ捨てる前に一度立ち止まれると思います。
早すぎると思ったら、どこに相談するか
消費者庁は、「困ったときは、一人で悩まずに、『消費者ホットライン』188にご相談ください」と案内しています。188は「地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口をご案内します」という番号で、消費者庁につながるものではない、とも書かれています。相談は無料ですが、通話料はかかります。
ここからは編集部の見方です。相談する前後で、次のことをしておくと話が進めやすいと思います。
- 靴を捨てない。今回のテストも、壊れた靴の観察から始まっています
- 壊れた場所の写真を撮る。靴底、かかと、履き口まで
- いつ買って、どのくらい履いたかをメモする。購入の記録やレシートも
- 商品名や型番、購入ページを控えておく。今回のテストも、同じ型の未使用品で行われています
- まず買ったお店に状態を伝える。通販なら、販売しているのがどの事業者か(モールの出品者かどうか)も確かめておく。話が進まなければ188へ
なお、テストは消費生活センターなどが依頼して行われたものです。相談すれば必ずテストしてもらえる、というわけではないと思います。また消費者庁のページによると、188が話し中でつながらないときは、国民生活センターの「バックアップ相談」も使えます。
通販で靴を買うときの注意は通販の靴の記事に、セールの値引き表示の読み方はセールの靴の記事に書きました。
不具合と、ふつうのすり減りや劣化は分けて考える
ここからは編集部の見方です。靴底が減ること自体は、靴を履いていれば必ず起きます。かかとの外側が少し減るのは、むしろ自然な歩き方のサインです。減り方の読み方は靴底の減り方の記事にまとめました。また、長くしまっていた靴の底がぼろぼろになるのは、すり減りとは別の加水分解という劣化のことがあります。
報告書の靴は、つま先が大きく欠けていただけでなく、両足のかかと後部にも摩耗があり、模様が消えたり、小さな穴が空いたりしていました。何か月なら早すぎるか、という線は出典にありません。編集部としては、模様が消えて穴が空いた、つま先が欠けたなど、「減った」を超えていると感じたら、2か月より長く履いた靴でも、期間だけであきらめずに一度相談してみる価値はあると考えています。
靴を選ぶときは、箱や靴の中のラベルにある品質表示で、底の素材を見ておくといいと思います。素材ごとの違いは靴底の素材の記事にまとめています。ただし、今回の報告書は素材の種類の良し悪しを評価したものではありません。調べたのはすり減りにくさと曲げへの強さで、断面に大きな空洞がみられた試験片もあった、という記録です。素材の名前だけで判断しないほうがいいと考えています。
気に入った靴を長く履くために
ここからは編集部の見方です。不具合ではなく、ふつうに履いてかかとが減ってきた靴なら、減りきる前に手を入れるのがいいと考えています。靴があと何回直せるかの見方は靴の修理の記事に書きました。
自分で補修するなら、かかとの減ったところを埋める補修剤が手軽です。ただし使うのは、長くふつうに履いてすり減った靴や、相談しないと決めた靴にしてください。早すぎると感じて相談するかもしれない靴に使うと、壊れたときの状態が分からなくなってしまいます。
まとめ:早すぎる不具合は、捨てる前に相談を
国民生活センターのテストでは、2か月ほどで靴底が壊れた男性用スリッポンについて、未使用の同じ型の靴を調べたところ、表底の耐摩耗性と耐屈曲性が、ISO/TR20880にあるカジュアルシューズの性能要件を満たしていませんでした。報告書は、相談者の靴が同じ型の靴と同等の品質だったとみなせば、破損が起こりやすいものだったと考えられる、としています。販売事業者に結果を説明し、商品代金は返金されました。
ここからは編集部の見方です。これは1足の靴の事例で、相談すれば必ずテストされるわけでもありません。それでも、早すぎると感じた不具合が調べられ、返金につながった例はあります。まずは靴を捨てずに写真を撮り、型番や購入ページを控えて、買ったお店に伝える。話が進まなければ188へ。気に入って買った靴だからこそ、あきらめる前に一度、声をかけてみてください。
出典
- 国民生活センター「表底が摩耗・破損しやすい靴(相談解決のためのテストからNo.195)」(2025年4月23日公表)、同報告書本文
- 消費者庁「消費者ホットライン」
※各資料は2026年10月13日に確認しました。














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