白いスニーカーが薄汚れてきたので、思い切って洗った。汚れはちゃんと落ちた。ところが乾いてみたら、洗う前より黄ばんでいる。
これ、洗い方が下手だったわけではありません。むしろ丁寧に洗った人ほど起きます。理由は、黄ばみが生まれるのは洗っている最中ではなく、そのあとの工程だからです。
この記事は、洗剤の紹介から入りません。先にどこで失敗しているのかを見て、最後にすでに黄ばんでしまった靴をどうするかまで書きます。
先に、黄ばみがどこで生まれているのかを
洗ったあとに出る黄ばみについては、クリーニングの専門店や洗剤まわりの解説で、おおむね同じ説明がされています。生地に残った洗剤の成分が、乾くあいだに変色するというものです。
靴用の洗剤には、汚れを落とすためにアルカリ性のものが多い。そのアルカリ性の成分がすすぎきれずに繊維の中に残ったまま、乾燥や紫外線にさらされると、そこが黄色く変わる。「アルカリ焼け」と呼ばれることがあります。蛍光増白剤の入った洗剤でも、すすぎ不足で同じことが起きるとされています。
つまり犯人はほぼひとつ、洗剤の残りです。そしてそれが起きるのは、洗っている最中ではありません。すすぐ、水気を取る、乾かす。この3つの工程のどこかです。洗剤を高いものに替えても、この3つが変わらなければ結果は変わりません。
乾かし方については、メーカーがはっきり禁じていることがあります。アシックスの公式のお手入れ案内に、こうあります。
「直射日光に当てたり、ヘアドライヤーやヒーター、ストーブなどでの強制乾燥は絶対にしないでください」。
「絶対に」と書かれた注意書きは、そう多くありません。早く乾かしたくて日向に出すのが、いちばんやってはいけないことだった、ということになります。
ここで先に、ひとつ切り分けておきます。布の部分は白いのに、ソールのゴムだけ黄色いという場合。これは洗剤の話ではありません。あとで別の章にします。
そもそも、丸洗いしなくていい場合があります
黄ばみの原因が洗剤の残りなら、いちばん確実な予防は水と洗剤を使わないことです。商品の前に、この話をさせてください。
ソールの脇が黒くこすれた。つま先に一か所ついた。このくらいなら丸洗いは要りません。消しゴムタイプのクリーナーで、その場所だけこすれば落ちます。コロンブスの案内では、白い面でやさしく擦り、油汚れには粉やすりの入ったグレーの面を使う、という作りになっています。
ただし正直に書いておきます。この手のクリーナーが効くのは、主にソールのゴムと、つるりとした革の部分です。キャンバスやメッシュの甲にこすりつけても、あまり落ちませんし、繊維が毛羽立ちます。同じ案内にも強く擦りすぎると革を痛めるという注意があります。布の甲が汚れているなら、素直に洗うほうが早い。
もう少し広い範囲で、水に浸けたくないときはすすぎのいらない泡タイプがあります。水を使わずに泡で汚れを落とす作りで、泡を全体に広げるように擦り、泡が表面に残っているうちに吸水性の高いクロスで拭き取る。中に洗剤が残る量が、丸洗いよりずっと少なく済みます。
丸洗いは、汚れが繊維の奥まで入ったときと、においが取れないときの手段です。毎回やるものではありません。洗う回数を減らすほうが、結果として白く保てます。
洗うと決めたら。成分表示を見て買う:スニーカー用の中性シャンプー
ここまで「アルカリ性の残りが黄ばみになる」と書いてきたので、買うときに見るところも決まります。
液性が「中性」と書かれているものを選んでください。裏の表示に必ず書いてあります。アルカリ性のほうが汚れは落ちますが、そのぶん残ったときのリスクを背負います。白い靴を長く白く保ちたいなら、落ちる力より残らないことを取るほうが合理的です。
もうひとつ、蛍光増白剤が入っていないか。これは白く見せるための成分で、すすぎ不足のときに変色の原因になるとされています。生成りやオフホワイトの靴では、そもそも色が浮いて不自然になることもあります。
そして衣類用の粉末洗剤を流用しないこと。溶け残った粒がそのまま繊維に残れば、黄ばみの原因そのものになります。使うなら液体、できれば靴用です。
洗う手順はメーカーの案内どおりです。アシックスの手順では、まず紐を外し、中敷きが取り外せる場合は外して、中にたまった汚れをよく取り除く。ここを飛ばすと、洗っている最中に砂が出てきて研磨剤のように働きます。そのあと水かぬるま湯で湿らせて、シューシャンプーで洗います。
力加減にも注意があります。「シューズをブラシなどで洗う際には『ゴシゴシ』と力強く洗う事は避けてください」。落ちない汚れは、力ではなく回数で落とします。そしてシューシャンプーをかけたまま放置しないこと。つけ置きで楽をしようとすると、洗剤が中にとどまる時間が延びます。
力ではなく面積で落とす。硬さは2種類要ります:靴洗い用のブラシ
「ゴシゴシしない」と言われても、手で洗っていると力が入ります。そこで道具の出番です。
ここで大事なのは、1本ですべてをやろうとしないことです。柔らかいブラシ1本だと、ソールのゴムの汚れが落ちなくて、結局そこで力が入ります。逆に硬いブラシ1本だと、布の甲が毛羽立って、そこが余計に汚れを拾うようになります。
そこで硬さの違う2本、あるいは硬さ違いがセットになったものを選んでください。布の甲には柔らかめを、ソールのゴムと溝には硬めを。分けた瞬間に、力を入れる必要がなくなります。柔らかい毛で広い面を何度も通すほうが、生地を傷めずに落ちます。
中敷きと紐も、外したついでに洗ってください。においの元はだいたいそちら側にあります。紐は洗うと縮むことがあるので、乾いてから長さを確かめて通し直すといいです。
ここが本番。洗ったあとの3工程
ここは商品の話ではありません。今日から変えられる、いちばん効く部分です。
1つめ、すすぐ。コロンブスの丸洗い用シャンプーの手順には「流水でよく濯ぎ」とあります。桶にためた水で2、3回ゆすいで終わり、ではありません。泡が見えなくなってからも、もうしばらく流してください。
泡が消えたことと、洗剤が抜けたことは別です。この記事でいちばん覚えて帰ってほしい一行がこれです。黄ばみの分かれ目は、ほぼここにあります。
2つめ、水気を取る。同じ手順の最後に、「吸水性の高いクロスで拭き取ってください」とあります。この工程を飛ばす人が多い。濡れたまま干すと乾くまでの時間が延び、そのあいだに中で汚れと水分が動きます。タオルでしっかり押さえて、絞れる水は先に抜いておく。乾かす時間を短くすることが、そのまま仕上がりに効きます。
3つめ、干す。風通しのよい日陰です。日向に出さない。ドライヤーを当てない。暖房の前に置かない。アシックスが「絶対にしないでください」と書いているのはここでした。
干し方にもこつがあります。つま先を下に向けて、逆さに近い角度で吊るすと、中に残った水が下りてきます。平らに置くと、いちばん乾きにくいつま先の内側に水が溜まったままになります。中に白い布や紙を詰めて形を整えるのも公式の手順にあります。色の付いた紙を使うと色移りすることがあるので、白いものを使ってください。
時間の目安も書いておきます。熱が使えない以上、一晩では足りません。風のある場所に吊るして、丸一日から二日を見ておいてください。厚みのあるスニーカーや、中材の詰まったものはもっとかかります。乾ききる前に履くと、内側に湿気を閉じ込めたままになります。
熱が使えないぶん、水を先に取る:吸水性の高いクロス
熱を使ってはいけないとなると、残る手は「水を先に取る」ことと「風を通す」ことだけになります。
ふつうのバスタオルでも構わないのですが、吸水性の高いクロスは水を吸う量が違います。洗ったあとに包んで押さえるだけで、乾燥にかかる時間がはっきり変わる。メーカーの手順が名指しでこれを求めているのは、そういう理由だと思います。
洗うとき専用の道具にはなりません。雨に降られた日にも同じように使えます。濡れた靴を玄関でそのままにするか、一度押さえてから干すかで、翌朝の状態が変わります。
あわせて、靴用の乾燥剤をつま先に入れておく方法もあります。ただしびしょ濡れの靴にいきなり入れても、あまり働きません。メーカーの案内にも、濡れているときは水分をできるだけ拭き取ってから入れるように、とあります。あくまでクロスで水を取ったあとの仕上げです。
もう黄ばんでしまった靴へ。まず原因を見分けてから:黄ばみ取り
ここまで予防の話をしてきましたが、目の前の靴がもう黄ばんでいるという人のほうが多いと思います。
最初にやることは、こすることではありません。どちらの黄ばみかを見分けることです。
ひとつめが、この記事でずっと話してきた洗剤の残りによる黄ばみ。洗ったあとに出て、布の部分にむらになって出ることが多い。これは残ったアルカリ性の成分が原因なので、もう一度よくすすぐだけで薄くなることがあります。何かを買う前に、まずこれを試してください。それでも残るなら、白物用の黄ばみ取りの出番です。
ふたつめが、素材そのものの黄変です。布は白いのにソールのゴムだけ黄色いというのがこちら。原因は洗剤ではなく、紫外線による劣化と、ゴムや樹脂に含まれる酸化防止剤が空気中の成分と反応して起こる変色だとされています。これはすすぎをどれだけ丁寧にやっても防げません。しまい込んでいたスニーカーのソールが黄色くなっているのは、たいていこちらです。
そして正直に書いておきます。素材そのものが変色している場合、完全に元の白さへ戻すのは難しいとされています。市販の黄ばみ取りである程度は明るくなりますが、新品には戻らない前提で使ってください。
使うときの注意を2つ。塩素系の漂白剤は使わないこと。素材を傷めますし、かえって黄変することがあります。専用品か、酸素系と書かれたものを、製品の指示どおりの濃度と時間で使ってください。もうひとつ、革、スエード、色の付いた素材には使えないものがほとんどです。白い布とゴムのための道具だと考えてください。
高かった一足や、思い入れのある一足なら、自分で漂白する前にスニーカーのクリーニングを受け付けている専門店に相談するほうが安全です。失敗すると、黄ばみよりまずい状態になります。
洗っていいのか分からない人へ。素材と洗濯機の話
最後に、そもそも洗っていいのかという話を。
アシックスの案内では、素材ごとに扱いが分かれています。メッシュや布は、やわらかい白い布で水拭きし、落ちなければシューシャンプーで洗う。人工皮革も水拭きが基本で、必要に応じて洗う。
そして天然皮革は別扱いです。革靴用のクリーナーで汚れを落としてクリームで仕上げる、とされ、「水洗いは甲革表面をいためる原因となりますのでできるかぎり避け」と書かれています。レザーのスニーカーを丸洗いしようとしていた人は、ここで止まってください。同じ「スニーカー」でも、革が使われていれば手入れは革靴と同じ側になります。起毛したスエードも同じです。
洗濯機についても書いておきます。メーカーが案内しているのは手洗いです。洗濯機を公式に勧めている案内は見当たりません。そのうえで現実的に言えば、使うなら靴用のネットに入れて、手洗いに相当する弱いコースで、という条件になります。ドラム式は落として叩く動きなので負担が大きく、接着部分には向きません。そして革とスエードは、どちらにしても機械に入れないことです。
最後にひとつ、頻度の話を。アシックスは長持ちのこつとして「2足以上のシューズを交互に履く。3日に一度位は休ませる」ことを挙げています。汚れもにおいも、履きっぱなしで溜まります。洗う技術を上げるより、洗う必要を減らすほうが早い、という身も蓋もない結論です。
まとめ:泡が消えても、洗剤は残っています
揃えるものを整理します。丸洗いにはスニーカー用の中性シャンプーと、硬さの違うブラシ。洗ったあとのために吸水性の高いクロス。そして、もう黄ばんでいるなら白物用の黄ばみ取り。
まず1つだけと言われたら、中性のスニーカー用シャンプーです。手持ちの衣類用洗剤をやめるだけで、黄ばみの主な原因をひとつ外せます。落ちる力ではなく、残らないことを選ぶ買い物です。
そのうえで、持ち帰ってほしいのは道具ではなく洗ったあとの3工程のほうです。よくすすぐ。水気を拭き取る。日陰で丸一日干す。
とくに最初のひとつ。泡が見えなくなったことと、洗剤が抜けたことは別です。多くの人が黄ばませているのは、おそらくここです。もうしばらく流水に当てる。それだけで、次に乾いたときの色が変わります。
洗いたてのスニーカーで出かける日は、なんとなく気分がいいものです。その一日を、黄ばみで台無しにしないでください。














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