中敷きを入れれば合うようになる、は半分だけ本当です。直せることと直せないこと

買った靴が、少しだけ合わない。かかとが浮く。歩いていると前に滑る。夕方になると足の裏が痛い。

そこで思いつくのが中敷きです。売り場にはたくさん並んでいるし、値段も靴を買い直すよりはるかに安い。ただ、入れれば直るものと、入れても直らないものがあります。その線引きを先に知っておくと、無駄な買い物をせずに済みます。

目次

先に、中敷きが何をする道具なのかを

中敷きの働きは、大きく2つです。

ひとつは、靴の中の容積を埋めること。足の下に何かを敷けば、そのぶん足は上に持ち上がり、天井までの隙間が減ります。少し大きい、かかとが浮く、中で足が泳ぐ。こういう「余っている」症状に効くのはこちらです。

もうひとつは、足の裏にかかる力を受け止めて分散させること。硬い床からの衝撃をやわらげたり、土踏まずを下から支えたりする働きです。夕方に足の裏が痛い、長く歩くと疲れる。こういう症状に効くのはこちらで、サイズが合っているかどうかとは別の話になります。

この2つを混ぜると、選び方を間違えます。サイズの問題に厚いクッションを買っても、力の分散が欲しいときに薄い一枚を買っても、狙いが外れる。まず自分の症状がどちらなのかを決めてください。

そして、どちらの目的であっても共通する制約がひとつあります。中敷きは必ず容積を食う、ということです。だから、そもそも容積が足りていない靴には使えません。幅が狭くて小指が当たる、甲が高くて押される。こういう靴に何かを敷くと、残っていたわずかな余裕まで奪うことになります。直しにいって、悪化させる典型です。

そしてもうひとつ、買う前に確認することがあります。いま入っている中敷きが外せるかどうかです。しっかりした厚みのある中敷きは、クッション材と土台と芯材が重なった構造なので、それなりの厚みがあります。元のものを外さずに上から重ねると、靴の中が急に狭くなる。革靴では純正の中敷きが接着されていて外せないことも多いので、まずそこを見てください。外せないなら、選べるのは薄いものだけになります。

夕方に足の裏が痛くなる人へ。衝撃を受け止める:クッションタイプ

いちばん分かりやすいのがこれです。かかとや足裏に当たる部分にクッション材を入れて、地面からの衝撃を受け止めます。

効くのは、硬い床の上に長くいる人です。コンクリート、タイル、フローリング。一日中立っている仕事や、通勤で長く歩く人には、ここが素直に効きます。先ほどの2つでいえば、力を受け止める側の道具です。

ただしクッションが厚いものは、そのぶん容積を食います。前に書いたとおり、元の中敷きが外せる靴でないと使えません。スニーカーならたいてい外せますが、革靴では確認が要ります。

もうひとつ、柔らかければ柔らかいほどいい、というものでもありません。沈み込みすぎると足が安定せず、かえって疲れることがあります。売り場で押してみて、ぐにゃりと潰れるものより、押し返してくるものを選ぶほうが結果はいいことが多い。

土踏まずが落ちてきた気がする人へ。高さを選べる:アーチサポート

土踏まずのところが盛り上がっていて、足のアーチを下から支えるタイプです。市販品でも、盛り上がりの高さが低め、中くらい、高めと分かれているものがあります。

選ぶときのコツは、高いほど効くと思わないことです。自分のアーチより高いものを入れると、土踏まずが常に押し上げられて、そこが痛くなります。低めから試して、物足りなければ上げる。この順番が安全です。

ここは正直に書いておきます。市販のアーチサポートは、足の形を作り変える道具ではありません。歩いているあいだ、下から支えるという役割です。扁平足や、痛みを伴う変形がある場合は、市販品で粘るより先に整形外科で相談してください。医師の処方で作る中敷きは別の話で、条件によっては保険が使える場合もあります。

裏を返せば、そこまでではない人にとっては、市販品で十分に体感が変わります。長く歩いた日の疲れ方が違う、というのがいちばん出やすい効果です。

靴が少し大きい人へ。数ミリだけ埋める:薄型の調整用

はじめに書いた2つの働きのうち、「容積を埋める」だけをやるのがこれです。力を分散する機能は持たせず、隙間を埋めるためだけの薄い一枚。

買った靴がほんの少し大きい、というときに使います。ハーフサイズぶんの隙間なら、これで埋まることがあります。薄いので、元の中敷きが外せない靴にも重ねられる。革製のものを選ぶと、汗も吸ってくれます。

多くの製品は裏にサイズの線が印刷されていて、はさみで切って調整できます。買ってきてそのまま入れるとつま先で突っかかることがあるので、線に沿って自分のサイズに切ってから使ってください。

ただし、これで埋まるのは数ミリです。ワンサイズ以上大きい靴を、中敷きで自分のサイズにすることはできません。長さが余っている靴に厚い中敷きを入れると、足は上に持ち上がるだけで前後の余りは残ります。結局かかとは浮きます。ここは道具の限界として受け入れてください。

かかとが浮く、前に滑る人へ。一部だけ足す:部分パッド

全面に敷くのではなく、必要な場所にだけ貼るものです。かかとの内側に貼るヒールグリップ、足の付け根あたりの前滑りを止めるパッド、甲の裏に貼って高さを埋めるタンパッドなど。

これが効くのは、症状が一か所に限られている場合です。長さは合っているのにかかとだけ浮く。甲が低くて上から押さえられていない。こういうときは、全面の中敷きで底上げするより、足りない場所だけを埋めるほうが理にかなっています。全面に敷くと、合っていた場所まで動いてしまうからです。

とくにローファーやパンプスのように紐で締められない靴では、この部分パッドが現実的な手になります。甲の裏にタンパッドを入れて足を上から押さえると、かかとの浮きが止まることがある。かかと側だけを見て解決しない場合は、甲の側を疑ってみてください。

まとめ:直せないものに使わない

選び方の目安はこうです。硬い床に長く立って足の裏が痛むならクッションタイプ。土踏まずが落ちてきた感じがして長く歩けないならアーチサポート。靴が少しだけ大きいなら薄型の調整用。かかとだけ浮く、甲だけ緩いというように症状が一か所ならその場所の部分パッド。

そして直せないものを、もう一度書いておきます。幅が狭い靴、甲が当たる靴、つま先の形が合っていない靴。この3つに中敷きは効きません。むしろ容積を奪うので悪くなります。

ただし、そこで靴を捨てる前にやれることがあります。修理店の「幅出し」です。当たっている場所の革に少しずつ圧をかけて伸ばす調整で、天然皮革の靴なら受けてもらえることがあります。小指が当たる、親指の付け根が当たる、といった一か所の問題には現実的な手です。

条件はあります。布やエナメル、爬虫類の革のような特殊な素材は難しいことがあり、天然皮革でも傷みが進んでいると伸ばす過程で傷むことがある。革の種類や硬さ、靴の作りによって可否が変わるので、靴を持って店で相談してください。「中敷きでは直せない」は本当ですが、「だから買い替え」まで飛ぶ必要はありません。

順番としては、まず薄型の調整用から試すのをおすすめします。いちばん安く、いちばん失敗が小さく、しかも「容積を埋めると自分の症状は良くなるのか」という問いに答えが出るからです。ここで手応えがあれば、機能のあるものへ進む意味がある。逆に何も変わらないなら、原因は容積の側ではないということです。その場合は厚い中敷きを買い足すのではなく、力の分散が要るのか、そもそも靴の形が合っていないのかを疑ってください。

費用の話もしておきます。足を測って自分専用に作ってもらう中敷きは、靴が一足買えるくらいの値段になることがあります。市販品の延長にある安上がりな裏技ではありません。作ってもらう場合は、必ずその靴を持って行って、その靴に合わせて作ってもらってください。中敷きは靴と組み合わせて初めて働くもので、別の靴に移すと厚みが変わって別物になります。

入れたあとの確認も3つ。かかとが浮いていないか。甲が押されていないか。つま先が突っかかっていないか。中敷きを入れると靴の中のバランスが全部ずれるので、直したかった症状が消えても、別の場所に新しい問題が出ていることがあります。入れて数日は、そこを意識して歩いてみてください。

最後にひとつ、大事な注意を。糖尿病などで足の感覚が鈍くなっている人は、自己判断でパッドや厚い中敷きを入れないでください。当たっていること自体に気づけないまま、圧迫や靴ずれが進んでしまう恐れがあります。この場合は必ず、主治医に相談してから決めてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

日常の靴選びから仕事に合わせた靴選びなど、さまざまな靴に関する情報をお届けしています。あなたの足元を彩る一足を見つけるお手伝いができれば幸いです。お気に入りの靴を見つけて、毎日の生活を足元から豊かにしてください。

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA

目次