ビルケンシュトックは毎年夏に出してきた——でも今年は少し違う選択肢を試してみたい、と思う夏があります。「またビルケン?」と感じたとき、選べるブランドが他にもあることを知っていると、足元の話が変わります。スウェーデンの1970年代から復刻されたクロッグ、フランスの職人が作るナチュラルサボ、ポルトガルで縫われるコンフォートミュール、エーゲ海の職人が天然素材だけで作るサンダル——それぞれに「なぜこの靴を選んだか」が話せる背景があります。
この記事では、ビルケンシュトックの次として選べるミュール・サボ4足を紹介します。去年の夏にVagabondを初めて足に入れて「ビルケン以外にも選択肢があったんだ」と思ったのが、この4足を集めたきっかけです。どれも「ビルケン持ってるんだけど、次はこれにしたんだよ」という話が自然に始まる一足です。
1970年代スウェーデンの木型が今も使われている、クロッグの復刻本家:Swedish Hasbeens Slip In Classic
Swedish Hasbeens(スウェーデン ハズビーンズ)は、創業者フレドリカ・ルンドグレンがスウェーデン南部の廃工場で発見した1970年代の木型と靴型をそのまま復刻したブランドです。当時の型を現代の職人が手作業で再現——スウェーデン語で「時代遅れのもの(Has-Been)」という逆説的なブランド名が、かえって「本物を選んでいる」感を強くします。ロビン(Robyn)やドーリー・パートンが愛用したことでも知られ、北欧のスタイルアイコンたちに支持されてきました。
木底とレザーが作るかっこんという音——サボサンダルの定番の音ですが、Swedish Hasbeensのそれは木の素材感が出す少し低い響きがあります。足を包む革が柔らかく、最初から痛くない。「スウェーデンの1970年代の型で今も作ってるんだよ」という話は、ビルケンを知っている人には「それは知らなかった」という反応になり、知らない人には「そういうブランドがあるんだ」という発見になります。
フランスで生まれ、北欧の職人が仕上げる、ナチュラル素材のサボ:Arche
Arche(アルシェ)は1968年フランスで創業したシューズブランドです。ブランド名はフランス語で「弧(アーチ)」を意味し、足のアーチを正しくサポートするという設計哲学がそのまま名前になっています。スカンジナビアの木型職人が作る木底に、天然皮革のアッパーを組み合わせるという独自の製造工程——「フランスブランドなのに北欧の職人が作る」という逆説が、Archeを選んだ人が語れる話のひとつです。
Swedish Hasbeensが「木底のかっこん」という存在感のある靴なのに対して、Archeは最初の数歩で「あ、なんか静かだ」という印象があります。木底のアッパーに革が丁寧に縫い付けられているため、接地の音が柔らかい。アーチサポートが設計に組み込まれているため、長時間のタウンユースでも疲れにくく、ビルケンと並べるとArcheのほうが少し細身でコーデに溶け込みやすいシルエットです。フランスのナチュラルファッションシーンでは「知っている人が必ず持っている靴」として長年支持されており、国内の輸入靴セレクトショップで取り扱いがあります。
「放浪者」という名のスウェーデンブランドが、ポルトガルで仕上げるコンフォートミュール:Vagabond
Vagabond Shoemakers(ヴァガボンド)は1974年スウェーデンで創業しました。「Vagabond(放浪者)」という名が示す通り、「旅するように生きる人のための靴」をコンセプトに掲げています。製造はポルトガルとスペインの工場——スウェーデンのデザイン哲学とイベリア半島の靴作り技術を組み合わせた設計が、ブランドの独自性になっています。「スウェーデンのブランドがポルトガルで作ってる」という話は、靴に詳しい人には刺さる一言です。
ヴァガボンドのミュールをリピートする人が多い理由は履き心地にあります——フットベッドが足の形に馴染んでいく感覚が、使うたびに「自分の靴」になっていく。デニムショーツにもマキシ丈スカートにも合わせやすく、「この靴どこの?」→「スウェーデンのブランドで、ポルトガルで作ってるんだよ」という話が自然に出てくる一足です。
「ギリシャに靴ブランドがあるの?」——エーゲ海の天然素材だけで作るサンダル:Sante
Sante(サンテ)は1996年ギリシャで創業したシューズブランドです。コルク・革・天然ゴムのみを使用する素材へのこだわりを創業当初から変えていません——ギリシャのオリーブオイルの産地として知られる土壌文化と、天然素材への執着が重なるブランド哲学です。「ギリシャに靴ブランドがあるの?」という反応は確実で、「エーゲ海の天然素材だけで作ってるんだよ」という話が続きます。
コルクフットベッドは使うほどに足の形に沈んでいく——ビルケンに似た感覚ですが、Santeのほうがアッパーの革が薄くて柔らかく、最初から革が足に当たる感覚がない。4足の中で最も「知っている人がいない」一足で、足元についての話が「ギリシャ?どこで売ってるの?」から始まる。「ビルケンと素材の発想は似てるけど、ギリシャ発なんだよ」という比較の話もできます。日本では公式サイトからの直接購入が可能で、一部の海外通販サイトでも取り扱いがあります。
まとめ:「また同じ夏のサンダル」を卒業する4足が、語れる背景ごとここに揃っています
今回紹介した4足をまとめます。
- Swedish Hasbeens Slip In Classic:スウェーデン発。1970年代の木型を復刻した手作業クロッグ。ロビン・ドーリー・パートン愛用の北欧スタイルアイコン
- Arche:1968年フランス発。北欧職人×フランスデザインのナチュラルサボ。アーチサポート設計で長時間歩いても疲れにくい
- Vagabond:1974年スウェーデン発。ポルトガル製のコンフォートミュール。使うたびに足の形に馴染んでいく「自分の靴」になる一足
- Sante:1996年ギリシャ発。コルク・革・天然ゴムのみのエーゲ海製。「ギリシャの靴ブランド」という驚きが確実に起きる
「北欧の木底クロッグから入りたい」ならSwedish Hasbeens、「フランスのナチュラルな雰囲気で」ならArche、「毎日使えるコンフォートを選びたい」ならVagabond、「誰も知らない一足で話したい」ならSante——ビルケンの次のミュールを選んだとき、足元の話がいつもより少し遠くまで行けます。個人的に最初の一足にすすめるのはVagabondです。「放浪者という名のスウェーデンブランドが、ポルトガルで作っている」——この話が出るたびに、夏の靴選びが少し楽しくなります。














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