夏の靴って、気がつくとスニーカーかサンダルの二択になっていませんか。スニーカーは暑い、サンダルはカジュアルすぎる——そのどちらでもない「第三の選択肢」が、エスパドリーユです。麻底(ジュート)とキャンバスアッパーの組み合わせは、スニーカーより通気性が高く、サンダルより足元がきれいに見える。13世紀からスペインで作られてきた靴が、今も夏のコーデを変え続けています。
「エスパドリーユ?どこで買えるの?」——この反応が来たとき、スペイン・フランスのリゾート文化から始まる話ができる靴があります。この記事では、メンズが選べるエスパドリーユ4足を紹介します。スペインとフランスから生まれたブランドの背景を知ってから選ぶと、夏の足元の話がいつもより少し遠くまで行けます。
ひとつだけ最初に。エスパドリーユは雨の日には向きません——ジュートソールは濡れると傷みやすいため、晴れた日専用の靴として扱うのが長く使うコツです。サイズ感はやや細身に作られているブランドが多いので、ハーフサイズ上を試着することをすすめます。これを踏まえたうえで、どのブランドを選ぶかを考えてみてください。
イヴ・サンローランのために、世界初のウェッジエスパドリーユを作ったブランド:Castañer Carina
Castañer(カスタニェール)は1927年スペイン・カタルーニャ州で創業しました。1970年代末、イヴ・サンローランから「エスパドリーユにヒールをつけてほしい」という依頼を受け、世界初のウェッジエスパドリーユを作ったブランドとして歴史に名を刻みます。現在も現存する唯一のジュート手縫い機で、職人がジュートソールを一足一足縫い合わせています。Carinaはそのカスタニェールの定番モデルで、フラットなジュート底にキャンバスアッパーを合わせた正統エスパドリーユです。
足に入れた瞬間のあの軽さ——スニーカーと比べてソールが薄くて柔らかいぶん、足裏が地面に近い独特の感覚があります。歩くたびにジュートがわずかに沈む感触が、夏の足元を「軽くなった」と感じさせる。「カスタニェールって知ってる?イヴ・サンローランのために世界初のウェッジヒールのエスパドリーユを作ったスペインのブランドなんだよ」——この話は、靴を知っている人にも知らない人にも等しく刺さります。
南フランスのバカンス文化をそのまま持ち込んだ、現代エスパドリーユ:Rivieras Leisure
Rivieras(リビエラ)はフランス・南仏リビエラのリゾートシーンにインスパイアされたエスパドリーユブランドです。ブリーザブルメッシュアッパー×ジュートソールという構成は、夏の通気性を最優先に設計されており、「麻底の靴なのになぜか蒸れない」という体験が購入後に必ずやってきます。フランスのバカンス文化——「夏は仕事を置いて、南フランスの海岸でぼーっとする」——をそのまま靴に閉じ込めたようなブランドです。
実際にリネンパンツに合わせて一日歩くと、「ここまで蒸れないのか」という感覚があります——ジュートソールが足裏の熱を逃がし、メッシュアッパーが空気を通す。チノパンでもデニムでも合わせやすく、「サンダルを履くほど崩したくないけどスニーカーは暑い」という夏の悩みにちょうどいい。「その靴なんか涼しそうだね」と言われたのが南仏リゾートの雰囲気のせいなのか、通気性の高さのせいなのか、よくわかりません——どちらも本当のことです。
ボーダーシャツの聖地・ノルマンディーが、エスパドリーユも作っていた:Saint James
Saint James(サンジェームス)は1889年にフランス・ノルマンディーのサンジャメの港町で創業しました。漁師のために作り始めたボーダー柄の「マリニエール」は、今も変わらぬ縞模様でピカソやジャン・ポール・ゴルティエに愛されてきた「フランスを代表するボーダーシャツの本家」です。そのサンジェームスがエスパドリーユも作っている——この意外性が、4足の中で最も「知っている人だけが選ぶ感」が出やすい理由です。
「マリニエールのブランドって知ってる?ノルマンディーの漁師が着てたボーダーシャツを今も同じ工場で作ってて、靴まで作ってるんだよ」という話が、エスパドリーユという靴の説明よりも先に語れます。ボーダー柄との組み合わせでコーデが決まるのは言うまでもなく、「靴とシャツで同じブランドを選んでいる」という話も、サンジェームスを選んだ理由のひとつになります。
ニューヨーカーがスペインの職人に作らせた、D2Cエスパドリーユ:Soludos
Soludos(ソルドス)は2010年にニューヨークで創業したD2Cエスパドリーユブランドです。「スペインで作られている本物のエスパドリーユを、ニューヨーカーが直販で届ける」——そのモデルをスペイン職人との協業で実現しました。中間流通をなくすことで、スペインの手仕事クオリティをスペインブランド直接購入より手の届きやすい価格帯で展開しています。ベーシックカラーの展開が豊富で、はじめてエスパドリーユを選ぶ人への入口として機能するブランドです。
ハードルが低い理由はシルエットにあります——爪先が丸く、ソールのジュートが側面から見えにくい設計で「エスパドリーユっぽさ」を主張しすぎない。ネイビー・ホワイト・タン・ブラックなど定番色が揃っていて「とりあえずこの色から」と選びやすい。「ソルドスって知ってる?ニューヨーカーがスペインの職人に作らせてるD2Cのエスパドリーユで——」という話の始まりは、ブランドの存在理由そのものが会話のネタになります。公式サイトや海外通販サイトから入手でき、日本への配送にも対応しています。
まとめ:夏の「第三の選択肢」として、エスパドリーユを知っておくと足元の話が変わる
今回紹介した4足をまとめます。
- Castañer Carina:1927年スペイン・カタルーニャ発。YSLのために世界初ウェッジエスパドリーユを作ったブランド。手縫いジュートソールの本家
- Rivieras Leisure:フランス・南仏リビエラ発。メッシュアッパー×ジュート底で夏の通気性を最優先した現代エスパドリーユ
- Saint James:1889年フランス・ノルマンディー発。ボーダーシャツ「マリニエール」の本家が作るエスパドリーユ。知っている人だけが選ぶ一足
- Soludos:2010年ニューヨーク発。スペイン職人と協業するD2Cブランド。ベーシックシルエットでエスパドリーユ入門に最適
「スペインの靴文化の歴史から入りたい」ならCastañer、「南フランスのリゾート感で涼しく」ならRivieras、「知っている人だけの話をしたい」ならSaint James、「まず試してみたい」ならSoludos——夏のスニーカー・サンダル以外の選択肢を知っておくと、暑い日の足元がもう少し楽しくなります。個人的にはCastañer Carinaをすすめます。エスパドリーユとしての本家の貫禄と、YSLという話のとっかかりの強さ——初めて選ぶ人にも、靴を知っている人にも、同じ温度で話せる一足です。














コメント