PUMAといえばSuede——この等式は、何年も前から揺るがず成立しています。「PUMAで何か持ってる?」と聞けば、頭に浮かぶのはあのスウェードのシルエット。それほど「PUMA=Suede」という結びつきが強く刻まれています。でも実際は、テニス・バスケットボール・陸上競技・ランニングとまったく異なるスポーツから生まれたモデルが、PUMAブランドの中に今も作られ続けています。
この記事では、「スウェード以外のPUMA」を4足紹介します。いずれも誕生のきっかけに「スポーツの歴史」が刻まれていて、「その靴どこの?」という反応が起きたとき、靴の背後にある年代と文脈の話ができる——そういう4足です。
靴紐のない靴が世界陸上に現れた1991年、革命の記録:PUMA Disc Blaze
PUMA Disc Blazeが初登場したのは1991年の世界陸上選手権です。かかと部に内蔵されたダイヤルを回すと、シュータン全体にワイヤーが均等に走り足を絞り込む「ディスクシステム」を採用——靴紐という概念を捨てた革命的な一足でした。棒高跳びの世界記録保持者セルゲイ・ブブカが愛用したことでも知られ、「テクノロジーの靴」として当時のスポーツ業界を驚かせました。2010年代以降はリバイバルモデルが登場し、独特のフォルムが持つインパクトは今も健在です。
初めて見た人が「え、これ靴なの?」とダイヤルに手を伸ばしてくる——そういう靴です。「かかとのダイヤルを回すと締まる仕組みで、1991年の世界陸上で初めて出てきたんだよ」という話は、靴に詳しくない人でも目を丸くして聞いてくれます。Disc Blazeのシルエットは存在感があるので、モノトーンでまとめたシンプルなコーデと合わせると、足元だけが際立ちます。
スポーツ史上初・選手名入り契約。1973年NBAが生んだシグネチャーの原点:PUMA Clyde Court
1973年、PUMAはNBAスター「クライド」の愛称で知られるウォルト・フレイジャーと、スポーツ業界史上初の選手名入りシューズ契約を締結しました。ナイキがAir Jordanを生む10年以上前の出来事です。フレイジャーはレザーではなくスエード素材を要求し、最終的に390以上のカラーバリエーションが制作されました。Clyde Courtはそのバスケットコートのレガシーを継承した現代版で、上品なシルエットと適度なレザーの質感が特徴です。
「シグネチャーシューズの元祖ってPUMAなんだよ、Air Jordanより10年以上前の話」——スニーカーが好きな人ほど「え、そうなの?」という顔をします。実際に履いてみると、バスケットコート由来の横ブレに強いラストが足をしっかりホールドしてくれる感覚があります。テーパードパンツやスラックスと合わせると、足元の品がさりげなく上がります。
ジョギングブームが押し上げた「バネ足」。1980年・タウンへ飛び出したランニング:PUMA Future Rider
「Fast Rider」として1980年に登場したのが、PUMA Future Riderのルーツです。1970〜80年代のジョギングブームが到来したとき、PUMAが開発したのは「Federbein(バネ足)」と呼ばれる独自クッションソール——コートを飛び出してランニングが日常に溶け込んだ時代のシューズです。現在のFuture Riderはそのアーカイブを軽量なRider Foamで復刻しており、カラーブロッキングのデザインが年代を感じさせません。ボリューム感が出がちなスニーカーコーデの中で、スリムなシルエットが自然に差をつけます。
実際に履くと、名前の通り軽い反発感がある。重くなりがちな秋冬のコーデでも、足元がこれだと歩くたびに少し気分が上がります。「1980年のジョギングブームで生まれた靴で、バネ足って呼ばれてたクッションが特徴なんだよ」という話が、Suedeとの違いをいちばんわかりやすく説明できる。細身のチノやワイドパンツ、どちらの裾との相性もよく、4足の中で最もコーデを選ばない一足です。
世界初ウェアラブルデバイスを内蔵。1984年のランニング革命が生んだ系譜:PUMA RS-X Efekt
「RS(Running System)」は1984年にPUMAが開発した世界初のウェアラブルスポーツデバイスから始まります——歩数・消費カロリーをリアルタイムで計測するコンピュータを靴に内蔵した、スマートウォッチすら存在しなかった時代の発想です。1985年には独自クッションシステム「Multiplex IV」を採用し、RSシリーズは「最も軽く最も機能的なランニングシューズ」として進化しました。RS-X Efektはそのレガシーを現代向けにミニマルに再解釈したモデルで、メッシュ×シンセティックのスリムなシルエットが特徴です。
「1984年にPUMAが世界初のウェアラブルデバイスを靴に入れてたって知ってた?」——テック系の話が好きな人ほど、これを聞いて目が変わります。Apple Watchより30年以上前の話。その背景を知った上で足元に選ぶと、スニーカーの見え方がちょっと変わります。メッシュアッパーのおかげで軽く、一日履き続けても蒸れにくい。個人的には、4足の中で最も「地味に使える」と感じる一足です。
まとめ:PUMAは「スポーツの数だけ顔を持つ」ブランドだった
今回紹介した4足をまとめます。
- PUMA Disc Blaze:1991年世界陸上初登場。ダイヤルで絞る「靴紐のない靴」。ブブカが愛用した陸上競技発の革命
- PUMA Clyde Court:1973年スポーツ史上初のシグネチャーシューズ。Air Jordanより10年以上早く始まったバスケットボールの原点
- PUMA Future Rider:1980年ジョギングブームが生んだ「バネ足」ランニング。Fast Riderのアーカイブ復刻。スリムで合わせやすい
- PUMA RS-X Efekt:1984年世界初ウェアラブルデバイス内蔵「RS」の系譜。テクノロジーの話ができるPUMAの顔
「インパクトで選ぶ」ならDisc Blaze、「スポーツ史を語れる一足が欲しい」ならClyde Court、「日常使いで差をつけたい」ならFuture Rider、「テクノロジーの文脈で選びたい」ならRS-X Efekt。悩んだらDisc Blazeを一度実物で見てみることをおすすめします。あのダイヤルを見て「なんだこれ」と思ったら、もう答えは出ています——PUMAの4つの顔が見えてくると、「スウェードしか知らなかった」ブランドが、もう少し奥の深い存在になります。














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