毎年秋になると、靴箱からDr. MartensかBlundstoneを出す——そういうルーティンができている人は多いと思います。どちらも素晴らしいブーツで、「なぜこれを選んだか」を話せるストーリーもある。ただ、3年・5年と同じ靴を繰り返していると、「今年も同じだ」という感覚がふとやってくることがあります。
「次のブーツ」に踏み出せない理由のひとつは、「Dr. Martens以外に語れるブーツを知らない」からかもしれません。足元に「その靴どこの?」が起きたとき、ブランドの背景ごと話せる一足は、同じ金額を出すならそのほうが長く愛着が続きます。この記事では、パリのDTCブランド・フランス最高峰のデザイナーブーツ・日本人デザイナーがスペインで作る靴——それぞれ異なる「語れる理由」を持つ4足を紹介します。
パリジェンヌが20年以上選び続ける、ボヘミアンなアンクルブーツ:Isabel Marant Dicker Boot
Isabel Marant(イザベル マラン)は1994年にパリで創業したファッションブランドです。Dicker Boot(ディッカーブーツ)は2000年代にリリースされてから20年以上、フランスのファッションメディアで「秋冬ブーツの定番」として繰り返し取り上げられてきた一足です。チャンキーなラグソール・サイドジップ・スエードのアッパーが作るシルエットは、「マランのDicker」と言うだけでファッション好きに通じる。
足に入れると、スエードの柔らかな厚みとサイドジップの使いやすさが同時にわかります——着脱が楽なのに、履いている間は足首をしっかり包んでいる安心感がある。ブロックヒールはほどよい高さで、1日外出しても疲れが蓄積しにくい設計です。デニム・フレアパンツ・ミディ丈スカートと合わせると、ボヘミアンなシルエットが自然に決まる。「マランのDickerはね、20年以上同じシルエットで作り続けてる靴なんだよ」という話は、4足の中で最も「聞いた人がそのまま誰かに話せる情報」として伝わりやすい。
廃棄ゼロを掲げるパリのDTCブランドが、限定生産で届けるアンクルブーツ:Sezane Ninon Boots
Sezane(セザンヌ)は2013年にモルガン・セラルがパリで創業したDTC(直販型)ブランドです。「フランス女性のためのフランスのブランド」を掲げ、廃棄ゼロを目標にした限定生産と直販を一貫して続けています。Ninon Bootsはそのブランドを代表するアンクルブーツで、スタックヒールとシンプルなシルエットが「持っている人の数が少ない」という静かな個性を作り出しています。
「セザンヌって聞いたことある?」という問いに「画家の?」と返ってくるところから始まる会話——「2013年にパリで始まったDTCブランドで、廃棄ゼロを目標に限定生産してるんだよ」という話ができます。日本ではまだ知名度が高くないので、「どこのブーツ?」が確実に起きる一足です。スタックヒールの高さが街歩きに適したレベルで、ロングスカートにもストレートデニムにも自然に合わせられる。Sezane公式サイトから日本への国際配送が可能で、サイズはヨーロッパサイズ表記(+約15〜16cm)で選びます。「特別に取り寄せた一足」という背景も、語れる理由のひとつになります。
1952年創業のパリの老舗・クロエの妹ラインが作る、手の届くラグソールブーツ:See by Chloé Mallory Boot
See by Chloé(シーバイクロエ)は、1952年創業のパリの老舗ブランド・Chloé(クロエ)のセカンドラインです。クロエの世界観——フランス的なフェミニンさとエフォートレスなエレガンス——を、より手の届きやすい価格帯で展開しています。Mallory Bootはそのラインのショートブーツで、ラグソール×ブロックヒールのシルエットが2026-27秋冬のトレンドとフィットします。
「シーバイクロエって、あのクロエの?」という反応から「そう、1952年創業のパリの老舗ブランドの妹ラインなんだよ」という話になる——この会話の広がり方が、See by Chloéを選ぶ静かな理由のひとつです。革の質感がしっかりしているため、最初は少し硬めに感じますが、数回履いて馴染んでくると足の形に添って柔らかくなっていく感覚があります。シンプルなワントーンコーデに合わせると足元だけで場の格が変わる。4足の中で最も「コーデに格を加えやすい」一足です。
日本人デザイナーがスペインの職人と作る、アートと手仕事が同居する靴:Chie Mihara
Chie Mihara(チエミハラ)は、日本生まれのシューズデザイナー・三原千絵が1996年にスペイン・エルダで設立したブランドです。日本で生まれ、フィレンツェのファッションスクールで学び、スペインの靴産地エルダに工房を構えた——この経歴だけで「その靴どこの?」に対する答えが豊かになります。ヒールのデザインやレザーの配色に遊び心と職人技が同居していて、一足一足スペインの職人が手作業で仕上げます。
デザインの個性が強いので、写真を見ただけでは「これを自分が履けるか」という躊躇があるかもしれない。ただ、実際に足に入れてみると、ヒールのバランスが絶妙で重心の安定感がある——そのギャップがChie Miharaを一度選んだ人を離さない理由です。「日本人がスペインで作ってる靴なんだよ」という話が、靴に詳しい人にもそうでない人にも「それは本物だ」という印象を与えます。4足の中で最も「選んだ理由を話したくなる一足」です。
まとめ:秋冬のショートブーツは「なぜこれを選んだか」を話せるかどうかで決まる
今回紹介した4足をまとめます。
- Isabel Marant Dicker Boot:1994年パリ発。20年以上同じシルエットで作り続けるアイコニックなアンクルブーツ。ラグソール×スエードのボヘミアンなシルエット
- Sezane Ninon Boots:2013年パリ発・廃棄ゼロを目指すDTCブランドの限定生産ブーツ。日本での知名度がまだ低く「どこのブーツ?」が起きやすい。公式サイトから日本へ発送可
- See by Chloé Mallory Boot:1952年創業クロエの妹ライン。パリの老舗の文脈でラグソールブーツを選べる、コーデを格上げする一足
- Chie Mihara アンクルブーツ:日本生まれ・スペイン製。フィレンツェ仕込みの職人仕事と遊び心が同居した、誰も知らない一足
「パリの格から入りたい」ならIsabel Marant Dicker Boot、「サステナビリティと背景を話したい」ならSezane、「コーデの格上げを手の届く価格で」ならSee by Chloé、「誰も選んでいない靴を見つけたい」ならChie Mihara——Dr. Martensの次に選ぶブーツは、「なぜこれを選んだか」を話せるかどうかで決まります。個人的に最初の一足にすすめるのはSee by Chloé Mallory Bootです。「クロエ系の靴を選んだ」という話が秋冬コーデに加わるだけで、足元の話が一段深くなる——その体験が、次の一足を選ぶ基準を作ってくれます。














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